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ゼロ転生 ~ 気ままなモブスタート ~  作者: もののめ明
変容期

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紙飛行機を追って

 翌日、アルマーザが王国の結界を補修しに行く件でぐずぐずしたため、ザグの店へ行くタイミングを逃してしまった。

 まあ、明日でもいいかと思っていたのだが。

 その“明日”の朝早くにシムが塔を訪れた。

 塔の門番に起こされ、私は急いで支度をして下りる。

「どうしたんだ、シム」

「ギルが帰ってこない」

「2、3日帰ってこないことはよくあるんだろ?」

 厳しい顔のシムに落ち着くよう声を掛ける。しかし、シムはますます額に皺を寄せた。

「昨日、わざわざザグや俺に仕事を辞めてくると言って出たんだ。今日から店を手伝うからな、と。……なのに帰ってこないとすれば、何か問題が発生したということだ」

 ……なるほど。

 ギルはまだ実際に人を殺したことはなく、屋敷の外での見張りとか、標的の尾行しかしていないと聞いている。それでも、裏の秘密をいろいろと知った以上、簡単には辞められないということだろうか。

「エンダーは……ギルが一緒に仕事をしている男の名だが、あいつはわりと危ない仕事を好むんだ。あまり人と組むことはしないヤツだったのに、何故、まだ未熟なギルを手下として使う気になったのか……なんとなく、イヤな予感がするんだよ。リン、ギルを探すのを手伝ってくれ」

 私の親父はブロイとグルドだが、ギルの親父はシムだったみたいだな。

「分かった。ちょっと待ってて欲しい。双剣を取ってくる」


 双剣と、新しい火竜のナイフを装備する。全部を腰に差すとがちゃがちゃするため、ナイフを付けたのはふくら脛だ。私専用のナイフは他の3本より短めなので、ちょうど良い具合だった。

 ギルのナイフは、背中に背負う。

 残り2本は手に持って、下へ下りた。

「……どれだけナイフを持って行くつもりだ」

「あはは、1本はシムの分だよ。そして、ザグとギルの分。……ちょっと用意したいものがあるから、まずは店へ行こう」

 ナイフを渡しながら言ったら、渋い顔をされた。

「しかし時間が……」

「宛てはあるのか?」

「いや」

「じゃあ、私に良い策があるから任せて欲しい」

 試してみたいものがあるんだよ。たぶん、上手くいくはずだ。

 ───まだ朝の微睡みの中にいる街を、シムと二人で疾走する。シムの音をさせない走り方は健在だ。

 だけど、やはり以前よりスピードは落ちている。

 火竜の鱗亭の看板が見えた。その下に立っているのは、革当てを付けたザグだ。

「アタシも行くわ」

 私達が着くなり、順に目を合わせて強い口調で言う。

 シムが首を振った。

「お前はムリだ。もう走れないし、踏ん張りもきかないだろう」

「腕力は問題ないもの。何か役に立つかも知れないじゃない」

 私は溜め息をついた。まったくもって、親(?)をこんなに心配させるなんて、ギルは不良息子だなぁ。帰ってきたら説教だ。

 ひとまず、持っていたナイフをザグに渡す。

「火竜の骨のナイフだ。一昨日、ブロイとガフが持ってきてくれた」

「え?ブロイとガフ?……ど、どうしてその二人がナイフを?」

 驚くザグを促して、店に入る。

「グルド達も含めて、全員の記念になるよう骨のナイフを注文していたんだ。それが出来上がったから、持ってきてくれたんだよ。……もちろん、ギルの分もある」

 背中に背負ったナイフを指す。ザグが目を細めてそっとナイフを撫でた。

「バカなコよね。ニアムで狩人をやっていれば良かったのに」

「ギルも私もまだ若い。いろいろ挑戦してみるのは悪いことじゃないさ」

「……まあ、そうなんだけど。ただリンちゃんは、年齢詐称疑惑を禁じ得ないわ」

「ありがとう。お礼にこっそり実年齢を教えよう。実は60近いんだ」

「それは年を取りすぎじゃない?!」

 本当なんだけどなぁ。


 ───さて、2階のギルの部屋へ行き、あるものを採取する。

 1階の店に戻って、机に1枚の紙を置いた。ペンも持ってきているので、それも一緒に置く。

「何をするんだ?」

「魔法を使うのさ」

「え?お前、使えるようになったのか?」

 シムが意外そうに尋ねてくる。

「いや?使うのはシムだよ」

 そう。私は魔法陣を描くだけ。

 ペンを握り、ここへ来るまでに頭の中で組み立てていた魔法陣を一気に描く。初めて描く陣だが、上手くいくはずだ。

 描き上がった魔法陣の上に取ってきたギルの髪の毛を置いて、それを巻き込んだまま紙飛行機の形に折る。

「それを……どうするんだ?」

「今から呪文を教える。それを唱えて、最後にこいつに向かって息を吹き掛けて欲しい。そうすれば、髪の主の元へ───ギルの元まで飛んでいくはずだ」

 この魔法は、風を使う。ちょうどシム向けの魔法だ。

「すごいな、リン!自分は魔法を使えないのに、こんな複雑な魔法陣を描けるのか?!」

「ああ。塔で働いた成果だ」

「……微妙な成果だな」

「ほっといてくれ」

 残念そうに肩を叩かれたので、思わずムッとする。今、ちゃんと役に立っているんだから全然、微妙じゃないだろ。

「ああ、それで」

 呪文をシムに教え、魔法陣の紙飛行機がすぐ飛び立てるよう店の扉を開けながら、私はシムとザグを順繰りに見た。

「ギルを助けに行くのは、私一人で行く」

「リン!」

「リンちゃん、それは……!」

 一斉に顔色を変えた二人を手で制する。

「シムもザグも。その怪我を負ってから戦ったことはないだろ?正直、私一人の方が身軽で動きやすい」

「しかしな、」

「はっきり言おうか?戦闘になったとき、足手まといだ」

「…………」

 シムも……分かっているんだろう。唇を噛む。

「私は小さいから。対人戦なら有利だよ。それに、シムには言ってなかったかな?実は岩狼を喚び出せるんだ。ギルを助けたら、それですぐに逃げられる」

 ザグが溜め息をついて、シムの肩を叩いた。

「……リンちゃんが正しいわ。アタシ達は、ここで待ちましょう」

「そうだよ。旨い食事を作って待っててくれ」

 旨い食事は、結構重要なモチベーションになる。

 シムは小さく肩を落とした。

「俺は今までずっと自分のために戦っていた。誰かのために一番必要なこんなときに……役に立たないなんて……辛いな……」

 男らしいシムの顔が苦しげに歪む。私は思わず、彼の胸をドン!と叩いた。

「シムやザグが戦う術を私に教えてくれた。それが今から役に立つんだ。まあ、気楽に待ってろって」

 行く前からそんな悲壮な顔をされては、不吉じゃないか。


 シムが息を吹き掛けた途端、紙飛行機はふわりと浮き上がった。そして、くるっと私たちの周りを回ったあと、すぐに外へと飛んで行く。

 私はシムとザグに軽く手を振って、紙飛行機を追って走り出した。

 ───下町は、もう賑い始めている。人通りが多い。

 人と人の合間を抜け、私は駆けた。

 他から見れば、紙飛行機を追って遊んでいるように見えるだろうか。

 紙飛行機はやがて、下町でも裏寂れた辺りを飛ぶようになった。

 さほど行かぬうちに、街壁に突き当たる。その街壁を、紙飛行機はふわっと越えて……向こう側へ消えた。

 そうか。街の外へ行くのか。

 私はさっと周囲を見渡した。

 街壁には一定の間隔で見張り塔がある。兵が立っているはずだが……ああ、いた。こちらの方を見ている。

 私は踵を返し、街へ戻るふりをして建物の陰に身を潜めた。

 そして兵が反対方向を向いた瞬間、一気に足を強化して走り出し、街壁を飛び越える。

 下りた先は、雑木林だ。兵に見つからぬよう、急いで木陰に入る。

 さて。

 紙飛行機は……いた、いた。少し先でジタバタしている。

 こんなときのために、大紫蜘蛛の糸を繋いでおいて良かった。浮力を失って落下するかも?という心配も無用だったみたいだ。

 糸を手繰りながら、紙飛行機に近付く。

 そして私は紙飛行機との旅を再開させた。

 

 木々が増え、いつの間にか廃墟のような場所に辿り着いた。

 神殿跡だろうか。

 崩れた壁や柱を乗り越えて行くと、瓦礫の中で埋もれるように地下への入り口がひっそりと開いていた。紙飛行機は、躊躇うことなくその中へ吸い込まれてゆく。

 さぁて、敵は何人いて、どのくらい強いのか……楽しみだ。

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[良い点] サイヤ人みたいな事言い出したぞ
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