46話 メンツと復讐
「まぁあなた、というよりその顔を見るに、おそらくご同僚たちですよね。何があったのか聞きたいのは」
「えぇ、お見通しですか」
これについては正直アニーも気が進まない。
「ファミリーの皆さんがその、復讐だとメンツが立たないと、燃えていまして」
その一言にNはなんともいえない顔をする。
本心から呆れているが、それを顔に出さないようにする努力をしている顔。
それを見たアニーは、悲しみと恥を隠す笑みを浮かべてつづけた。
「わかります。言いたいことは。私たちの判断ミスで指示に従わず勝手の攻撃して、それで反撃をうけてぼろぼろになって、彼は死んでしまったんですから、私達のせいです」
「自分だけを責めちゃいけません」
しゃべりながら笑みが悲しそうな顔に変わっていく戦鬼にNは言った。
「死んだ彼もその判断に乗ったんでしょう。みんな愚かだった。彼も悪い。私もわるい。みんな悪い。そうやって自分の中で決着つけてでも前に進むしかないんです。死んだ人間は生きている人間に文句言いませんから悪くいっても怒りません。その人に怒られるときには、自分も悪い人間だったと生きてる人間に言われてるでしょう。二人で仲良く生きてる人間を怨めばいい」
「不思議な考え方ですね」
戦鬼は笑ってしまった。
Nも合わせて笑う。
「なんか雰囲気よさげじゃない?」
「お見合い成功ですか?」
「戦鬼は美少女だしNもイケメンだからお似合いではありそうだが」
「あの子ちょっとコミュ力と生活力と女子力が足りないわよ。あと女の子の追っかけが数人いるからそれ敵に回すわね。怖いわよぉ。私ですらちょっと付き合えない感じの子達だもん」
「Nさんは、なんか不思議な人ですからどうなんでしょうね。もてそうですけど、女には縁がなさそう。がっつりしてませんし。興味がなさそう」
「それでも」
一通り笑ったあと、戦鬼はつづけた。
「冒険者は実力を示さなければいけないんです」
「メンツの問題ですか」
「プライドの問題、とファミリーの一人は言っていました」
ファミリーの家族が死んだのだ。その仇討ちをファミリーはしなければならない。
実益でもなければ理屈でもない。
仲間の仇討ちするのはファミリーの存在意義でもあり、殺されたまま黙ってはいられないというファミリーのプライドの問題。
「しかしギルドも、西も東も情報を隠しています。箝口令が敷かれているようで、ファミリーには話が来ません。何か起きている、何かがあった。箝口令がある以上それはわかりますが、誰も教えてくれません」
「そりゃまぁ、そうでしょうねとしか言えませんね。怒れる導火線に火を近づける真似は誰もしたくない」
Nも話が回ってくる訳じゃないが、表にされていないということはまぁおそらくギルドか東西が主導して秘密裏にいろんなファミリーの調査でもしているのだろう。
そんな時に下手な情報を流して暴発してもらったら困るのだ。
「そこで謎の男、どこに所属しているかわからないから手荒な真似をしても良さそうな私を突こう、って話なんでしょう?だからファミリーも協力して私を探した。でもね、私も箝口令が敷かれている。話すことはできません。聞きたければ西や東、ギルドの偉い人に聞いてください。箝口令を破れば話すことはできますが、僕も火縄銃の火縄に火をつけて暴発するか試そうなんて愚かなことはしたくありません」
「すべてをお見通しですね」
隠し立てすることもないので、アニーはそういって呆れたように笑った。
「自分たちの実力が足りなかっただけです。そして、私たちは自分たちの実力を間違えて、命令を無視して独断専行した。その評価を周りから受けている。それだけです。あの時の当事者はみんなそれで納得して、罰をうけるつもりでいるのですが」
「無責任な外野の方が盛り上がるのは世の常ですからね。あなたも大変だ」
Nはそういって立ち上がった。
「でもね、そういう事なんで、僕は話せません。断られたとか彼もギルドに口止めされているらしいと、そんな風に言っておいてください。そして私は当分逃げます。面倒ごとは嫌いだし、人に嘘は付きたくない」
「真実を語り給え」
アニーの口からついついでた言葉。
二人は少し黙る。
「そうです。真実を語り給え。あなたは板挟みになって大変でしょうが、追わないでください。いいですね」
「わかりました」
アニーも立ち上がり、最後にもう一度お礼を言おうとしたところに
「そうはいかねぇな」
と乱入者。




