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通り魔

 ブルーパレス、とある通りにて。


「はぁ!!」


「ふっ!!」


男2人の剣がぶつかる。


1人は冒険者、1人は衛兵。

激しい拮抗の末、お互いに距離を取った。


「貴様ら兵士たちがなぜ市民を狙う!?」


「あの者達はこの街の秩序を乱した犯罪者。

貴様も冒険者ならば街のために協力をしろ」


冒険者、ロサ・パティシプルは苦い顔をした。


現在この通りでは衛兵対冒険者で殺し合いが行われていた。


二つの勢力を合わせたら軽く100は超えるのではないだろうか。自分の仲間も少し離れた場所で衛兵達と戦っている。


一体なぜ衛兵と冒険者が戦っているのか。

その発端となった出来事は約10分前に(さかのぼ)る。


自分達は武具や武器を見るためにこの通りを歩いていた。


かなり使い古した武器を新しくするためにこの通りに来たのである。

そしたら何やら遠くで騒動が起こっていた。


向かってみるとこの街の上役の家の前で、大勢の兵士が大勢の市民を斬り殺していた。

自分達はそれを止めようと市民側に加勢したのが始まり。


ここは冒険者がよく利用する通り。

その後、通りかかった他の冒険者チームが続々と市民を守るために参戦し、次第に乱戦になっていった。


そして今の現状に至る。

今は市民が逃げて衛兵対冒険者の混戦状態。

辺りの店は破壊され火も出ている。

そして至る所で冒険者や衛兵、市民達の遺体が転がっている。またすぐ近くでも、他の冒険者が衛兵達と戦っていた。


これはまさしく阿鼻叫喚(あびきょうかん)の出来事。



……これが兵士のやる事なのか!?


ロサは目の前の兵士を睨みつける。

フルプレートを着用しているので顔を窺い知ることは出来ない。


ただ、目の前の兵士はどこまでも無機物な声をしていた。まるで市民達を殺すのを気にしていないよう。

この街の市民を人を人だとも思っていない。 

見つけた市民を片っ端に切り殺し、見境なく襲っている。


兵士とは普通、街を守り、そして何より市民を守る。

それが衛兵としての果たすべき使命なのだ。


しかしそんな者が市民を殺し、街を荒らす。

これは一体どういう冗談なのだろうか。

もう訳が分からない。


ロサは心の中で怒りを燃え上がらせていると、目の前の兵士は口を開けて話し始めた。


「今この巨大都市ではありとあらゆる場所で殺し合いが発生している。例えばこの通りのようにな。

我々衛兵達は、街の治安を守るために反乱者達を捕まえている」


兵士は話を続ける。


「貴様ら冒険者は我々のおかげで存在してる。

だから貴様らは我々に加担しなければならない」


「市民を殺すことはないだろ!?

捕まえるだけでいいじゃないか!?

お前らの行動を見ていると、捕まえているようには見えない!自分達の都合の悪い存在は全て抹消しているように感じるぞ!!」


ロサは怒鳴りつけた。


兵士たちの蛮行を決して許してはならないのだ。

兵士がこの街を荒らすのならば、せめても冒険者がこの街を守らなければいけない。


この殺人者達を止めなければならない。


「…あぁその通りだ。

しかし我々の敵は誰であろうと排除する。

もちろん我々に対抗する貴様ら冒険者もな」


「……はっはっは」


ロサは一笑に付した。


「それは冒険者を甘く見ているぞ?

この街に一体幾つの冒険者がいると思っている?

……軽く1万人は超えるんだぞ」


何を寝ぼけた事を目の前の男は言っているのだ。

とてもじゃないが現実味が無い。


だが兵士もそれに反論する。


「……それはこちら衛兵も同じだ。

貴様ら冒険者の数より衛兵の数の方が多い」


「街でいつもゴロゴロしている衛兵などに負けるはずねぇな。俺たち冒険者は毎日死と隣り合わせだ。

たかが数が多いテメェら衛兵に俺たちは倒せねぇよ」


「それは分からんぞ…?」


「それにこれは本国が認めていることなのか!?」


「そんな事は一介の兵士である私は知らん。

上の命令だ。それに私もあの組織(・・・・)に金をもらっている身、貴様らには負けられん」


あの組織とはなんだ。


ロサは考えを巡らす。

そして一つのある答えが浮かび上がった。


「あの組織…?

まさかデス・フォールか!?」


「その通り、貴様は勘がいいな。

……そして口も達者すぎるようだ、ここで死ぬといい」



兵士は不気味な口調でそう言うと接近してくる。

2人は再び剣戟を始めていく。



………。



くっ……。


激しい剣戟だ。

徐々に徐々にロサは押されていく。


自分はこの街で2級冒険者である。

しかし、目の前の男は中々に手強かった。


こいつ…強い!!


なっ!?


ロサの剣がはね上げられた。

そして体勢を大きく乱してしまう。


それが致命的な隙を生んだ。

兵士はこちらに向かって強烈な蹴りを放ってくる。


「うぉっ!?」


ロサはそのまま数メートル転がっていった。


「くぅ……!」


「どうだ…?痛いか?」


クソォ痛てぇ…。

まずいな、まともに動けん!!


ロサは立ち上がることが出来ずに、腹を抱えて悶える。


その姿を見て嘲笑っているのか、兵士はゆっくりと近づいてくる。


ロサが立ち上がれないのも無理はない。

先程のは鉄製のブーツからの強烈な一撃だ。

それも、毎日鍛錬を重ねている兵士の前蹴り。


例えて言うのならば鉄製のハンマーで腹を殴られたよう。いくら自分も鍛えているとはいえ、まともに食らえば骨折は免れない一撃だ。


兵士はゆっくりとこちらへ到達した。

そして剣をロサに突き刺そうとする。


しかし…その時。



「な、なんだ?」


兵士に猛スピードで接近するものがあった。


そしてそれは黒い塊だった。


速すぎてまともに見る事は出来ないが、四足歩行のドス黒い何かが、接近してくる。


そしてこちらに一撃を加えた。


「……えっ?

な、なんだ……?」


兵士はよく分からなかった。


ただ…気付いた時には、剣を持っていた自分の右腕が無くなっていた。そしてそれはつまり、その黒い何かが自分の腕をもぎ取ったという事。


「あ…"ぁぁァァアア"!!」


直後、耐え難い激痛が兵士を襲う。

男は叫び散らかしながら地面に耐えれた。


そしてまた黒い何かが接近する。


「や、やめてくれ!!

だれか助けてくれぇぇえ!!

"ウォォォッッ"!!!」


黒い四足歩行の化け物は兵士を切り裂いて肉を貪り尽くす。


辺り一面には血が広がっていった。


「ど、どういう事だ…??」


ロサは地面に伏しながらその光景を見ることしか出来なかった。


「ほぅ…間一髪だったな」


声がした方向をロサは見る。

そこには妙な衣装をした男が銀髪の女性を連れて通りのど真ん中をゆっくりと歩いていた。

顔は帽子をかぶっていて窺い知る事は出来ない。


な、なんだこの人は…?

俺を助けてくれたのか?


殺気が満ち溢れたこの通りで男はただ1人だけ余裕な雰囲気を漂わせていた。


とてもじゃないが殺し合いの現場に遭遇したとは思えない余裕さだ。


「貴方が私を助けてくれたのか?

だとしたら感謝する、どうもありがとう」


ロサはやっとやっと立ち上がると、頭を下げた。


「感謝は不要だ。

我々も我々の利益があるのでな。

……それとそこ危ないぞ…?」


「えっ?」


目の前の男は杖で自分の奥を指した。


ロサには見えなかったが兵士が背後から迫っていた。

ロサに対して不意打ちを行ったのだ。


そして男は瞬時に動く。


兵士の剣の刀身を白い手袋越しに掴んだのだ。


「な、なんだと!?」


男の垣間見える口元がニヤリと嗤った。


「貴様におぞましいカビをくれてやろう…」


男が触れている刀身が緑色の何かに包まれていく。

そしてそのカビはどんどんと剣を覆い、持っている兵士にまで移っていった。


「な、なんだこれは!?や、やめろ!!

助けてくれ!!あぁ!!"ァァアア"!!」


兵士は緑色の何かに包まれてそのまま動かなくなった。


「な、なんなんだこれは…?」


「カビだよ。

ただ、普通よりも恐ろしい殺人カビだ。

人間や生命が触れたら最期、その者の栄養と水分を一瞬で吸い尽くしてミイラにする。

決して触れるでないぞ?触れたら一瞬だ」


カビが覆い尽くした兵士はもはや鎧の一部さえ見えない。まるで日陰に群生しているコケ植物のようだ。


「通りを見てみろ…」


男は何故か大きく手を広げた。

ロサは指示通りに当たりを回すと、いつのまにか静寂が訪れていた。


そしてロサは驚愕する。


なんと、ここにいた全ての兵士たちが倒れていたのだ。


「こ、これは…?

あ、貴方がやったのか…?」


「その通りだ。

私からしてみればこんな有象無象を始末するのに1分も要らない。私の前では敵は等しく死んでゆく。

ただそれだけの話だ」


「な、なんという…」



微妙なところで終わりました。

後で少しばかり続きを出すかもしれません。


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