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『翡翠の勾玉が繋ぐもう一つの歴史』 〜65歳考古学者おばちゃんの古代倭国セカンドライフ〜  作者: カジキカジキ


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29日目 〜あっと言わせる日〜

 翌朝、朝霧がまだ残る川辺で、皆が集まった。


 オクトさん、ミアケさん、タケくんたち、そして私とオオミさん、ミナちゃん。


 そして、隣村の長老と大人たちを招くために、昨日から連絡を入れていた。


 彼らは半信半疑のまま、約束通りやってきた。


 長老の顔は険しく、付き添いの男たちは腕を組んで不機嫌そう。


「ほんとに動くのか? 昨日も言ったが、失敗したらうちの竹は無駄になるだけだぞ」


 長老が低い声で言う。


 オクトさんが肩をすくめて答える。


「見てくれりゃ分かるさ。言葉じゃなくて、目で確かめろ」


 川辺に着くと、水車はすでに回っていた。


 カラン、カラン……ザーッ……カラン、カラン……


 規則正しい音が、朝の静けさを優しく破る。


 太い竹の輪がゆっくり回転し、竹筒が水を掬い上げ、頂上で静かにこぼす。


 その水は、粘土と藁で固めた竹樋を伝い、村の田んぼへ細く流れていく。


 昨日よりさらに安定して、漏れもほとんどない。


 隣村の男の一人が、思わず声を上げる。


「……本当に、水が上がってる……」


 長老が近づき、竹樋に手を伸ばす。


 冷たい水が指に触れ、掌を伝う。


 彼の目が、ゆっくりと見開かれる。


「こ、これは……」


 オクトさんが胸を張る。


「言った通りだろ? 川の流れだけで、水を高いところまで運べる。人力で桶を担ぐより、ずっと楽だ。

 うちの村だけじゃなく、お前らの田にも分けられるように作ったんだ」


 ミアケさんが竹樋の分岐を指差す。


「ここで二つに分けて、隣村の田へも流せる。

 共同で作った水路だから、公平に使えるはずだ」


 タケくんが得意げに言う。


「竹筒の口、俺が斜めに切ったんだぜ! 水がこぼれやすくなって、効率上がったんだ」


 長老が黙って水車を見つめ続ける。


 周りの大人たちも、固唾を飲んで回る輪を見ている。


 疑いの色が、少しずつ薄れていく。


 私が静かに口を開く。


「最初は私も、うまくいくか不安でした。

 何度も壊れて、何度も直して……でも、みんなで諦めなかったんです。

 隣村の皆さんにも、同じように豊かな田んぼになってほしい。だから、技術は隠しません。

 一緒に作って、一緒に守りましょう」


 長老がようやく顔を上げ、ゆっくり頷く。


「……確かに、驚いた。

 こんな簡単なもので、水がここまで上がるとは……

 俺たちの村は、稲が死んで気が立っていた。

 疑って悪かったな」


 一人の男が照れくさそうに笑う。


「これで、子供たちに水汲みを強いる必要がなくなる……ありがてえよ」


 オクトさんが長老の肩を叩く。


「よし、決まりだ。

 明日から、うちの竹と縄を分け合って、隣村にもう一台作ろうぜ。梅雨前に間に合わせるんだ」


 長老が深く息を吐き、初めて柔らかい笑みを浮かべる。


 「そうだな……お前らの言う通りだった。

 これで、うちの稲も救われるかもしれん」


 皆の間に、静かな歓声が広がる。


 タケくんたちが飛び跳ね、ミナちゃんがオオミさんの手を握る。


 水車の音が、カラン、カラン……ザーッ……と続き、それは二つの村を繋ぐ、新しい始まりの音のように響いた。


 オババ様の言葉が、頭に蘇る。


「まだまだ、先は長いわよ」


 でも今日、この瞬間――


 隣村の大人たちの顔に、ようやく希望が浮かんだ。


 ここから、本当の協力が始まる。



 隣村と、やっと繋がりが持てました。

 これから少しずつ信頼も深めてゆきます。


 次回は、2つの水車を見つめるのは……。


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