15.リアムとの再会
村に到着したユーリティス達は、すぐに宿を探して馬を休ませた。それから明日出発のための買い出しをした後、少し早めの夕食をとる店を探す事にした。
買い出しのための店で、おすすめの店を教えてもらう。
『ごちそう亭』
いかにもな木製の看板がかかっており、扉を開くと早い時間だというのにすでに多くの人が集っていた。
ここは小さな村だが、ロードグラン領の入口の一つということもあり、宿と食堂はつねに旅人で賑わっている。
その中でも『ごちそう亭』のふんわり卵のせライスが一番人気という事もあり、是非にとすすめられたのだ。
「ここは活気があっていいな」
「うん、それにすっごく美味しそーな匂いがしてる!」
二人は席に案内されてすぐ『ふんわり卵のせライス!』というと、店員さんはクスッと笑って『卵ライス2!』と調理場に通る声で言ってくれた。
「よければご一緒にエイブワース酒いかがですか?今が飲み頃ですよ!」
「わー飲みます飲みますっ!」
店員さんのすすめにマリクが嬉しそうな声を上げる。甘いエイブワースの果実酒、きっといい匂いがするだろう。
「じゃあ、お二つ入れますね!」
「―――あ、私は」
ユーリティスが断ろうとしたとき、
「じゃあ卵ライス一つ追加と、ホットミルク一つね!」
といって、男が二人の席に座った。
聞き覚えのある声。
「リアム!」
「やぁ、二人とも久しぶり!」
相変わらずの黒ずくめの男が、そこにはいた。
飄々としていながら隙が無く、存在感を出したり消したりする、器用な男。
「ずいぶんと早いお出迎えだな。龍でも使ったのか?」
ロードグランには世界でも数少ない龍が生息している。その内何頭かは国によって騎士の乗る龍として訓練されている。リアムは兄が近衛騎士団長をしている。龍の一頭でも借りれるかもしれない。
「まぁ、未来のロードグラン妃のお出迎えともなれば、ちょっとね」
そういって、茶目っ気たっぷりに片目をつむってみせる。嘘か本当か分かりづらい。
本当に、得体のしれない男だとユーリティスは思う。
「はーい、ご注文の品お待ちー!」
そうこうしているうちに、卵ライスが三つとエイブワースの果実酒二つとホットミルクが到着した。
リアムが自然な仕草でユーリティスの前の果実酒とホットミルクを入れ替える。
「ありがとう」
「いいよー!今寝ちゃったらご飯がもったいないからね」
「あーそれ!カッサルの夜を思い出す!」
マリクの言葉に三人の笑い声が響いた。
次の日の朝、三人は村の入口で合流した。
「あれ?リアム、馬なのか?」
顔を合わせて一番に言われたのがそれで、リアムは思わず吹き出した。
「せっかくだからロードグランを案内しながら城まで帰ろうと思ってね。さすがに龍で待ってたらみんなびっくりしちゃうでしょ?」
「それもそうか」
ユーリティスが納得して、一同は出発することになった。
「ねぇ、ちょっと遠回りになるけどせっかくだから港町に寄っていかないか?」
「ここから近い港町っていうと『コーディル』?あそこ、美味しいものがいっぱいあるって聞いてるんだけど!」
美味しいものに目がないマリクが目を輝かせる。
「そうそう、せっかくだからご馳走したくて。いいかな?」
ユーリティスはロードグランに向かいたい気持ちはあったが、マリクの目力に負けて、港町コーディルに寄る事を決めた。
「それじゃあ出発ー!」
マリクの嬉しそうな声が朝の森に響いた。
山を背に、一行は海へと向かう。村からは整備された街道が行き先に応じて伸びている。
道の途中で市をしている者もいたりして、ゆったりとした空気と豊かさを感じた。
『戦鬼アルデュラス』の治めている国、という漠然としたイメージとはずいぶん違うな、とユーリティスは思う。
ロードグランは、今は大国と呼ばれているが、その昔はリングジルドとそう変わらない国だったという。
だが二代前の国王が周囲の小国を次々に取り込み、そうして今のような大国に発展したという話だ。
アルデュラスの父、前国王はその国をまとめる事を勤め上げ、今はアルデュラスに国を守る全権を委ねている。
戦争により大きくなった国であるからか、内乱が起こることもあるし、国外から狙われる事も多い。
その度に、まだ皇太子だった頃から騎士団を率いていたアルデュラスが出向いていた事もあり、彼の名は遠い地まで広まっている。
彼が率いる軍は負けを知らない。そして彼の黒龍はその象徴としていつも語られる。
『金眼の黒龍を従えた、戦鬼アルデュラス。その姿を戦場で見たものは、生きては帰れない』
そんな殺伐とした噂と、この国内の人々の様子は相反している。
やはり会わなくては―――アルデュラスに。
ユーリティスは改めて思う。
自分はあまりにも彼の事を知らなさすぎている。これまで噂と想像上でしか認識していなかった人物に、真っ向から対峙する為に。




