突入・突破・逡巡
侵入者を察知してか、石造に張られた膜のような魔導陣から、見たことないような魔物が湧き出てきました。
翼のあるもの、大きな剣を持ったもの、魔術師然とした杖を携えたもの……いずれも人型です。
「眷属連中だね。懐かし……いや、魔王復活だし懐かしむのは違うけど、さ」
自嘲しながらステラは、城全体を結界の魔法で覆いました。
「探査……《追尾術弾》!」
得意のやつです。これで結界から漏れた分58体は全滅。本丸を目指します。
結界内、勝手知ったる宮廷の中。
絶えず流れる黒い靄と、時折それが固まって出現する魔物……眷属とかなんとか……を蹴散らしながら、観察しながら、少し肉片をいただこうとして靄に還られながら、復活魔術の中心へ。
「……なぁ、宮廷ってのは人手不足なのかい?」
「そんなことはないんですけどね……」
ステラを横抱きにしたまま走ります。
「戦った跡がないので、真っ先に生贄にされたか……それとも……」
リィンが心配です。あの子のことですから、上手くやっていることでしょうし、それに……
「……いやな予感です、ステラ」
「え……って、わぁ⁉︎ 急に止まるな!」
急ブレーキをかけた足元に不自然な石礫が飛んできたのです。サーチで警戒していてよかった。
「これは……!」
印の刻まれた石ころ……宮廷魔術師のふんぞり返っている人が得意な魔術です。
「ステラ、耳を塞いで口を開けて!」
「んぇ⁉︎」
一拍おいて、爆音。衝撃波すら伴うそれによって、見渡す限りの窓ガラスが弾け飛びます。魔術で細工された小石の仕業でした。
「おや……無傷か。さすがはシオン・ソーファーといったところだな」
物陰から、肥太った宮廷魔術師が現れます。
「……何の真似ですか、これは」
「挨拶もないとは。やはり失礼だな、最近の若者は!」
「挨拶より前に攻撃してくる方が失礼なのでは?」
「口答えするな!」
うわ……。
顔を真っ赤にして、男は壁に手をつきます。その指先からインクのように光の筋が走っていき、何かのマーク……これは爆発を意味する魔術式です……が描かれました。
「へたくそ」
マークが完成するより早く、壁を蹴り壊します。
「な」
「鈍いですよ」
蹴りの反動を使い後ろ回し蹴り。丸くたるんだ顎を掠め、昏倒させました。
「よし」
「いいのか」
「死んでませんよ?」
「魔術師としては死んだんじゃないか、プライドとか」
「この状況の宮廷で襲ってきたんですよ? プライドなんて残ってません」
「それもそうか」
それから、続々と何故か一人ずつ襲いくる・待ち受ける宮廷魔術院の重鎮たちを打倒。
だいぶ前にこの宮廷で学べる魔術は全て修めて、なんならその少し上の技術はすでに市井に流布してあるのです。まさかそんな古いものそのままでくるとは……。
◆◆◆
魔王崇拝、その復活の儀式が行われている現場。
ドレインの中心……会議室です。
「ヤな感じだなぁ、全く」
ステラがうんざりという感じで眉根をひそめました。
「どうです? 魔王ですか?」
「やぁ……すごい好奇心だね。質は同じかも? 量はどうしようもないけどね」
……なるほど。
「扉の向こうには二人ですね」
精査。
………………。
俺もまぁ、ヤな感じ、ってやつです。
宮廷を治める王は儀式発動のトリガーとして死亡。ドレイン緩和の魔石が起動する前に、魔力の少ない若めの子たちはほぼ全滅。
そして、ここまで来ればサーチで誰が奥で待っているかわかります。誰が、どうなっているかも。
「――」
開けたくないです。
戸にかけた手が、思わず止まります。
「おや。シオン・ソーファーともあろう者が、興味より先に立つものがあるのかい?」
「ありますよ」
「この先に問題があったとして、キミは解決できないのかい?」
「できますよ」
「やれるのかい?」
「やりますよ。まぁ、見ててください」




