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転生令嬢は精霊に愛されて最強です……だけど普通に恋したい!  作者: 風間レイ
妖精姫VSニコデムス

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エピローグ   1

長くなったので二話に分けます。

 多くの人が暮らすベリサリオ城は週末はいつも夜遅くまで賑やかだけど、今夜の賑やかさは特別だ。

 至る所に飾り付けがされ、庭にはテーブルが並べられて料理が置かれ、風に乗って私の部屋までも楽しそうな笑い声と音楽が聞こえてくる。

 窓から外を見れば、城だけではなく街も港も今夜はいつもより多くの明かりが灯されている。

 今日は新年の最初の日。

 私達は皇宮で過ごすけど、城にいる人達はこれからが宴の盛り上がる時間だ。

 なにしろ今年はベリサリオにとって何重にもめでたい年なのだから、新年の祝いも特別に派手なのよ。


「素敵だわ。完璧」

「本当に美しいです」


 去年の春、私は十五歳になった。

 つまり今年の新年の舞踏会は、私のデビュタントなの。

 記念すべき晴れの日の準備に少しでも関わりたくて、私の部屋には今、侍女と執事が合わせて八人もいるのよ。全員集合よ。

 ジェマなんて今はもうアランお兄様の領地で働いているはずなのに、私のドレス姿を見るんだと言い張って、朝から私の傍にずっといるの。

 アランお兄様も今夜は家族と一緒に行動するからいいんだけどさ。


「ネリー、あなた、自分の準備はどうしたのよ」

「侍女が舞踏会なんて出る必要は……」

「あるわ。みんな次はネリーの支度よ」

「「「はい!」」」


 リュイやミミだけじゃなくて、普段は精霊の森の屋敷にいるシンシアとダナも揃っているから、すぐにネリーを素敵な御令嬢に変身させてくれるでしょ。


「いやーーーー!」

「お嬢、軽食を用意しました。今のうちにお召し上がりください」


 徐々に小さくなるネリーの悲鳴を聞きながら、私はすぐに食べ物の前に急いだ。

 昼はルフタネンの新年行事に参加したから、あまり食べられなかったのよ。

 夜だって舞踏会の会場で、がっつり食べるわけにはいかないでしょ。

 私はダンスより美味しい食事の方が嬉しいんだけどな。


「ドレスにお菓子の欠片をこぼさないでくださいよ」


 レックスがここにいるのはわかるんだ。着替えが終わった頃を見計らって食べ物を持ってきたからね。気の利く執事よ。

 でもなんでブラッドまでいるのさ。精霊の森の屋敷の警護はどうしたの。


「あんな小さかったお嬢が、もう十五歳だなんて」


 涙ぐむのはやめなさいよ。

 成人する私より、周りの喜び具合が強すぎて恥ずかしいじゃない。


「その分、みんなも老けているのよ」

「中身の成長はどうしたんですかね」


 ひとりだけいつも通りに憎まれ口を叩くレックスの足を、ヒールで踏んでやった。


「いたっ! うううっ!」

「あんたも成長しないわね」


 ジェマが呆れた顔をしてブラッドが笑いを堪えているこういう場面も、今では見る機会がなくなったから懐かしいな……なんて、私も少しセンチになっているかも。

 

「疲れたから、ひとりでまったりしたいわ」

「わかりました。ドレスを汚さないでくださいよ」

「イフリー達、お嬢様をよろしくね」


 三人がいなくなってひとりになって、改めて鏡の前に立ってみた。

 頭皮が痛いくらいにきっちり編まれて結い上げられた髪型は、今日から許される大人の髪型だ。

 うなじから背中までの線が、なかなか魅力的でセクシーな感じじゃない?


「うっ。無理に背後を見ようとすると、首がつりそう」


 白いドレスはローブデコルテという肩を出すデザインなので、落ち着かなくて何度も肩を手で擦ってしまう。


「綺麗……よね?」


 この一年で背が伸びて、だいぶ大人びた体付きになってきたと思うのよ。

 そりゃあモニカやスザンナみたいにはなれないけど、すっかり女性らしくなったと言われることも増えたのよ。喋らなければ。


 ドレスはお母様が何年も前から準備をしていたので、カミルはアクセサリーだけは準備させてくれと頼んで、ふたりで相談して作ってくれたらしい。

 髪にも耳にも、もちろん胸元にだって、アメジストの周りをダイヤとペリドットが飾っているアクセサリーが、照明を反射してキラキラしている。

 ルフタネンにはパートナーの髪や瞳の色をアクセサリーやドレスに用いる文化はないのよ。みんな、黒髪で黒い瞳だから。

 代わりに貴族の家はその家の色が決まっていて、それを使用するのが習わしになっているの。


「ディアの瞳の色の周りをイースディル公爵家の色が囲んでいるとか、相変わらず独占欲丸出しだな」


 ってクリスお兄様は言っていたけど、デザインはお母様も考えたんだってば。

 スザンナにあげた超豪華なアクセサリーだって、充分に独占欲丸出しだったくせに。


『今日は朝から慌ただしいな』


 通行の邪魔になりそうなドアの傍に寝転がっていたイフリーが、大きく口を開いてあくびをした。


『まだこれから皇宮に行くのだろう?』

『楽しくていいよ。賑やかだ』

『ジンは賑やかなのが好きだな』

『ガイアは無口すぎるんだよ』


 リヴァだけは少し離れて、落ち着きなくふよふよと天井付近を漂っている。

 今日はカミルだけじゃなくてルフタネンの国王も来ているので、竜の精霊獣が勢揃いするでしょ? それで落ち着かないみたい。

 犬系や猫系と違って、竜の精霊獣は帝国にはいないからか、リヴァはカミルの精霊獣と仲がいいの。

 ガイアに似た精霊獣だけは未だに見たことがなくて、ちょっとかわいそうなことをしたかもしれない。

 私が考えた特別な姿なんだよって言ったら、喜んでくれたんだけどね。


「今年は一年中、慌ただしいわよ」

『知ってるー! クリスが結婚するんだよねー!』


 いつの間にかシロは勝手にテーブルの上のお菓子を食べていた。

 こいつはいつまで私のところにいるつもりなんだろう。


「そうよ。それにアランお兄様も正式な婚約をするの」


 私が十五になったってことは、パティも十五になったってことよ。

 アランお兄様はもう独立しているけど、公爵令嬢を嫁にもらうのに中途半端なことをしたらベリサリオが笑われるからって、明日は私とカミル、アランお兄様とパティの合同の婚約パーティーが盛大に行われるのよ。

 帝国だけじゃなく世界中から王族がやって来るんですって。

 来なくていいって言ったのに、招待状を送ってくれってうるさいんだもん。


 十五の誕生日が過ぎてすぐにルフタネンでの婚約の儀式も祝いの宴もやって、その時だって世界中からVIPが集まって、精霊王まで集まっちゃって、国王の婚約式より顔ぶれがやばいことになってしまったのに、新年早々世界中の王族が帝国に集まらなくていいと思わない?


 そして私が十五歳になったってことは、スザンナは十八になったってことだから、ようやく結婚解禁なのよ。

 秋にはクリスお兄様とスザンナの結婚式も盛大に行われる。

 ベリサリオの結婚が続くってことは、招待される側の出費もすごいよ。

 経済ぐるぐる回っちゃうよ。

 大丈夫かな。破産する家が出て来ないかな。

 まだ復興途中のシュタルクなんて特に、無理しないでほしいな。


 クリスお兄様が先に結婚式を挙げるので、陛下は特別にモニカが十八になる前に結婚出来るようにしたいと、冗談半分で言っていたらしいと聞いたけど、たぶん冗談じゃないんじゃないかな。

 陛下はあと二年も待たないといけないわけで、二年もあればクリスお兄様には子供のひとりくらいは出来ているかもしれない。

 ベリサリオに先を越される感がするのかも?


「いけない。このためにひとりになったんだった」


 ドレスがしわにならないように気を付けて椅子に座り、ウィキくんを開いてみた。

 徐々に見える項目が減って、今では精霊関連しか開けなくなっていたんだよな。


「あ」


 まるで私が確認するのを待っていたかのように、すぐに画面が点滅し、残っていた文字が次々と消えていく。

 項目も消え、真っ暗になった画面に、


『きみの幸せを見守っている』


 日本語の文字が浮かび上がり、ほんの何秒かで消えてしまった。

 そして、画面が端の方から光の粒子のように崩れ、風に飛ばされるようにきらきらと宙を舞って、私の頭上ではじけて降り注いだ。


「あ! これは祝福?!」


 何度もやられたから知っているわよ。

 もしかしてこれって、神様からの祝福?!

 嬉しい。嬉しいけど大丈夫なんでしょうね。


 急いで鏡の前に戻り、顔を近付けて右を見たり左を見たりしてみたけど、特にいつもと変わらない。

 第三の目なんて開いていないし、変な文様が身体に浮かんだりもしていないようだ。

 よかった。きっとあれは、ウィキくんの最期の時の演出だったんだ。


「神様だもんね。ちゃんと考えてくれているのよね」


 神様にはたくさん感謝している。

 記憶を残して転生させてくれたことも、ベリサリオに誕生させてくれたことも。

 数え上げたらきりがないほどの素敵な出会いも。

 みんなみんな、ありがとうございます。 


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本作の書籍版1巻~6巻絶賛発売中。

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― 新着の感想 ―
[一言] ついにウィキ君が退場か...謎の感慨深さがあるな
[気になる点] 「うっ。無理に背後を見ようとすると、首がつりそう」 ※ディアならww 転移ゲート・ディア・転移ゲート 自分の前後にゲートを置く事で 真っ直ぐの自分の後ろ姿が見れる なんとい…
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