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全知全能のドジっ子女神、天界会議でパチンコを打つ 〜効率厨のエリート神々に不合理の美学を教えてやる〜  作者: はくもじゃ
天界Wi-Fi無い編

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第20話:はじめてのお客とオーバースペック農具 〜エクセルと深淵の肥料〜

そろそろ次の章に行こうか悩み中…


「……なんじゃあ、この気色の悪い建屋は。お茶をこぼしたようなグニャグニャの形しとるが……」


大自然の奥深く。軽トラックから降り立った地元のベテラン猟師・吾郎ごろうは、ポカンと口を開けて目の前の異様な工場を見上げていた。

最近、この廃工場に若い衆が入り浸り、「獣肉ジビエの加工や革製品、肥料を作って起業した」という噂を麓で耳にしたのだ。猟友会の重鎮として、一応挨拶に来たのである。


「ごめんくださーい! 誰かおるかねー?」


吾郎が恐る恐るシャッターを潜ると、そこは異世界だった。

中央には真っ赤に燃え盛る巨大な炉があり、火花が飛び散っている。


「おお、いらっしゃいませ! 株式会社・天界クラフトへようこそ!」


首にタオルを巻いた社長のツバサが、爽やかな笑顔で出迎えた。


「あんたがここの代表かい? わしは地元の猟師でな。ジビエの解体や、革の加工をやってると聞いて見に来たんじゃが……」


吾郎が視線を巡らせると、工場の隅でパソコン画面に食い入るように見つめる、ヒョウ柄ステテコ姿の怪しいソフィオスがいた。


「……素晴らしい! 人間界の『エクセル』というソフトウェアは、まさに神の叡智だ! 複数の外部シートからデータをリンクさせ、午前と午後のシフト別……いや、時間帯別の『深海レアメタルの産出量』と『触手の在庫数』を完璧に集計できる! この関数システム、私の脳内データベースと完全に同期するぞ!」


ソフィオスは、在庫管理という名目で、エクセルの複雑な数式と外部参照の構築にすっかり憑りつかれていた。


「……あのステテコの兄ちゃん、何ブツブツ言っとるんじゃ?」


「あ、うちのデータ管理担当です。気にしないでください。それより、うちの製品を見ていきませんか!?」


ツバサは、得意げに奥から一つの『前掛け(エプロン)』を持ってきた。


「ジビエの副産物を利用した、猟師さん向けの防護エプロンです! 獣の解体や、山歩きの時の怪我防止に最適ですよ」


「ほう、革のなめしをやっとるのか。……しかし、えらく分厚くて、ぬらぬら光っとるな。猪の革か? それとも熊か?」


吾郎がそのエプロンに触れた瞬間、ゾワッ……と背筋に悪寒が走った。まるで、深海の底から見つめられているような、名状しがたき気配。


「いえ、ちょっと特殊な……『深淵に潜む水棲生物(クトゥルフ的な何か)』の分厚い外皮を、うちの職人がなめした最高級レザーです」


「深淵……? まあええわ。ちょっと強度を試させてもらうぞ」


吾郎は腰の狩猟ナイフを抜き、エプロンの端を思い切り突き刺した。

ガキンッ!!

火花が散り、吾郎の自慢のナイフが根元からへし折れた。


「な、なんじゃと!? わしの特注ナイフが!?」


「あーっ、ダメですよお客さん! そのレザー、チタン合金より硬いんですから!」


奥から煤だらけの技巧の女神・テクネが顔を出し、呆れたように笑った。


「そ、そんな馬鹿な……。ナイフを弾き返す革なんて……」


吾郎がへたり込みそうになったその時である。


「お茶、お持ちしましたー!」


アストラが、急須と湯呑みを乗せたお盆を持って小走りでやってきた。


「あっ、アストラさん! 足元に鉄骨が――」


ツバサの警告は遅かった。


「あわわわっ!」


アストラは見事に鉄骨につまずき、その拍子に、傍らに積んであった『白い粉が入ったズタ袋』に激突。袋が破れ、中の粉が工場の隅にあった「枯れかけの観葉植物」にバサッと降りかかった。


「あーあ、せっかく怪物の骨を砕いて作った『特製・骨粉肥料』が……」


ツバサがため息をついた、次の瞬間。

ズゴゴゴゴゴォォォォッ!!!

白い粉(深淵の怪物の超高栄養骨粉)を浴びた枯れ木が、突如として脈打ち、異常な速度で成長を開始した。

天井の鉄骨を突き破り、鮮やかな極彩色の花を咲かせ、工場の屋根の半分を吹き飛ばして巨大な樹木へと変貌したのだ。


「……っ!?!?!?」


吾郎は腰を抜かし、泡を吹きそうになっていた。


「やれやれ。深海の未加工エネルギーを植物に与えると、細胞分裂がバグるねぇ。ソフィ! この骨粉肥料、希釈率をエクセルで再計算し直しといておくれ!」


テクネが巨大な樹木を見上げながらカラカラと笑う。


「了解した。シート3に『巨大化制御マクロ』を組んでおこう」


ソフィオスはキーボードを叩く手を止めない。


「……お、お前さんたち……一体、何者なんじゃ……!?」


震える吾郎の前で、ツバサは深海のレアメタルで鍛え上げられた漆黒のナイフを抜き放ち、工場の床のコンクリートをバターのように切り裂いて見せた。


「ただの、実体経済を愛するベンチャー企業ですよ。……で、お客さん。この絶対に切れないレザーエプロンと、植物が爆速で育つ骨粉肥料。おいくらで買っていただけますか?」


ツバサの、インフルエンサー時代には見せたことのない「野性的な商人」の笑顔。

吾郎はガタガタと震えながら、財布の中身をすべてツバサの手に握らせた。


「ぜ、全部買う……! あんたら、山の神様よりヤバいわ……!!」


こうして、株式会社・天界クラフトは記念すべき「初売上」を達成し、圧倒的なオーバースペック製品の噂は、猟師たちの間で都市伝説のように広まっていくのであった。

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