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女騎士団長は戦鬼の生贄になるつもりはない  作者: 雪兎(キヨト)


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10.戦鬼アルデュラス



 ガァン!ギィン!

剣のぶつかり合う音と、多数の足音や鎧や盾のぶつかる音、何人もの雄叫び―――敵味方入り乱れて、その場は混乱を極めていた。


ファーラン側はここまでの戦になる事を予測していなかったようで、リングジルドとロードグランの連合に押されつつある。

もちろん、先頭をきっているのはユーリティスとシーグラス、それにスラッグやマリク達の姿もある。


しかし、その場にリアムはいなかった。

それはユーリティス達は知っているが、ファーラン側は気付いてはいないだろう。


実はリアムはルガン警備隊長や自軍の少数精鋭と共に、戦場を囲むような形でひそんでいた者たちと戦っていた。

彼らこそ、ファーラン側を焚き付け、ユーリティスの命を狙う者の手下たちだ。ずっと、リアムが警戒していた者たちだった。


「ぐっ……、お前は何者だ!」


彼らの中の指示役であろう男をねじ伏せて、リアムはひどく冷たい目を彼に向ける。

周りには何人もの兵が倒れていた。皆、敵側の兵だ。


「俺が誰かって?そんなのお前に関係ないね」


ギリ……と、リアムが彼の腕を締め上げる。男がまたうめき声を上げた。


「そろそろかなー?」


リアムが対岸を見ると、ルガンから制圧完了の合図が見えた。それを見て、リアムは懐から銀の小さな笛を取り出すと、吹いた。

人間には聞こえない音が出る特殊な笛だ。


バサバサッと周辺の森から鳥が何羽も飛び立って、ユーリティス達やファーラン軍が何事かと皆、動きを止める。

ほどなくリングジルド側から、黒く、大きなモノが翼を広げて空へと飛び上がった。


「黒龍だ!」


誰かがそう叫んだ。

その時、皆の脳裏に過ったのはロードグラン国王―――戦鬼アルデュラスの事だった。


『彼の姿を見たものにはすなわち死が訪れる』


大きな黒龍がゆったりと羽ばたきながらこちらを見た時、その眼は金色をしていた。

そして、その背に乗る、漆黒の鎧姿の人物。


「う、うわぁぁぁー!!」


ファーラン側の兵から悲鳴が聞こえた。

ユーリティス達の目の前で、相手方の兵たちがバラバラと逃げ出して行く。


「お前達!待たぬかっ!」


カジンが叫ぶがファーラン軍の兵たちは誰も言う事を聞こうとしない。


「ユーリ!下がるんだ!」


シーグラスの声にハッと我に返ったユーリティスは、皆と共に西の砦の門前まで下がる。そのちょうど空いた真ん中に、優雅に黒龍が舞い降りた。

それから、漆黒の鎧の人物が龍より地上に降り立つ。その者は顔まで鎧で覆われており、表情は見えない。

そして、その体格のよさにカジンはもちろん、ユーリティス達も圧倒されていた。

『貴方がアルデュラス王か』とユーリティスが問おうとした時、


「陛下!」


そう声がして、茂みからリアムが人を担いで飛び出てきた。


「敵の指示役を捕えました。この者を尋問すれば、誰の策略でこの度ユーリティス様のお命を狙ったのかが分かるかもしれません」


リアムは担いでいた人物を前に放り投げるように降ろす。

男は手足を縛られ、口に布もかまされており、なおかつ気を失っているようだった。


アルデュラス王と思われる男はうなずくと、リアムにむかってスッと手を上げる。

それを見たリアムはカジンに向き直ると、声高々に言った。


「カジン!今日以降またこの様な騒ぎを起こした場合、お前達ファーラン国にどのような事態が起こるのか、よく考えるようそちらの王に伝えよ!我がロードグランが国王アルデュラス様が、リングジルドへの危害を許さぬとな!」


アルデュラス王が、カジンの方を向く。すると、


「―――ひっ、ひぃぃ……!」


無様な悲鳴を上げ、カジンは自軍の兵たちと同じ様に逃げ去っていった。



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