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「どこにあるんだ、地球は?」

 操縦席でパックは不機嫌にミリィに向かって叫んだ。ミリィは副操縦席で青ざめた顔を、目の前の計器に向けている。


 コンソールの無数の計器は、現在【弾頭】が停船している宇宙空間のありとあらゆる数値を示していたが、そこに地球を思わせる惑星は、影も形も見当たらなかった。


 ヘロヘロに隠したデータによると、主星からこの距離の公転面には、居住可能な惑星が存在しなければならない。しかし今、パックとミリィが見ている空間には、直径三五〇〇キロに僅かに足りない岩石の固まりが浮かんでいるだけだった。

 この大きさでは居住可能となる大気を保持する引力は弱く、惑星の表面は、ほぼ完全な真空である。


 ヘロヘロのデータによると、地球は直径一三〇〇〇キロと少し、表面重力加速度は、きっかり一G。大気の主成分は七十五パーセントの窒素と、二十数パーセントの酸素でなければならない。


 目の前に浮かぶ星を見ているミリィの目が、大きく見開かれた。

「これは……もしかすると!」

 ぐるりとパックに向き直ると、興奮した口ぶりで話し出す。

「これは〝月〟よ! 地球の周りを回っていた衛星よ! あれは惑星ではなく、月なんだわ!」


 ミリィの意外な言葉に、パックはあんぐりと口を開けた。

「まさか! だって、あの大きさだぜ! 地球の大きさから考えてみろよ。データによると地球はあの惑星の四倍ほどの直径になる。つまり、母惑星と衛星の大きさの比は、四対一ってことになる。そんな箆棒な対比の衛星なんて、聞いたことない!」


 すると、それまで黙りこくっていたサークがディスプレイの中で口を開いた。


「地球にはひどく大きな衛星があった、という伝説は、わたしも聞いている。地球には色々な伝説が語られているが、巨大な衛星もその一つだ。今、目の前にあるのは、それかもしれない」

 パックは頭を振り、呟く。

「それじゃあ、肝心の地球は、どこへ行ったんだ? なぜ、月しかないんだ?」


 ヘロヘロが遠慮がちに、口を挟みこんだ。


「あのねえ……、さっきから、あの──月か──あそこから、なにかビーコンのようなものが送信されているんだけど」

 ヘロヘロの言葉に、全員が「何だと!」とばかりに視線を集中させた。不意に注目を浴び、それが嬉しいのか、ヘロヘロの口許に「してやったり」の表情が浮かぶ。


 パックはミリィを見た。ミリィは強く頷く。

「行きましょう!」

 全員が賛成のようだった。

 パックは手早くビーコンの発信源を確認すると、コースを算定する。操縦桿を握りしめ、ぐっと前へと倒した。


 巡洋艦【弾頭】は、月へと針路を取った。

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