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ぼっち魔女、看取ります  作者: 人藤 左
19/23

突入・突破・逡巡

 侵入者を察知してか、石造に張られた膜のような魔導陣から、見たことないような魔物が湧き出てきました。

 翼のあるもの、大きな剣を持ったもの、魔術師然とした杖を携えたもの……いずれも人型です。


「眷属連中だね。懐かし……いや、魔王復活だし懐かしむのは違うけど、さ」

 自嘲しながらステラは、城全体を結界の魔法で覆いました。


探査(サーチ)……《追尾術弾(ホーミング・シュート)》!」

 得意のやつです。これで結界から漏れた分58体は全滅。本丸を目指します。


 結界内、勝手知ったる宮廷の中。

 絶えず流れる黒い靄と、時折それが固まって出現する魔物……眷属とかなんとか……を蹴散らしながら、観察しながら、少し肉片をいただこうとして靄に還られながら、復活魔術の中心へ。


「……なぁ、宮廷ってのは人手不足なのかい?」

「そんなことはないんですけどね……」

 ステラを横抱きにしたまま走ります。


「戦った跡がないので、真っ先に生贄にされたか……それとも……」

 リィンが心配です。あの子のことですから、上手くやっていることでしょうし、それに……


「……いやな予感です、ステラ」

「え……って、わぁ⁉︎ 急に止まるな!」

 急ブレーキをかけた足元に不自然な石礫が飛んできたのです。サーチで警戒していてよかった。


「これは……!」

 印の刻まれた石ころ……宮廷魔術師のふんぞり返っている人が得意な魔術です。

「ステラ、耳を塞いで口を開けて!」

「んぇ⁉︎」

 一拍おいて、爆音。衝撃波すら伴うそれによって、見渡す限りの窓ガラスが弾け飛びます。魔術で細工された小石の仕業でした。


「おや……無傷か。さすがはシオン・ソーファーといったところだな」


 物陰から、肥太った宮廷魔術師が現れます。


「……何の真似ですか、これは」


「挨拶もないとは。やはり失礼だな、最近の若者は!」


「挨拶より前に攻撃してくる方が失礼なのでは?」

「口答えするな!」

 うわ……。


 顔を真っ赤にして、男は壁に手をつきます。その指先からインクのように光の筋が走っていき、何かのマーク……これは爆発を意味する魔術式です……が描かれました。


「へたくそ」

 マークが完成するより早く、壁を蹴り壊します。


「な」

「鈍いですよ」


 蹴りの反動を使い後ろ回し蹴り。丸くたるんだ顎を掠め、昏倒させました。


「よし」

「いいのか」

「死んでませんよ?」

「魔術師としては死んだんじゃないか、プライドとか」

「この状況の宮廷で襲ってきたんですよ? プライドなんて残ってません」

「それもそうか」


 それから、続々と何故か一人ずつ襲いくる・待ち受ける宮廷魔術院の重鎮たちを打倒。


 だいぶ前にこの宮廷で学べる魔術は全て修めて、なんならその少し上の技術はすでに市井に流布してあるのです。まさかそんな古いものそのままでくるとは……。

 

◆◆◆


 魔王崇拝、その復活の儀式が行われている現場。


 ドレインの中心……会議室です。


「ヤな感じだなぁ、全く」

 ステラがうんざりという感じで眉根をひそめました。


「どうです? 魔王ですか?」

「やぁ……すごい好奇心だね。質は同じかも? 量はどうしようもないけどね」


 ……なるほど。

「扉の向こうには二人ですね」


 精査。


 ………………。


 俺もまぁ、ヤな感じ、ってやつです。


 宮廷を治める王は儀式発動のトリガーとして死亡。ドレイン緩和の魔石が起動する前に、魔力の少ない若めの子たちはほぼ全滅。


 そして、ここまで来ればサーチで誰が奥で待っているかわかります。誰が、どうなっているかも。


「――」


 開けたくないです。

 戸にかけた手が、思わず止まります。


「おや。シオン・ソーファーともあろう者が、興味より先に立つものがあるのかい?」

「ありますよ」


「この先に問題があったとして、キミは解決できないのかい?」

「できますよ」


「やれるのかい?」

「やりますよ。まぁ、見ててください」

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