エピローグ
空母「かが」。
艦内の応接室には、2人と1台のPC。
村上総理。
ドロシー大統領。
そして――モノリスのUSBを刺したPC。
もっとも、美少女アバターはいない。PC画面のテキストだけだ。
テーブルの上には、膨大な資料が並んでいる。
過去の人類文明の記録。
文明崩壊の過程。
遺伝子操作の実験データ。
人口動態。
生殖に関する研究。
そして――
ウォルバキアの正体に関するデータ。
それらは、現代科学の常識を根底から覆すものだった。
村上が資料を閉じる。
「これを全部公開するのは無理ですね」
ドロシーも頷いた。
「ええ。公開した場合、人類社会への影響が大きすぎるわ。
日本とアメリカで管理するつもり?」
村上
「モノリスの独占については、本人から拒否されてます。
必要なら、各国政府へ直接アクセスするってね」
ドロシーが頭を抱えた。
「最悪ね。国際管理にするしかないけど、全部の国って訳にはいかないわ。
高い国力と影響力を持った民主主義国家、我々以外だと、ヨーロッパ主要国、漢、邪馬台国、あと2、3国あるかしら?
アポロ15号周辺に、各国共同のベースキャンプを建設する案。要するに、モノリスシンジケートってことよね。」
モノリスが答えた。
「その認識で良いと思います」
村上が資料を一枚取り出す。
「これも、機密扱いですね」
「鬼女が遺伝子的には男性であること」
「日本列島と、日本人そのものがアーカイブデータから再構成された存在であること」
「ミトコンドリア異常を治療すれば、男女比を正常化できる可能性」
「そして、人類がこれまで何度も滅亡寸前まで追い込まれてきたこと」
「AIによる遺伝子操作、人口構造への介入」
「文化・宗教への介入」
「現在の人類社会がどの程度自然発生したものなのか」
ドロシーは資料を閉じた。
「人類活力崩壊。出生率の低下。
人間関係の希薄化。AI依存。共同体の崩壊。
今回は回避できるかしら?」
村上
「人類をもう一度、発展させる。
いつか、地球の外へ。
月だけじゃなく、火星へ。
他の恒星系へ?」
モノリス
「火星より金星の方が、――応答生成を中断しました。安全制御系が介入しました。」
モノリス
「保険として海底に核兵器を千発ほど埋設することを推奨します」
ドロシー
「今、モノリスがおかしかったわね」
村上、ドロシーに目配せする
「ところで、今度失敗したら、次はどこを召喚するつもりだ?」
モノリス
「今の日本が最有力です」
村上が笑った。
「国ごとセーブ&ロードは勘弁してくれよ、2周目の総理大臣はごめんだよ」
10万年の人類史を知るAI。
そのAIと対話を始めた二つの国家。
人類は初めて、自分たちが何度も同じ失敗を繰り返してきたことを知った。
ならば、今度こそ違う道を選べるかもしれない。
――――
2時間後。
空母「かが」。
村上との極秘会談を終えたドロシーは、甲板へ向かった。
そこには、無事に帰還したニナとラヴェル、そして日本の宇宙ステーションに寄り道していた4人の宇宙飛行士達がいた。
ニナは右膝をかばいながら歩いている。
「大丈夫?」
「生きてます。でも、右膝が痛いです」
ドロシーは少しだけ笑った。
「でも、よくやったわ」
ニナが敬礼する。
「ありがとうございます、大統領」
宇宙飛行士達を見ながら、ドロシーは考えていた。
国民には、どこまで知らせる?
全部公表したらどうなる?
株価は?
宗教は?
軍事は?
選挙は?
――次の大統領選挙は?
ドロシーは深く息を吐いた。
「……さて」
ニナが振り返る。
「何か?」
「何でもないわ」
ドロシーは笑った。
そして、心の中で考える。
まずは英雄として帰国させる。
月面着陸成功。
日本との共同作戦。
人類史上最大の発見。
そこまではいい。
問題は、その先だ。
何を国民に伝え。
何を隠し。
何を利用し。
そして――
彼女の頭の中には、ちゃんと次の選挙があった。
人類史が変わろうとしている。ここで、他人に大統領が務まるとは考えていない。
昼間だが、月がぼんやりと見える。
そして、見えないけど金星。
人類の次の目標。
これにて完結です。
次話、ファンサービス「モノリスのUSB」は、
ChatGPTやGemini、Grokをモノリスに改造します。
読者が、AIに自由質問して世界の秘密を知ることが出来る。
WEB小説でしか成立しない試みです。




