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「孤島立国」異世界で自分達の国を作ろう   作者: 八神夕輝
第二章 システア共和国
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【四四】魔人族 その一

高大一貫教育の大学三年生になり、実習のために船で離れ小島へ向かっていた主人公は突然の嵐に遭遇してしまう。

 気が付くと大学生男子一名、女子七名と女教師二名だけが異世界の孤島に漂着していた。

 ここから孤島でのサバイバル生活が始まる。彼、彼女らは専門分野別に集められたエリート達だった。

 生活する上で不可欠な拠点造り、食料の調達から始めることになる。

 かつての世界の技術力を駆使した武器や輸送手段を筆頭に様々な開発も行うことになった。

 最大の問題は武器、輸送機に使用されていた原料がこの世界には存在し無いこと。

 新たなエネルギーを得るために悪戦苦闘するメンバー達。

 発見された常識を覆す新エネルギーは後の大発明へとつながって行くことになる。

 この世界を統治する王国や巨大生物、未知の病などと格闘する日々が続く。

 次々と降り掛かる問題を持ち前の技術力と結束力で乗り越えて行く。

 自分達の国を創り上げるため奔走する冒険と青春の物語である。

 志摩(しま)と勇作(ゆうさく)は荒涼とした大地を東へとひたすら進んでいた。

 もう三日目になる。一日目に草原を抜けてからはずっとこの景色だ。

 「なあ勇作・・いい加減飽きてきたな、予定ではそろそろなんやろ?」

 少し焦れた感じで言うのは、栗毛色のセミロングの髪を無造作に後ろで纏(まと)めている巨乳美少女、経外部の水谷志摩だ。

 かつての世界では関西出身者であり、何でもズケズケ言ってくるさばさばした性格だと思いきや知的で一途で頼りになるお姉さん気質であったりする。

 「ああ、その筈(はず)なんだが今のところ変化は無いな」

 そう答える勇作は統括部で異世界に飛ばされた十人の仲間のリーダーである。

 今回、勇作が魔人族を担当したのには理由があった。

 エルフ族や獣人族等の他種族に比べて魔人族は他との交流がほとんど無く、極めて閉鎖的だと言われているからである。

 これには歴史的な背景もある。

 元々、獣人族を凌(しの)ぐほどの身体能力を持っていながら大陸の辺境に住んでいるのは他種族との軋轢(あつれき)が原因だ。

 集落や里をあまり形成せずに単独行動が多いのも魔人族の特徴だ。

 ルールや慣習にあまり囚(とら)われない生き方が他種族との間に亀裂を生んだ。

 そんな中でも最も規模の大きい集落に今、向かっているのだ。

 大陸の東側に位置し、降雨量が極めて少なく砂地か岩礁地帯が延々と続く地域である。

 草木もあまり育たず生き物も少ない。この過酷な環境に適応した者のみが生存を許される。

 他種族に比べて病気になり難く、飢餓に強く、強靱(きょうじん)な肉体を持つ魔人族だからこそ生活が可能なのだろう。


 三日目の夕方、遠くに集落のようなものが見えてきた。

 まだ、距離があり数時間は掛かりそうである。

 暗くなってから初めての集落を訪問するのは色々と問題が出そうだったので、少し離れた位置で野宿することにした。

 志摩はやっと目的地の姿が見えたことで機嫌が直ったようだ。

 ホバーからタープを伸ばし、スクリーンを設置した。

 これで日差しや雨を防ぐことが出来、虫や小動物の侵入も防ぐことが出来る。

 テーブルと椅子を設置して簡易ダイニングの完成だ。

 今夜の夕飯担当である勇作がホバー内のキッチンに立っていた。

 この辺りは昼間の高気温に対して日が沈むと急激に気温が下がる。

 そこで保存している山菜や茸を入れた炊き込みご飯とビーフストロガノフ風スープを作った。

 「風」となっているのは使った肉が牛では無く七面鳥のようなダチョウのような種類の鶏肉を使用したためだ。

 (チキンストロガノフ・・と言うべきなのか?)

 保存している豚肉の燻製を使った香味野菜のカルパッチョも作った。

 「さあ、出来たぞ・・お待たせ、志摩!」

 「やっと出来たんか・・待ちくたびれて背中とお腹がくっついちゃうとこやで」

 文句を言いながらも勇作の料理を楽しみしていた志摩はウキウキと食卓に着いた。

 「それは悪かったな、少し手間の掛かる料理を作ってたからな・・では、頂きます」

 「ほんまや・・頂きます」

 志摩はスープを一匙(さじ)すくって口に入れる。

 「んーーー!・・美味い、流石(さすが)は勇作やな、コクが出とるよ・・この・・なんやったけ?ビーフ何とか風?」

 「口に合って良かったよ、久しぶりに作ったからな・・それとビーフストロガノフ風だよ」

 「ああ、それやそれ・・美味いな、今夜は肌寒いから暖まるし・・さて、こっちはどうなん?」

 次は炊き込みご飯に口にする。

 「あーーこれも良いわ・・薄味やけどダシが効いとる、これや、塩を効かせ過ぎずダシで勝負・・分かってるやんか、ほんま美味いわ」

 「はは・・お褒(ほ)めに預かり光栄だよ、志摩に喜んで欲しくて味付けは関西風にしたんだよ」

 志摩のためだとサラリと言う勇作の不意打ちの言葉に頬(ほほ)を染めながら「勇作、グッドジョブ!!」と努めて明るく返した。

 勇作も食べてみたが志摩の言うとおり味が濃すぎず、塩が効き過ぎず中々良い塩梅(あんばい)で味付けできたようだ。

 好評のうちに夕食を食べ終わった勇作達は二人で片付け、マッタリと珈琲を飲みながら一息付いていた。

 「勇作・・明日からはどんな予定なん?」

 「そうだな・・取り敢(あ)えずはあの集落に行ってみて協力を要請する・・上手く行けば他の集落にも行けるが・・」

 「頑固(がんこ)で人の言うことに耳を傾けん奴らやったら?」

 「・・実力行使か?」

 「ふーん・・勇作にしては過激な案やな」

 「ファーストコンタクトでだめなら、彼らのような人種の場合はこちらの力を認めさせるのが手っ取り早いと思うんだが・・」

 「なるほど、道理やな・・じゃあ、準備は万全にしとかな・・」

 そう言うと志摩はホバー内に持ち込んだ自身の装備を整備し出した。

 「志摩・・明日は出来る限り俺が前に出るから、もしもの時は後を頼む」

 「何や、今生の別れみたいな言い方しよって・・」

 「はは・・そう言う意味じゃ無くてな、俺が勝負に負けたらってことだよ」

 「ふふっ・・分かってるがな、任しとき!」

 程なく二人は早めに就寝した。


 翌朝、ホバーの警報音で飛び起きた。

 「な、なんや?・・」

 素早く飛び起きた勇作はホバーの警報を解除して、モニタを確認した。

 ホバーは複数の魔人族の男達に囲まれていた。

 男達は警戒しながら囲む輪を縮めてきた。

 「ふぅ・・魔人族の男達だな、俺が出よう」

 「で、でも危なくないんか?」

 「分からない・・志摩はホバーの中で待機していてくれ、俺に何かあったら後のことは頼む」

 そう言った勇作はハッチを開いて外に出た。

 ハッチはすぐに閉めたので中にいる志摩には気付かれていないはずだ。

 このハッチは勇作か志摩の生体コードが認識されなければ開けることは出来ない。

 勇作は外に出ると警戒する男達に向けて叫んだ。

 「俺は共和国からの依頼で来た勇作と言う・・そちらと争う意思は無い、依頼内容を伝えたいので族長の元へ案内して欲しい」

 「貴様の後ろにある見たことも無い得たいの知れない物は何だ?・・」

 「俺はこれに乗って共和国の宮殿から来た」

 「疑わしい、おいこいつを連行しろ・・族長のところに連れて行く」

 魔人族の男達は勇作を後ろ手に縛(しば)ると集落に向かって引き立てて行った。

 勇作は素直に従い、志摩に目配せをしていた。

 『俺にまかせてくれ』

 勇作が魔人族に連行されるのをただ見守るしか無かった。

 そうで無ければホバーの迎撃システムを作動させていたところだ。

 魔人族達の姿が見えなくなると志摩は機外に出た。

 「どうするつもりなんや?・・勇作・・」


 勇作は三十分程歩かされて集落に着いた。

 門番に声を掛けた魔人族達は勇作を連れて集落の中へと入った。

 集落の中央にある他より大きな家の前で止まると、「ここで待て!」と勇作の両脇を固める二名を除いて家の中に入って行った。

 「ここが族長の家なのか?」

 「黙れ!勝手に喋(しゃべ)るな」と勇作は魔人族の男に無理矢理膝を付かされ両腕を固められた。

 『全く問答無用かよ・・これじゃお白州(しらす)に引っ立てられた犯人みたいだな』

 暫(しばら)くして、中から一際身体の大きい魔人族が出て来た。

 勇作を一瞥(べつ)して問い質(ただ)した。

 「お前が共和国からの使者だとぬかす小僧か?」

 「・・」

 「何故答えない?」

 「・・」

 両脇の魔人族達が顔に青筋を立てて怒鳴った。

 「貴様!族長様が直々に問われているのに何故答えない!」

 「・・答えて良いのか?さっきは勝手に喋るなと言っていたが」

 「くっ・・貴様!舐めたことをぬかしおって、痛い目に遭(あ)わせてやろう」

 両脇の魔人族の男達が勇作を叩くために剣の鞘(さや)を振り上げた。

 『流石に問答無用で殴(なぐ)られてやる謂(い)われは無いな・・』

 勇作が緊急脱出装置に手を掛けた時。

 「馬鹿者、止めよ!・・多分、この男にはお前達では適(かな)わぬぞ」

 「そんな馬鹿な!このような細身で筋肉も無いような奴に我らが負けるはずがありませぬ!」

 お前達はこの男より弱いと言われ頭に血が上っていた。

 「・・分からんか、では力比べをしてみるが良い」

 「望むところです・・おい貴様、こっちに来い」

 集落の中程にある広場に連れて行かれた。

 何事かと勇作達の周りには数多くの魔人族が輪のようになって集まってきた。

 「貴様には俺達と手合わせしてもらう・・武器はこれを使え!」

 後ろ手に縛られた縄を解かれ縛痕(しばりあと)を擦(さす)りながら、投げ渡された物を受け取った。刃引きされた両手剣だった。

 「最初は俺だ!」

 先程から喰って掛かって来ていた魔人族の男達三人が両手剣を持って進み出た。

 勇作は渡された剣を見て「少し待ってくれ・・」と言うと、「ははっ・・臆(おく)したか!」とせせら笑った。

 男のことは無視して族長に話し掛けた。

 「族長殿・・この手合わせは必要なのか?」

 「魔人族では力こそ全てだ・・弱き者の言うことに耳を傾ける者はおらぬ」

 「・・そうか・・分かった、武器は自前の物を使っても良いか?」

 「致死率の高い物で無ければ構わぬ」

 「了解した」

 勇作は渡された剣を男に投げ返すと、両足のホルスターから収束式拳銃を抜いた。

 「俺はこれで戦う・・」

 拳銃の威力調整を最低にセットして、広場中央に立った。

 「はん、そんな玩具(おもちゃ)で何が出来る・・行くぞ!」

 進み出た一人目の男は猛然と剣を振りかぶって突っ込んできた。

 言うだけあってかなりの速度だ。

 勇作は振り下ろされる剣をかい潜(くぐ)って転がった。

 「どんどん行くぞ!」

 次々と繰り出される剣を辛(かろ)うじて避ける勇作。

 元々、接近戦闘の技量があるわけでは無い勇作だ。

 漫画のように剣を拳銃の銃身で弾(はじ)く・・何てことが出来る筈(はず)も無い。

 体中に切傷を追いながらも致命的な攻撃は避けれていた。

 一度離れて向き合った男は「何だ!逃げてばかりでどうする・・向かってこんか!」と叫んだ。

 勇作は既に肩で息をしていた。男の方は息が上がった様子は無い。

 ゆっくりと立ち上がった勇作は男と向き合った。

 「これで終わりにする!・・」

 男はそう叫ぶと剣を振りかぶって突進してきた。

 勇作は両手の拳銃をゆっくりと持ち上げて、男に照準を合わせ・・引き金を絞った。

 「パシュッ・・」

 軽快な発射音が響くと、かなり低出力に抑えた収束砲が拳銃から発射された。

 二発の収束砲は振りかぶった魔人族の胸部と腹部にヒットした。

 「ぐえっ!」

 蛙(かえる)の潰(つぶ)れるような呻(うめ)き声を残して、男は前のめりに倒れたまま動かなくなった。

 「くっ・・てめえ!」

 残っていた二人の男達は一斉に剣を振り上げて飛び掛かった。

 左右から襲い掛かる男達に勇作は両腕を水平に開いて引き金を絞った。

 狙い違わず、胸に収束砲を受けた男達は仰(の)け反(ぞ)るようにして倒れ、動かなくなった。

 しーんと静まり返る群衆に構わず勇作は声を上げた。

 「魔人族では力が全てだと聞いた!・・これで俺の話を聞いてくれる気になったか?」

 これに対して群衆より怒号が飛ぶ。

 「何が力を見せるだ・・変な武器使いやがって!」

 「剣で語れぬ軟弱者だ」「飛び道具とは卑怯(ひきょう)者め!」

 群衆は見たことも無い武器によって三人の仲間が倒されたことに苛立っていた。

 「一斉に掛かれば飛び道具など恐れるに足らず・・みんな、やっちまえ!」

 「待つのだ!お前達!」

 族長が声を上げたが、ボルテージの上がった群衆を止めることは出来なかった。



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