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「孤島立国」異世界で自分達の国を作ろう   作者: 八神夕輝
第二章 システア共和国
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【四九】ワクチン接種 獣人族その一

 高大一貫教育の大学三年生になり、実習のために船で離れ小島へ向かっていた主人公は突然の嵐に遭遇してしまう。

 気が付くと大学生男子一名、女子七名と女教師二名だけが異世界の孤島に漂着していた。

 ここから孤島でのサバイバル生活が始まる。彼、彼女らは専門分野別に集められたエリート達だった。

 生活する上で不可欠な拠点造り、食料の調達から始めることになる。

 かつての世界の技術力を駆使した武器や輸送手段を筆頭に様々な開発も行うことになった。

 最大の問題は武器、輸送機に使用されていた原料がこの世界には存在し無いこと。

 新たなエネルギーを得るために悪戦苦闘するメンバー達。

 発見された常識を覆す新エネルギーは後の大発明へとつながって行くことになる。

 この世界を統治する王国や巨大生物、未知の病などと格闘する日々が続く。

 次々と降り掛かる問題を持ち前の技術力と結束力で乗り越えて行く。

 自分達の国を創り上げるため奔走する冒険と青春の物語である。

 メンバー達が予防接種して三日が経った。

 大きな副作用も無く、早苗(さなえ)、陽鞠(ひまり)の検査で全員無事に抗体が定着したようだ。

 「早苗、陽鞠・・苦労を掛けてしまったが、良くやってくれた、ありがとう・・メンバーを代表してお礼を言わせてくれ」

 「ふふっ・・勇作からこう言われるのはまんざらでも無いねぇ・・でも、お礼はベッドの上でお願いしようかねぇ・・」

 「うっ・・わ、分かった・・善処する」

 「はい、はーい・・私はねぇ、んーどうしようかな・・ベッドの上も捨てがたいんだけど・・うん、これにしよう!デートして美味しい物を食べに行きたーい!」

 「・・はぁ、分かった・・この疫病対策に目処が付いたらデートしよう」

 「わーい、やったー!」

 早苗と陽鞠が頑張ったのは皆分かっているので何も言わないが、他のメンバー達からは羨望(せんぼう)と若干の嫉妬(しっと)の混じった視線が勇作に集まる。

 しかし、いつものことながら本人は気が付いていない。

 メンバーの一部から溜息が漏れたのは言うまでも無い。

 作戦司令室に集まっているメンバー全員に勇作が指示を出す。

 「早苗と愛理(あいり)は俺と一緒に獣人族の族長に接種の内容を説明に行く・・心愛(ここあ)と陽鞠、花江(はなえ)さん、初音(はつね)さんは拠点でワクチンの増産をお願いする・・花梨(かりん)と志摩(しま)、希美(のぞみ)は感染源撲滅のための準備を始めてくれ・・不足の事態が生じた時は遠慮無く連絡して欲しい・・他に何か質問はあるか?無ければ行動開始だ!宜しく頼む」

 「「「はい!」」」

 勇作の号令にメンバー達は一斉に動き始めた。

 これ以上の疫病感染拡大をどこまで抑えられるかは時間との勝負だ。


 獣人族の族長であるレペンディス代表に会うため、早苗に道案内を頼んで宮殿へと急いだ。

 門前を守る狐獣人の騎士に代表との面会を求めた。

 すぐに戻って来た騎士は面会の許可が出たと宮殿へと先導してくれた。

 そこへ獣人族副代表で以前、早苗にこっぴどくやられた虎獣人のフォティアが現れて絡んで来た。

 「おう、久し振りだな・・名前は早苗だったか?今日はもう一人の嬢ちゃんはいねえのか?・・この間のリベンジと行こうや」

 騎士は慌てた様子で止めに入る。

 「フォティア様、お待ち下さい・・こちらの方がたはこれから代表との謁見(えっけん)があるのです、お許し下さい」

 「はぁ?何言ってやがる、レペンディスとの謁見だあ?・・そんなもん後回しにしろ!」

 「そ、そうはいきません・・既に中で代表がお待ちになっていますので・・」

 「そんなこたあ俺には関係ねえよ、勝手に待たせとけ・・おう、逃げやしねえよな?付いて来い!」

 そう言うとスタスタと歩き出した。

 (早苗、あれが例の脳筋バカか?)

 (そうだねぇ・・言い出したら止まらないから早いとこ締めた方が良いねぇ)

 (そうか・・)

 勇作は手っ取り早く済ませるので暫(しば)し待っていて欲しい旨を騎士から代表に伝えて貰えるよう頼んだ。

 「おう来たか・・さあ早苗前回のリベンジと行こうぜ!」

 仕方無いと溜息を一つ付いて前に出ようとする早苗を勇作は制した。

 「・・?」「今回は俺が行く」

 愛理が心配そうに「勇作くん、大丈夫?」と聞いて来た。

 「ふっ・・魔人族の時に同じようなことを経験済みだ」

 「勇作、やるんなら相手はかなり丈夫だから多少の手加減で行けるよ?」

 「早苗・・分かった、早々に決着を付けて来る」

 勇作が一歩進み出るとフォティアは高笑いしながら「おう、女の前では格好付けたいからなあ」と嘲笑(あざわら)った。

 「戦いの前に良く喋(しゃべ)る奴だな・・脳筋な上に武人の心構えも無いとは、吠(ほ)える奴ほど弱いって諺(ことわざ)を知らないのか?」

 顔を真っ赤にしたフォティアは「な、なんだと!・・俺様の頭が悪いってのか?」と吠える。

 「それ以外に何がある?」「貴様!生かして帰さん!」

 フォティアは面と向かって馬鹿にされたのが分かり激高していた。

 「勇作くん、珍しく煽(あお)ってますよね?」

 「ああ、煽ってるねぇ・・これは戦う前から戦略勝ち、勝負あったかねぇ?」

 フォティアは腰に下げた大剣を抜くと獣人族固有の身体能力を生かして突進して来た。

 「見え見えだな・・」勇作は腰の両ホルスターから収束型拳銃を引き抜くと同時にフォティアの剣線から身体をズラした。

 「・・!」目標を見失ったフォティアたたらを踏んだ。

 「・・あの、勇作くんて以前からあんな格闘術出来ましたか?」

 「ああ、あれはね、今みたいに問答無用で魔人族に囲まれて大変だったらしいからねぇ・・身体の捌(さば)き方とかを志摩に特訓して貰(もら)ったみたいだよ?」

 「そうなんですね・・格好良いな」

 頬を赤く染めて勇作を見詰める愛理は恋した少女そのものだ。

 「まあ、確かにそれには同意するけどねぇ・・おっと、勝負が付きそうだよ」

 勇作を見失ったフォティアだが、すぐに標的を見付けると即座に突進して来た。

 「くっ・・流石に獣人族格闘一位なだけはあるな・・避けるのも一杯一杯だ、しかし・・」

 銃口をフォティアに照準を当てながら突進を躱(かわ)した勇作はその背に向かって二丁の拳銃の引き金を絞った。

 かつての世界の拳銃のように派手な火薬爆発音はせず、収束エネルギーの「パシュッ」という射出音が響いた。

 「グワッ・・」

 もろに二発の収束エネルギー弾を喰らったフォティアはもんどり打って転がった。

 しかし、よろけながらもすぐに立ち上がって来るのはすごい。

 使用した収束弾の威力は最大出力の三分の一、当たり所が悪ければ普通の人族なら即死に至るものなのにだ。

 勇作は回復する間を与えずに収束エネルギー弾を放った。

 まともに腹で弾を受けたフォティアはここで意識が途切れ、模擬戦は終了した。

 「勇作くん!すごい」「キレッキレだねぇ、勇作」

 勇作は遠巻きにみていた衛兵達に「この男の処置は任せる・・心配するな、殺してはいない・・軽い怪我をしただけだ」と叫んだ。

 (本当に身体の丈夫な奴だ、普通なら死んでるぞ・・まあ、もっともあばら骨の二、三本は逝(い)ってると思うが・・)

 衛兵達がフォティアを担いで建物内に消えると、謁見の許可を得るため建物内に行っていた衛兵は、ピクリとも動かず運ばれて行く彼の光景にギョッとしながらも謁見の許可が出たことを伝えてくれた。

 勇作は愛理達に「すまん、ちょっとやり過ぎた・・」と謝った。

 「そんなことは無いと思いますよ?向こうから仕掛けて来たんですから」

 「志摩との特訓が生きてる感じかねぇ・・格好良かったよ?」

 二人に肯定と賞賛を貰って居心地の悪い勇作だった。


 宮殿入口の大扉まで案内してくれた衛兵と別れ、ここからは猫獣人でメイド長であるラウラが案内してくれる。前回と同じ手順のようだ。

 「勇作様方をお連れしました・・代表にお取り次ぎを・・」

 謁見場前に立つ衛兵にラウラがそう伝えると、話は付いて居たようですぐに扉を開いて招き入れられた。

 中には既に代表のレペンディスを始め各種族の代表が中央通路の両側に立ち並んでいた。

 「おお、そなたが勇作殿か・・早苗殿、愛理殿も来られたか・・良く参られたこちらへ」

 代表は一段高い雛壇(ひなだん)にある椅子から立ち上がると、歩を進める勇作達の方へ自ら向かった。

 「この度のこと、勇作殿達には様々な尽力して貰っていること感謝に堪(た)えぬ・・」

 レペンディスは勇作の手を取って礼を述べた。

 「いえ、未だ調査を終えただけで実際の対策はこれからです・・気を引き締めて行きましょう」

 代表との挨拶もそこそこに獣人族の重鎮達を集めて対策会議を開いた。

 フォティアとのことも「済んだことですので・・」と謝罪を受け入れ話題を進めた。

 まずは対策の根幹となる三つの条件を提示した。

 一つ目は言うまでも無くワクチン接種だ。

 予防効果があるのはもちろん、検証は必要だが罹患(りかん)している患者に対してもウイルスや菌の増殖を抑えながら死滅させることが期待出来る。

 二つ目は感染源である媒介者の駆除である。

 まずは都市部に蔓延(はびこ)るネズミとそれに寄生するノミの徹底した駆除が必須であること。

 その後、各種族の地方都市へと手を広げる予定だが、ネズミが大発生中のエルフ族の里は中でも緊急性の高い地域であろう。

 三つ目として継続的に疫病対策として最も重要なのは、衛生管理の徹底改善が必要だということだ。

 飲料水等の生活用水を汚水と確実に区分処理することを早急に行う。

 また、馬や牛、鶏等の家畜飼育環境の衛生改善を徹底すること。

 疫病感染の温床にさせないためには、汚水処理と厩舎改善は必須となる。


 早苗からの説明をじっと目を閉じて聞いていたレペンディスは、ゆっくりと目を開くと「一番目にワクチン接種、二番目は感染源駆除、三番目は衛生対策と言うことだな?」と確認してきた。

 「そうですねぇ・・その通りです」

 「分かった・・勇作殿、何か補足はあるか?」

 「我々の乗り入れたエルピーダを拠点として各都市を回ります・・ワクチン接種には早苗、愛理、志摩の三名、感染源駆除は陽鞠、花梨と俺の三名、衛生対策には心愛と希美の二名、ワクチン製造等のバックアップに初音さんと花江さんの二名に当たってもらいます・・我々だけでは到底手が回りませんので、それぞれに技術者を教育しますので引き続きその方々に作業を続けて頂きます・・早急に人選をお願いします」

 「了解した・・それぞれの技術者を教育してもらった後、勇作殿達はどうするのだ?」

 「はい、各種族の里で同様の処置をしながら順番に回って行きます・・今回は作業が多いので我々十名全員で動きます・・その後も処置を継続して頂くことになりますから通達を出しておいて頂けると手間が省けます」

 「委細承知した、時間が勿体(もったい)ない、すぐに動こう・・誰かいるか?」

 レペンディスの矢継ぎ早に出される指示に宮殿内は蜂の巣を突いたような状態になっていた。

 勇作達は準備が出来次第、処置を始めると伝えて宮殿を後にした。


 拠点に戻った勇作は作戦司令室に集まったメンバーに疫病撲滅作戦の内容を伝えた。

 「先日、相談していた内容とあまり変わりは無いが、もう一度確認のために伝える・・まず、エルピーダを拠点として各都市を回る・・ワクチン接種だが初音さんと花江さんにはワクチンの増産をお願いしたい・・早苗と陽鞠に技術的な教育をお願いしていたがどうだ?」

 「うん、もう大丈夫だと思うよ・・しっかり、作れているからねぇ」

 「私も大丈夫だと思うよ-!」

 「そうか分かった・・大変だと思いますがお願いします」

 「分かったわ・・」「任せて置いて・・とまでは言えないけど頑張るわ」

 やる気に満ちた二人の瞳に頷(うなづ)いた。

 「次にワクチン接種だが、早苗をチーフに愛理と志摩にサポートに付いてもらう・・各種族別に実際に接種処置が出来る人を人選してもらっている・・これらの人達への教育が主目的になる」

 「了解だねぇ・・」「分かりました」「了解や・・」

 「全くの素人に教えることになるから苦労も多いと思うが、宜しく頼む・・次に感染源駆除だが陽鞠をチーフに花梨と俺がサポートに回る・・この作業は最も感染リスクが高く技術的、駆除方法も難しい物になると思う・・だから各種族の応援は頼んでいるがあまり当てには出来ないと思ってくれ」

 「だよねー!・・相手はすばしっこいからね!」

 「そうですわね・・もっともその対策も用意してありますわ」

 「そうなのか?」

 「そうですわ・・仮に新規に開発した生体探知レーダーで感染源を見付けられても実際に駆除するのはかなり困難を極めると思いますわ・・その対策として考えたのがこれですわ!」

 花梨が勢い良く取り出した箱を開けてメンバーに披露したものは・・収束式拳銃だった。

 「えー!今までのと変わらないじゃん!」「そうやな・・」

 「あらあら花梨としたことが・・」「そんなひどいことを言っちゃだめですよ?」

 「そうは言うけどねぇ・・」「・・ふっ・・馬鹿か・・」

 メンバー達からの遠慮の無い言葉にプルプルと身体を震わせている花梨に勇作が声を掛けた。

 「いや、皆、違うと思うぞ・・花梨が同じものを出してくるとは思えない・・そうだろ?花梨」

 うっすらと涙を浮かべた瞳をパッと輝かせて勇作を見た。

 「そ、そうですわよ・・私がここで同じ物を出すと思ってらっしゃるのかしら?・・」

 皆から押され気味だった花梨が一転、攻勢に出た。

 「この収束式拳銃には既にエネルギーパックがマガジン部に実装されておりますわ・・でも今回新たにもう一つパックを実装出来るようにしましたの・・」

 花梨が取り出した追加エネルギーパックは拳銃本体の上部にスコープのように取り付けられるようになっていた。

 「この筒の中には小さく畳まれた電磁ネットが入っていますの・・パックの後ろにあるスイッチを押すことでネットが射出出来ますわ」

 床に向かって射出されたネットは綺麗な円形を保ちながら広がった。

 「今は作動させていませんが・・実際には地面にネットが着いた瞬間に高電圧が流れるようネットの材質に導電性の金属を練り込んでありますの・・次弾はパックの交換で可能になりますわ」

 花梨は控えめな胸を張った。


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