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ぼっち魔女、看取ります  作者: 人藤 左
18/23

侵略・魔王・興味

「なんだ、これは……」


 一週間ほどかけて、俺たちは宮廷に戻ってきました。

 ウォルフレッドが見やる先、宮廷と城下町を囲う壁の向こうは、禍々しい光であふれています。


「シオン、この光……」

「えぇ。魔王崇拝……邪教の儀式の輝きです」


 宮廷の魔導具を改造して未然に防いだつもりでしたが……発動者が俺の魔力を上回っているということでしょうか。


「どうする、シオン!」


 儀式は生贄タイプの魔導陣を展開し、魔力を吸い上げ供物とするものです。……発動から時間が経っていないのか、はたまた別の理由があるのか、ドレイン状態は続いているようです。


「では、在野の魔術師としての意見ということで」

「構わん。……述べよ、シオン・ソーファー」

「僭越ながら。騎士団は団長のウォルフレッドと数名以外、門の前で待機。民間人を救出し、その介抱をお願いします。ドレインによる衰弱が予測されるので、そのように」

「わかった。全員、待機用意!」

 ウォルフレッドの号令で、瞬く間に救護テントが広がっていきます。


「事態悪化に備え、足の速いものはギズ村への応援要請を。俺と……ステラはどう?」

「ボクも行くよ。魔王崇拝なんだろ? じゃあ魔女の出番だ」

「ありがとうございます。ヘリオス、着いてきてください」

「………………、えぇ。任せなさい」

 精霊であるヘリオスには、魔力を吸収される環境は堪えることでしょう。しかし、いざと言うときのためにお母さまのダンジョン展開は手札として持っておきたいのです。


「突入したウォルフレッド以下騎士団は民間人の救助を最優先。俺たちは儀式の停止を目標に行動します。よろしいですか、ウォルフレッド騎士団長」


「任せろ。任せたぞ、シオン」


◆◆◆


 街の人たちは、幸い風邪をひいたような状態で踏みとどまっていました。意識はしっかりしていて、これなら結界の外で安静にしていれば治るはずです。


「カウンター、働いてくれてるみたいですね」


 万が一に備えて、儀式への対抗策は二つ残しておきました。一つは俺以上の魔力でないと儀式魔術を使えないようにするもの、もう一つはドレインの対象を街の人々ではなく俺があちこちに溜め込んでおいた魔石に向けるもの。最悪は免れたみたいです。


「キミ、こうなることわかってたんじゃないのか」

 馬に揺られながら、ステラが問いかけます。


「なるかもしれない、とは。万が一の保険ですよ、あくまで」

「術者の目星はついてるのかい?」

「…………皆目見当も」


 誤魔化そうとしたら、ぽすんと小突かれました。相変わらず痛くありません。


「ウソだ。キミのことだ、万が一だろうと可能性の精査くらいするさ」

「……降参です。宮廷で俺以上の魔力を持つのはリィンくらいなので、多分あの子でしょう。理由はわかりません」

 魔導陣はおそらくブライ院長らだとは思いますがね。


「質問を返すのですが、ステラ。魔王ってどうなんですか?」

「……えらいざっくりとしてるねぇ」

 まぁ、ざっくりとしか知らないので。


「まぁ、そうだな。そもそも魔王っていうのも、崇拝……つまり周知と認知によって存在が補強されていくものだ。生まれたてならまだ、ナナホシの魔女とかが死力を尽くすような相手じゃない。多分」


 おとぎ話に聞くような、絶対の存在ではない……と。


「まぁ、魔王ってのがいたらいたで、ほっといて逃げればいいだけですからね」

「おや、珍しいね。逃げるのか」

 そんなに珍しいのでしょうか。ステラは目を丸くします。


「あっちはまだ魔力を吸い上げている最中……移動できるとしても、宮廷の中くらいでしょう。それ以上は魔導陣とのリンクが途絶える……へその緒の切れた赤ちゃんです。俺が仕込んだ魔石もまだ保ちそうですし、街の人たちを避難させれば総魔力量も少なく済みます。あとはトラルや静帝圏に話をつけて協力してもらうだけですよ」

「おー……すごい冷静……」

 と、話しているうちに、見上げるほどの宮廷。


「――」

「シオン、楽しそうな顔するんじゃないよ」

「してませんよ」

「してたよ」

「……しましたけど」

 しかし、抑えろというほうが無茶ですよ。

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