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ナビの示す先は異世界でした  作者: フツカ
ゲリラライブでお金持ちに!? 歌で異世界を圧倒する私、聖樹の力でさらなるチート能力に目覚める

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感動の再会! 危険エリアに入ったことをガチ説教された女子大生二人、お詫びの特製カレーで神様と騎士の胃袋を掴むの巻

【これまでのあらすじ(1分でおさらいできます)】


大学生の山川美優(主人公)は、趣味のキャンプに向かうはずが、車ごと異世界へ転移してしまう。

転移先の山の中で、イケメン剣士のジークや天才魔術師のアン、治癒師のマリアと出会い、もふもふの神様コヨリ様に車を「神改造」してもらう。そこで元の世界に帰る手がかりが「創世の女神が住む塔の上の世界」にあると知った。 

なんとか魔術都市『ナニヴァル』へ到着。魔術学院へと通い始める。

しかし、立ち寄った魔導具専門店の罠によって悪質な誘拐組織に拉致されてしまう大ピンチに!

そこで同じく現代から転移してきた女子大生・一ノ瀬薫と見事アジトからの大脱出に成功する。

逃げ延びた美優たちだったが、そこでまさかの「全財産が消えている(スられた)」という超絶極貧ピンチが発覚し――!?



――ここから第二章、波乱の幕開けです!

 東の空がほんのり白み始めた頃、車はコヨリ様の祠の近くへ到着した。


 助手席では激しい戦いを終えた薫が、泥のようにぐっすり眠っている。


(……盗られたお金は、あとで薫が起きたら相談しよう。今はとにかく、安全な場所に……) 


 ふとバックミラーに目をやると、朝靄の向こうから、馬を猛スピードで走らせてこちらへ向かってくる人影が見えた。


 (まさか……犯人の追手……?) 


 エンドリーリアとここまでの距離を追ってくるなんて……


 私は震える手で後部座席の荷物から双眼鏡を取り出し、ピントを合わせた。


「……ジーク!?」 


 心臓がドキンと大きく跳ねた。

 見間違えるはずのない、あの濃褐色の髪。


「止まって! お願い!」


 私は慌ててボタンを長押しした。


「自動運転モードを解除し、安全に停止します」


 車がスーッと速度を落として静止した瞬間、私はシートベルトを外してドアから飛び出した。


 激しい馬の蹄の音が、どんどん近づいてくる。


「ジーク!」

「ミュウ!」


 足が勝手に動く。

 気づけば、泥を跳ね上げるのも構わずに駆け寄っていた。 


  まだ速度の落ちきらない馬から迷いなく飛び降り、ジークは私の元へ駆け寄った。


 震える手で、私の両手を強く、しかし乱暴にならないように包み込む。

 大きくて固い、温かい手のひら。


 その体温に触れた瞬間、張り詰めていた恐怖がほどけて、涙がこぼれそうになった。


「無事で……本当に良かった……っ」


 耳元で響いたのは、掠れて震える声。

 いつも大人の余裕を崩さないジークのこんな声、初めて聞いた。


「さらわれて……すごく、怖かったよ……」

「辛い思いをさせたな、ミュウ。お前の無事な姿を見るまで、生きている心地がしなかった」


 ジークは私の手を両手で包んだまま、小さく目を閉じた。

 その大きな手が、私の強張った指先を温めるように、何度も優しく包み直してくれる。


 昇り始めた朝日が私たちを照らし、夜の底に置き去りにされていた恐怖をゆっくり溶かしていく。

 

「おお!美優にジーク! 久しぶりじゃのう!

どうした、ワシの祠の前で?」


 背後から響いた、聞き覚えのある高い声。


「コヨリ様!」


 もふもふの耳としっぽを揺らした、小さな神様が立っていた。

 

「攫われて、逃げ出して……夢中だったので、コヨリ様の祠が一番に浮かんで……」 


「なにやら大変だったようじゃな。まあ、ゆっくりしていくとよい」

「ありがとうございます……」


 ガチャリ。

 車のドアが開いた。


「美優? 着いたのか?」

「あ、薫! おはよう」 


 目をこすりながら、寝起きの薫が出てくる。


「知らない人……がいる……」


「あ、この方はね……」 


 薫にコヨリ様を紹介し、私たちはコヨリ様も交えて、これまでに起きた誘拐事件の一部始終を包み隠さず話した。



「……お前たちは! バカだ!!」 


 祠の前にジークの怒号が響き渡った。

 現在、薫と私は、草の上に正座をして小さくうなだれている。


「西エリアへ近づくなと言っただろう!」

「はい……」

「怪しい店で出された物を口にするなど論外だ!」

「ごめんなさい……」

「自分たちがどれほど危険な目に遭ったと思っている!」

「めちゃくちゃ反省してます……」

「もう二度としません……」

「当たり前だ!!」


 それから一時間。

 私たちは正座のまま、ジークのお説教を聞き続けた。

 反省はしているけれど、正直、しびれてもう足が自分のものじゃない……


「まあ、その辺にしておくのじゃ、ジークよ」

「しかし、コヨリ様……!」


「ワシの神聖な祠を朝から大声で騒がせた罰じゃ。

お主ら、ワシに美味い朝食を用意せい」

「「はい……分かりました……」」


 私たちは解放された足を引きずりながら、手分けして朝食の準備に取りかかった。


 メニューは、私の得意料理であるカレー。


 朝から重いかなと思ったけれど、コヨリ様はいつも腹ペコだし、何より私たち三人も昨日の夕方から何も食べていなくて限界だった。


「なんじゃ、複雑で実に美味そうな香りが漂ってきたのぅ!」


 コヨリ様は鍋のそばにぴったり張り付いて、ワクワクしている。


 コトコトと音を立てる黄金色の海から漂うのは、異世界には存在しない数十種類のスパイスが調和した芳醇な香り。


「スパイシーな香りが食欲を刺激するな……お説教で腹が減った」

 ジークも覗き込んでいる。

 

 ホカホカのご飯が炊けたので、まずは一番にコヨリ様の前へ差し出す。


「……美味い! この濃厚なとろみと奥深いコク……実に美味いぞ!」


 小さな口で夢中になって頬張り、コヨリ様はあっという間に完食し、すぐにおかわりを要求してきた。


「ふむ……ミュウの異世界料理は久しぶりだが、これほどとはな。野菜のゴロゴロとした食感と、柔らかい肉の旨味が溶け込んでいて手が止まらん」


 ジークもスプーンを動かす手を止めず、すっかり機嫌を直してくれたようだ。


「……カレーなんて、元の世界以来だ。

もう二度と食べられないと思っていた……美味しい……」


 薫はじっくりと、どこか懐かしそうに味わっている。 


 朝の清々しい光の中でみんなで食べるカレーは、最高の味がした。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

第2章の本格的な幕開けとなる第45話でした。

ジークとの再会、1時間のお説教(笑)、そして美味しいカレー。


しかし、お腹がいっぱいになったところで、美優たちの「ある大問題」が発覚することに……?


次回は7/22(水)の19時頃更新予定です。


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