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カウントアップが止まらない  作者: 白辺 衣介
三章 勇者と末裔と異世界人と
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勇者と末裔と異世界人と 4

「そういうことは先に言えよヴァ―カ!」


 銃口を向けられたリディアは持ち前の足で地を蹴った。純粋な速さだけで言えば、この中で最も早いリディアだが、この中で最も付き合いが長いので、簡単に次の行動、方向が予測できる。

 時折流れ弾が飛んでくるコウヤは、〈ガイアプレート〉を前面に発動することで防御している。間違いなく、コウヤの行動が最適解だ。


 このマシンガンは大量の弾を撃ち出す代わりに、一発一発の威力がハンドガンよりも低い。その分魔力の消費は少ないことが救いか。しかし、マシンガンの本領は消費魔力を減らして連射することではない。


「確かに、連射できるのは魅力的だけど……威力がちょっと低す――」


 コウヤが言い切るよりも少し早く、俺は弾の中身を入れ替えた。そう、魔法に。


 唱えた魔法は〈ヴォルト・ショット〉。貫通力と速さが自慢の、雷属性を代表する中級魔法だ。込められた雷は元来の貫通力に加えて、銃の特性を取り込んで自身の威力を跳ね上げる。

 上級魔法には及ばないまでも、中級魔法の域を超える貫通力を得た雷の弾丸は、見事〈ガイアプレート〉を貫いた。


「――ぎることはないね。あはは……」


 直撃しなかった代わりに、威力を目の当たりにしたコウヤは、乾いた笑い声を漏らした。

 さて、コウヤばかりを見ていては、他が疎かになってしまう。コウヤは反撃することはないだろうと踏んで、残り二人に照準を合わせる。


 込めた〈ヴォルト・ショット〉の弾はまだ残っている。これが、マシンガンの強みだ。重ねて言うように、ハンドガンと比べるといくらか威力は落ちる。が、それでも高威力と言えるだけの攻撃力は備えている。


「俺だって、銃に何の対策もないほど馬鹿じゃねえぞ! 行けっ、連鎖鉄鎖(チェイン・チェイン)!」


 ディーの服の袖から鎖が伸びる。お得意の時空間魔法ではないことから、何らかの魔道具――この前言っていた勇者七つ道具とかいう、ふざけたものだろう。


「鎖ぐらい、撃ち落とせるさ」


 連鎖鉄鎖と呼ばれた鎖は、俺の手元にあるマシンガンを目指し、一直線に突っ込んでくる。お世辞にも射撃の才能があるとは言えない俺でも、これまでの経験にものを言わせ、それを撃ち落とそうと引き金を引く。


 が、しかし、弾は一発も当たらなかった。否、当たってはいるが、目的の場所に当たっていない。

 鎖が、唐突に進行方向を変えたのだ。


「勇者七つ道具のひとつ! 連鎖鉄鎖! 進行方向を九〇度変えることができる、ライトニングが造った魔道具だ! 九〇度以外曲がらねえが、三次元的な動きを組み合わせれば、相手を翻弄することができる! ってライトニングが言ってた!」

「なるほど、ふざけた魔道具だ!」


 空間を縦横無尽に駆け巡る連鎖鉄鎖は、気にかけるだけ無駄だ。俺の技術では、狙ったところで当たりはしないのだから、操っている本体に負担をかけるべきだ。時折、連鎖鉄鎖やリディアに視線を向けることも忘れられない。

 やはり、あくまでも一般人である俺には、超人二人の相手が厳しいという現実が見える。


「やっぱ、お前はまだ甘いな!」

「何を言っ――なっ!」


 リディアに向けていた右腕に、鎖が衝突する。その衝撃で、俺はマシンガンを手放してしまった。その鎖は地中から伸び、俺から見て左方向に伸びている連鎖鉄鎖とはまた別物だった。それはつまり、


「連鎖鉄鎖も二つある!」


 それもう七つじゃなくて八つだろ。


「いよっしゃァ! 隙ありィ!」


 俺の手からマシンガンが離れた隙を、好機と見たリディアが無理矢理方向転換を行って突っ込んでくる。当然、俺に回避行動はとれない。視覚がそれを認識しても、体がそれに反応できない。


 これ、どこまで吹っ飛ぶだろ。


 漠然とそう思うや否や、俺の体に強烈な衝撃が走る。痛みはなくとも、何かにぶつかればきっちり吹っ飛ぶ。俺は重いわけではなく、硬いだけなのだから。

 まもなく、俺は城の壁に背を強かに打ちつけた。


「……これ、また半殺しにされるんじゃないか……?」


 外壁を突き破り、内壁を凹ませて漸く停止した俺は、震える声で呟いた。





 ほどなくして、王直々の謹慎令を馬鹿二人と共に食らった俺は、自室でマシンガンを分解しては組み立てる、という作業をひたすらに行っていた。メンテナンスはとっくに済ませているので、特に意味はない。


「せめて街に出られりゃあ、買い物でもできるんだけどなあ」

「ちょっと、お兄ちゃん〆てくる」

「やめてやれ」


 指の関節を鳴らしながら、戸に手をかけたソピアを呼び止める。ソピアは身内に対して容赦をしないところがあるので、放っておけば半殺し確定だ。そして、馬鹿二人は外に出たがる性格だ。特にリディアは、落ち込んでいるところに、妹からの追い打ちとなれば、先日のような暴挙に出かねない。

 口を尖らせて、誰がどう見ても不機嫌なソピアは、振り返ったその足で、作業机の前に座る俺の上に座った。


「じゃあ、銃の作り方とか、教えて」

「いや、危ないからソピアはっていうか、女はやめといた方が」

「教えて」


 有無を言わせぬソピアの威圧感に、俺は頷くだけだった。


「じゃあ、まずは俺がよく使う鉱石の説明からするぞ」


 作業机に置いてあったメモとペンを手に取り、キリナイトを始めとした、鉱石の特徴を書き連ねていく。ぶっちゃけ、銃を造るときに使う鉱石の種類は非常に少ない。合金も、アーキライトと普通の鉄を混ぜただけのもので、これも簡単に作ることができる。

 キリナイト、アーキライト、鉄。この三種だけで、銃は造ることができる。


「この三つの違いは分かるか?」

「青いのと、茶色いのと、銀色のやつ?」

「まあ、色は合ってるんだが……」


 俺が聞きたかったのは、色ではなく性質だ。キリナイトはいつか説明した通り、アーキライトも同上だ。鉄はアーキライトと混ぜやすく、かつ安価だから使っている。他に、アーキライトとより相性が良く、軽い金属があるが、高いのでそれの代替として鉄を使っている。


 ソピアは、人によれば子守歌にもなるつまらない話を、大真面目に聞いている。学校で鉱石について説明される授業では、実に生徒の半数以上が眠っていた話を。きっとソピアも、授業では話半分に聞いていたんだろう。でなければ性質を覚えていないはずはない。


「それって、便利なの?」

「まあ、魔力を蓄える系統の鉱石と比べると、いささか限定的だけど、使えないことはない。アーキライトを盾にすれば魔力を弾くし、キリナイトを盾にすれば魔法を反射することもできる」

「……アーキライト、いる?」

「アーキライトの方が軽いから、携帯用の盾ならアーキライトの方がいいな」


 要塞などの、移動する距離が短い、もしくは移動する必要がない場所では、アーキライト製の盾は無用だ。重量のある魔物相手だと吹き飛ばされるし、弾くと反射では、当然後者が選ばれる。時と場合と場所を弁えて、武器や防具は選ばれる。まあ、俺はいつでも銃と普通の服だが。


 そう考えると、うちのメンバーは武器をろくに変えていない。スピリティア兄妹は軽装で、ナイフ。コウヤは片手剣、クリアは魔法補助の杖。臨機応変に武器を変えるのはディーぐらいか。それでも防具は一張羅だ。


「そう考えると……わたしたちって無防備、なのかな」

「無防備も無防備だな。リディア、コウヤ、ディー以外は防具を装備してないし」


 最前線に出ている俺が防具なしなのも、化け物級の防御力のおかげだ。今となっては、防御無視の付呪抜きという条件付きで、何者の攻撃も無傷で耐えられると自負している。

 しかし、このやり方、戦い方で誰一人大怪我を負うことなく、王都までやって来たのだから、間違いではない。むしろ最適解と言える。それに馬鹿二人を加えれば、向かうところ敵なしじゃないのか?

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