78話 無計画な計画
「私の知識が間違っていたら訂正してほしんだが、正式なファミリーの旗揚げには一定の資金とメンバーがいるはずだね」
「そうです。規定としては」
西の幹部の言葉に若手幹部は規定を答える。
まずは資金。単騎だと一年か二年はダンジョンに潜る必要がある金額。そのくらいの余剰資金がなければ旗揚げ時のもろもろやトラブルに対応できないだろうというギルドの算出に基づく規定だ。
「君、それだけの資金はあるかね」
「半分くらいはあります」
パーティーを作るわけでもないのに一人でそれだけ稼いでいる、というのは確かに優秀だなと東の幹部は驚きを隠せない。
「じゃぁ残りの半分はどうするんだ。借りるあてでもあるのか」
「それは、メッサ―さん。貸してください」
「はぁ?」
部屋から出そびれて偶然いただけのメッサ―は突然ふられて驚く。
「1割増しで返済します。返済は毎月の利益から1割でどうですか」
「1割たってなぁ。1割か」
しかし彼も商売人。頭の中でぱちぱちと計算が始まる。
確かにその程度の余剰資金はあるし、必要に応じて人に金を貸すこともしたことがないわけではない。
以前こいつの稼ぎを見たがかなり儲けていた。実力もある。
そう考えると固い貸し付け相手。貸した金が1割増しで帰ってくるなら十分だろう
ビジネスマンの部分がOKという裁定を出し、goサイン。
「わかった。良いだろう。念書をかけ。何か担保もあればなおいい」
「ありがとうございます」
「じゃぁあとはメンバーだ。最低3人だったな」
「えぇ、まぁ最低はそうですね」
冒険者の基準で言えば三人はパーティーの部類だし、三人集まったからと言ってファミリーを作ろうという冒険者はいない。これはあくまでも旗揚げや解散時に提出する書類に記載するために必要な人間がこれだけいるというギルドの都合に基づく数字。
「えっと、三人、誰か」
そこで周りの冒険者を見る。
ペドロファミリーの面々は
「ごめんなさい。できる限りの協力はしたいですが、ファミリーを辞めることになるので、その話は協力できません」
というアニーの言葉に同意見。
キャッスルは
「俺も嫌だよ。今の職場が肌にあってるんだ」
と拒否。
そうなると
「私ですか?私は」
ピーターはすこし考える。
私にもそこまで義理はないはず。
でも考えてみると、私はもともとファミリーから離れてほかのファミリーに行く予定だったしその手続きまでしている。
そこのファミリーが崩壊してしまい、団長の温情となんとなくの雰囲気で元のファミリーに戻り仕事をしているが立場としては宙ぶらりんで微妙な立場。
だったら、新しい組織に行くのも十分ありだろう。命の恩人がやるといってるのだ。恩義を果たせるし、今の組織にしても私のような扱いにくい立場の人間を追い払える。
それに
「給料は?」
「当分は、経費や返済を差っ引いた稼ぎを4等分して4分の一でどうです。人が、増えるかなぁ、まぁ増えたらまた考えるとして、僕とあなたと最後の一人で4分の1ずつ、残った4分の1はファミリー全体で使う余剰金ということで」
この人は実力者だ。
実力ある冒険者の組織なら稼ぎもいいはず。
牛の尻より鶏の嘴のほうがいいのではないか。
「わかりました。その話に乗りましょう。ボス、短い間でしたがお世話になりました。私みたいな外部からの転職組に色々と温情をかけてもらい」
「話が長い。まぁお前は、やめるって話だったからな。手続きはちゃんと済ませろよ。離れるというなら助けてやるわけにはいかんが、自分の判断ミスじゃないことを祈って頑張って生きていけ」
「ありがとうございます」
ここで適当な利用をつけて拒否をしたら話は別だろうが、ニコライもここまでトントン拍子に用意を進められると水を差すのも悪いという気持ちになっている。
カッとしやすいが人情味もある男。一人の人間がした決断にとやかくいうほど野暮じゃない。
「ありがとうございます」
「いいですって。私の考えもあってのことです。でもあと一人はどうするんですか?」
「そうよ。3人目のあてがあるの?」
「それは、どうしよう」
納得できないブレンダが口をはさむ。
良い人材を勧誘しに来たのだ。チャンスがあるならまだ手を出したい。
「そういう事でしたら、お手伝いできるかもしれません」




