入口 2
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私はたぶんすごいバカなんだと思う。
夢にサクラちゃんが出てきたような気がする。
ミノリちゃんも出てきたような気がする。
…わからない。
たぶん高森のお茶がものすごく利いて、私がいかに意識をすんなり失ったかと言っても、まるで何も覚えていないなんて…
朝起きたら頭がすっきりしていた。
こんなにぐっすり眠れた事なんて本当に久しぶりだ。去年の学校の創立記念の行事で登山をした夜以来。
どうしよう…ヤグチとハヅキモエノになんて言おう。
そんな心配はあるのに、ぐっすり眠れたからか朝から食欲もあって、いつもの倍くらいの朝ごはんを食べて、着替えている所にドアチャイムが鳴った。
嫌な予感だ。ヤグチのような気がする。
やっぱりヤグチだった。
まさか迎えに来てくれたの?
「おはようございます」と
爽やかな声で母さんに挨拶しているのが聞こえてくる。
「薫~~~~!」お母さんにやたら大声で呼ばれる。
ヤグチと顔合わせづらい。
なのにお母さんは「上がって待ってて。あの子どんくさいから、もうちょっと時間かかるのよ。お化粧するわけでもないのに。ねぇヤグチ君、やっぱり今の女の子ってみんなお化粧してんの?薄手のファウンデーションくらい付けてるのが普通なんでしょ?ヤグチくんは結構お化粧ちゃんとする感じの子も好き?」
「いえ…」とヤグチが返答に困っている。
「お母さん!余計なおしゃべりしないでよ!」
慌てて階段を下りてお母さんを止める。
「オレは自然な感じが好きです」
「ホントに?」とお母さん。
「止めてって、お母さん!」
お母さんは面白がって止めない。「巨乳と貧乳だったらやっぱり巨乳がいいよね?だって高校生男子だもんね?」
「お母さん!!」
「え…いや…」ヤグチが本当に困っている所は初めて見た。
お母さんは完全に面白がっている。「薫なんか超貧乳なのよ。私に似たからかわいそうに。ヤグチ君、それでもいいの?」
「お母さん、もうそれセクハラだから!」
私は急いでヤグチ促して家を後にした。
「すげぇ…お前の母さんすげぇ。ああやって面白がりながらオレをけん制してんだな。…むかし会った時の印象がやっぱ悪かったかな…」
「え?」
「いや、なんでもない」
ヤグチがうちの前に止めた自転車に乗らずにそのまま歩きだすので、聞くと私と一緒にバスで行くという。
躊躇してしまう私だ。下手をしたらツブツブが乗ってるかもしれないし、桜井も乗ってるかもしれない。
ハッと思って急いでケイタイを取り出しメールを確認する。良かったツブツブから今日は来ていない。
「なぁ、」とヤグチが立ち止まる。「何確認したの?」
「してない、何も」
「…お前まさか毎朝オオツブからメール来てんの?」
「来てない!来てないよ。昨日くれてたんだけど私学校行くまで気がつかなくて」
ちっ、とヤグチが舌打ちした。
それにバスで行ったとして、たとえ私の事なんて誰も覚えていないとしても昨日と違う男の子と今日は一緒に乗ってたって、万が一にも誰かに思われたら絶対に嫌だ。
「で?どうだった、夕べ」
「…うん」
「え?お前もしかして…」
「…」
「…まじか…」
「バスで行くの止めようかな私」
「信じらんねぇお前。今バスの事なんてどうでもいいよな?」
うん、私もわかってるけど。
「もしかしてオレと一緒にバス乗ってるの見られるの嫌とか?」
まぁそうだけど。
「でも昨日は二人乗りしたし、チュウだって…」
「ごめん!もう言わないでチュウの事、すっごい恥ずかしいし、1回目はホント良くわかんなかったし」
「最初からそんなにバッチリできるかよ」
「夢はちゃんと覚えてるよ」話を反らすために私は嘘を付く。「きちんと覚えてないだけで。ミノリちゃんとサクラちゃんが出てきたのは覚えてるんだけど」
「あぁ出て来たな」とヤグチが軽く言うので驚く。
「え?ヤグチ君もミノリちゃんとサクラちゃんが出てきた夢見たの?」
10番のコンドウハルト君がメインの夢見ないといけないんじゃないの?
「お前が来ないってアライとクリハラがオレに聞いて来て、二人はいつものキャラに合わないほどオタオタ慌ててかなり心配してて、校舎中探してはオレのとこにまだ戻って来てオレから詳しく聞き出そうとする。それをずっと繰り返すって夢」
「…それだけ?」
「お前がそれだけとか言うな」
「…ハヅキさんや肝心のコンドウハルト君やキタは出て来ないの?それで何でヤグチ君は私を探してくれなかったの?」
ヤグチが少し驚いた顔をした後、ぱたりとそれは嬉しげな顔に変わった。
「違う。オレはお前が出てこない時点で、これは目を覚まさなきゃって思って1回目ぇ覚ましたの。それでまたすぐ寝たの」
「すごいね!私駄目だよ、寝付きも悪いしさ、一度起きたらなかなか眠れないしさ。でも夕べはすごいぐっすり眠れて…」
…あ、ヤバい。ヤグチが凄く残念な目で私を見ている。
「ごめん…。ごめんねヤグチ君」
「オレの二つ目に見た夢は…」とヤグチが言ったところで私たちはバス停に付き、バスに乗り込んだ。
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