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状況の確認  

 こういう感じ?桜井が言ってた「みんなが話に来る」っていうのはこういう事だよね?

 じゃあツブツブをもう一応終わったとみなして名簿にちょっとメモっていこう。



5番 オオツブライユウリ  

キャピ女子にツブツブとか呼ばれるのが嫌い

本当は名前で呼ばれたがっている



 なんか…浅くない?

 こんなんでいいのかな…

 こんなお手軽なミッション?なんかチョロ過ぎないか?こんなんでどうやって、誰かの夢に出る3人か4人を選ぶんだろう。


 いや、こんなわけない。

 それでもみんな、ツブツブみたいにフレンドリーだったらいいのになと思う。そしたら30人でも40人でも話が聞ける。

 普段ほとんど喋らない女子とかに、「あんたの事マジ嫌いウザい」なんて言われたら、まぁわかっていた事とはいえ相当凹みそう。

 男子に嫌われるより女子に嫌われる方が断然しんどい。



 1番から順にクラス全員の名前を見ていく。そうかこの子はこの名前だったか…とか思いながら。

 もともと人の名前を覚えるのが苦手なので、全部をすぐには覚えられないなと思う。たぶん秋くらいまでには全部自然に覚えてると思うけど。

 書きこんだ名簿は机の一番下の引き出しの奥にしまった。

 うちは兄弟がいないし、親も勝手に机の中を見たりはしないし、ましてや友達が私の部屋に来るなんて事は絶対にないけど、念のためだ。



 宿題をしようと思っても、もう寝てしまおうと思っても、放課後の事が繰り返し強烈に頭に浮かんできてしまう。

 高森も、田代ミカも桜井の仲間だとして、そして普通の人間じゃないとしたら何だろう。異世界とか異星人とかって感じ?

 それはかなりイタい発想じゃないか?

 イタい発想が当たってるとしたら、なぜこんな辺鄙な土地の辺鄙な学校で

地味に教師をやってる?何のカモフラージュだ?うちのクラスの3、4人を

誰かの夢の出演者にするために?


 

 わけがわからない。

 それでなんでよりによってうちのクラス?

 あの3人が人間の皮を破って、緑色のドロドロした体を現わすところを想像する。目だけが異様に大きいのだ。

 4月に担任になった頃からの桜井の事を思い出してみる。

 妖しいところはなかったはずだ。授業にやたら熱を入れてくる他の教師より飄々とした所が好きだったのに。



 そして軽薄な私は、誰なんだろうと考える。

 私を好きだと思ってくれる男子って誰なんだろう。やっぱツブツブかな。ツブツブだと良いのに…

 ものすごく気になってきた。


 けれどその「好き」だと思ってくれる気持ちは、桜井に無理矢理思わされている気持ちだと思うと素直には喜べない。気になるけど喜べない。だいたいその子に申し訳ないし私は自分の事が不憫に思えてくる。

 それがツブツブみたいな良い感じの男の子ならなおさらだ。

 家の近くまで送ってくれたのに。

 それでも私を好きな2人か3人のうちの一人はツブツブだとして、後2人は誰なんだろう。

 クラスの男子の顔を思い浮かべるが、今日のツブツブのように、私にフレンドリーに話しかけてくれそうな子は一人も思い浮かばない。

 普段よくしゃべる男子は一人もいないし。



 じゃあ誰だったら嬉しいだろう…と考えはじめてハッとする。

 状況を楽しもうとしている自分が相当怖い。

 それにダメだ。ツブツブの顔しか浮かばない。男子から普段、世間話をされる事がないから、今日喋って家まで送られた事でちょっとツブツブの事を好きになってしまったような気がする。

 ていうか…今の段階でいうと、たいして喋った事もなかったゴトウハルカよりも好きかもしれない。

 恐ろしいな…なんてお手軽なんだ私。

 ツブツブよりフレンドリーに話をしてくる男子がいたら、桜井が用意してくれた2、3人以外でもすぐに好きになってしまうかもしれない。

 というか、こういう風に桜井の話を受け入れて、役割にあきれるほど順応しようとしてないか。

 もっと嫌がってもいいだろう私。

 もっと不安がるはずだろう私。



 くだらなく節操のない心配をぐるぐる考えているうちに眠ってしまったので、私はくだらなく節操のない夢を見てしまった。

 眠る直前にはちゃんと、もっと桜井と高森をよく観察して行こうと堅い決意をしたのに、それでも節操のない夢を見た。

 私は本当にバカかもしれない。





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