光
内部は森閑として、厳しい静寂に包まれている。入るとすぐに、両側に壁が聳え立っている。壁は総て真っ黒で、怖ろしいほど平坦で、微かな窪みや歪みも見当たらない。
パックは黒い壁面に顔を近づけた。奇妙なことに、鏡のように磨き上げられているのに、パックの姿は映し出されない。
「なんでできているんだろう……」
呟き、指先を近づける。指先が触れた瞬間、壁面にぱっと星のような小さな光が瞬き、指先から波紋のように壁面に円を描く。パックが触れた先から光の波紋が広がり、それは薄くなって広がり、消えた。
ミリィも真似して指先を近づける。
ぐるりと指先を動かすと、その指先に纏わりつくように光が走る。ミリィは小さく笑い声を上げた。
ヘロヘロが同じようにして、顔を上げた。
「これ、色んな数字や記号だよ! 細かくて人間の目にはよく判らないだろうけど、僕の視覚を拡大にして見れば、それが判る」
「へえ」と、パックは感心した。さすがロボットである。
ルーサンが呟いた。
「ところで、あのガラスの管理人はどうした?」
ルーサンの指摘に、パックとミリィは「あっ!」と小さく叫んでいた。
「そうだ、この中に入ったままだった! どこへ行ったんだろう?」
パックの言葉に、ミリィは奥を指差した。
「行き先は、向こうしかないわ!」
ミリィの言葉にパックは頷き、背後の原型たちに叫んだ。
「行こうぜ!」
パックが先頭に立ち、歩き出すと、原型たちもぞろぞろと従いていく。
振り返ると、入口が小さくなっていた。その入口が、細くなっていくのを見て、パックは驚愕した。
閉まっていく!
外の光が細くなり、やがて一本の線になると、ぴたりと閉じてしまった。
それを見た原型の仲間たちから、悲鳴が上がる。
同時に、床がぱっと輝き出した。
ここは床が照明になっているらしい。下からの明かりに一同は照らされ、どうしたものかと顔を見合わせた。
「どうしたんです? こちらですよ!」
遠くから管理人の声が聞こえてくる。
その声に反応したのか、周りの壁が微かに光り出す。ぱっと壁面に小さな星が瞬き、様々な波紋を描き出し、消えていく。身動きすると、それだけで反応するのか、ひどく幻想的な眺めである。
ミリィは不可思議な光景を見つめ、眉を寄せた。