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「孤島立国」異世界で自分達の国を作ろう   作者: 八神夕輝
第二章 システア共和国
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【三九】エルフ族

高大一貫教育の大学三年生になり、実習のために船で離れ小島へ向かっていた主人公は突然の嵐に遭遇してしまう。

 気が付くと大学生男子一名、女子七名と女教師二名だけが異世界の孤島に漂着していた。

 ここから孤島でのサバイバル生活が始まる。彼、彼女らは専門分野別に集められたエリート達だった。

 生活する上で不可欠な拠点造り、食料の調達から始めることになる。

 かつての世界の技術力を駆使した武器や輸送手段を筆頭に様々な開発も行うことになった。

 最大の問題は武器、輸送機に使用されていた原料がこの世界には存在し無いこと。

 新たなエネルギーを得るために悪戦苦闘するメンバー達。

 発見された常識を覆す新エネルギーは後の大発明へとつながって行くことになる。

 この世界を統治する王国や巨大生物、未知の病などと格闘する日々が続く。

 次々と降り掛かる問題を持ち前の技術力と結束力で乗り越えて行く。

 自分達の国を創り上げるため奔走する冒険と青春の物語である。

 時間を遡(さかのぼ)り、エルフ族の里へと向かい出発した花梨(かりん)と初音(はつね)は・・。

 「確か、エルフ族の集落は森林地帯の中にあるんですわよね?」

 「はい、そのようですね・・このまま東の街道を二日程進むと大きな森林地帯に入る予定ですね」

 「なるほど・・」

 順調に進めば街道沿いで野営を一泊挟んで、二日目の夕方には集落に辿り着ける予定だ。

 二人が乗っているミニホバーは十人乗りのスタンダード型ホバーを二人乗りにダウンサイズしたものだ。

 巡行速度はかつての世界の原動機付き自転車より遥かに速いので、この世界で一般的な馬車よりも短時間で移動出来る。

 小さい機体ながらもベッド、トイレ、シャワールームが完備されていた。

 動く小さなカプセルホテルといったところだ。

 但し、調理器具などは完備されているものの、流石に食堂スペースまでは設置出来なかったのでタープを掛けた臨時のテーブルと椅子を機外に設置することになる。

 花梨と初音は交代でミニホバーを操縦することで、ほとんど休み無く街道を進んでいた。

 ミニホバーの前照灯が映し出す街道が闇に包まれ掛けた頃、「今日はこの辺で休みましょう」と花梨は停泊を決めた。

 街道から少し外れた見通しの良い平原にミニホバーを停泊させた。

 テキパキと夕食の準備とする二人は話に花が咲いていた。

 「初音さんは、心に決めた方とかいましたの?」

 「うーん、この人っていうのはいなかったわね・・な、何よ!こう見えて私だってそういう存在が欲しかったんだからね」

 「ふふっ・・同じ女性ですもの、分かりますわ・・私もそんな男性には巡り会えませんでしたから・・私にはそういう男性は現れないのかなって思っていましたわ、でも・・」

 「今は勇作くんがいてくれるものね」

 「はい、私にとって勇作は掛け替えの無い存在ですわ・・こんなに熱く思えるなんてかつては想像も出来ませんでした」

 「うん・・そうね、私も同じかも」

 「ふふ・・さあ、夕食が冷めてしまいますわ・・頂きます」

 「そうね・・美味しそう、貴女は料理も上手なのね、ちょっと凹むわ・・頂きます」

 時に姦(かしま)しく、話に花を咲かせながらの夕食は楽しかった。

 食事の後片付けを済ませて機内に入るとハーブティーを飲んで就寝することになった。

 夜半過ぎ、二人はけたたましいアラーム音に叩き起こされた。

 「あん、何ですの?こんな時間に」「な、何が起きてるの?」

 急いで操縦席に移動すると自分達が数十匹に及ぶ狼の群れに囲まれていることが分かった。

 暗闇の中で狼達の目が赤く光っている。

 「あ、あんなに一杯・・花梨さん、どうしよう?」

 狼達の赤く光る複数の目を見た初音は怯(おび)えた声を上げた。

 「そんなに慌てることはありませんわ、私達にはこのミニホバーがあるではありませんか」

 「そうなの?」

 「はい、この機体は私も開発に携わった傑作機なんですのよ?・・狼ごときに遅れは取りませんわ、見ていて下さいですわ!」

 花梨は操縦席に座ると警戒にセットされていた待機モードを迎撃に切り替えた。

 自動的にエンジンが始動し、ホバー機体上部のハッチがせり上がった。

 『警告します、直ちに我々の周囲より立ち去りなさい・・警告を無視した場合、迎撃対象と見なします』を録音された声が流れた。

 声を聴く限り、愛理が吹き込んだものであろうと思われる。

 突然のエンジン音や音声に狼達はたじろぐも唸り声を上げて睨(にら)み付けてきた。

 『警告を無視したため、迎撃対象と見なします』

 最後通告のアナウンスが終わると、上部ハッチからエネルギー収束砲が一門、左右から収束式ガトリンングガンが一基ずつせり出した。

 収束式ガトリンングガンは一分間に三千発発射出来る収束銃で、勇作が所持しているものと同型機だ。

 自動照準機構が狙いを定め、軽快な発射音が連続して響いた。

 『迎撃対象の排除を確認・・警戒モードに移行します』

 今回は収束砲を使用するまでも無かった。

 一分と掛からない迎撃時間で狼達は一匹残らず射殺された。

 「ちょっと可哀想だったかしら?」

 「もしホバーが無ければ逆に殺されていたのは私達かも知れないですわ・・」

 「でも・・」

 「私達は過酷な生存競争の中で生きているのです、シーサーペントも狼も同じこと・・大切な私の仲間の命を狙って来る者には容赦しませんわ!」

 苛烈とも取れる花梨の物言いに、この世界で生きて行く彼女の覚悟を見た。


 翌朝、新たにホバーに搭載したマニュピレータを使って掘った穴に狼達を埋葬した後、エルフ族の里へ向けて出発した。

 「ふふっ・・花梨さんは優しいのね、急遽(きゅうきょ)、針葉樹の葉を加工して線香を作って・・狼達のお墓にあげて・・」

 「い、いえ、死んだ者に罪はありませんし、たまたまお線香を作りたくなっただけですわ・・そうです、作りたくなったのですわ!」

 「はいはい、そう言うことにしておきましょうね・・」「・・」

 二日目も順調に進んだ花梨達は予定通り、夕方になる前に森林地帯へと到着した。

 ミニホバーでの移動はここまでだ。林の中までは入っていけない。

 案内人と待ち合わせのポイント・・と言っても大きな木があるだけなのだが・・で待っていると、突然、周りの木が揺れたと思った直後、目の前に細身の男が立っていた。

 「そなたらが連絡のあった異世界の者達か?」

 その男から感情の起伏の無い、淡々とした口調で問われた。

 「人にものを尋(たず)ねるときは、まず自分から名乗るべきでは無いかしら?」

 少し呆気に取られた顔をした後、「これは失礼した・・私は異世界から来た方達を我らの里に案内するために参ったスコイレオと言う、そなたらが異世界から来た者方達で間違い無いか?」と言い直した。

 「お初にお目に掛かりますわ・・私達が共和国代表から依頼されて来た花梨を申しますわ、そしてこちらが・・」

 「初音と申します、宜しくお願いします」

 「ご丁寧なご挨拶、痛み入る・・では陽も暮れて来た故、我らが里に急ぎご案内する」

 スコイレオは先頭に立って森の中へと進んで行った。

 迷路のような森の中を歩くこと三十分程で開けた場所に出た。

 そこにはいくつもの家が樹上にある緑豊かな集落だった。

 里の奥にはエルフ族の信仰対象である大樹が鎮座していた。

 (この大樹は東京タワーよりも高いのでは?・・樹齢何年経っているのかしら)

 案内人のスコイレオは一際大きな樹上にある大きな家を指差した。

 「ここが我らエルフ族の代表がおられる家になる・・では、ご案内する」

 そう言って大きな家に続く階段を上がって行った。

 大きな扉の前に立ち「異世界から来られた方達を案内して参りました」と声を掛けた。

 「・・入られよ」

 スコイレオが先立って部屋に入り、花梨達もそれに続いた。

 部屋の奥には大きなテーブルに座る細身の男女が「遠路よく参られた、疲れたであろう・・まずは座られよ」とソファーを勧められた。

 「私がエルフ族代表、マカリオスと申す・・女性二人では遠路大変であったであろう」と代表のマカリオスは花梨達を労(ねぎら)った。

 「私は副代表を務めるアイオーンを申します・・」

 「後追いになったが、私が政務官を務めるスコイレオだ」

 淡々と話すエルフの代表達は礼儀正しく名乗った。

 「共和国プリメノス代表からの依頼で参りました花梨と申します・・アサルド王国南端にあるエルピス島から来ました」

 「同じく、初音と申します」

 花梨達は共和国代表からの依頼書をマカリオスに見せた。(実際にはコピーなのだが、この世界には無い技術なので本物として通用?する)

 また、獣人族を中心とした感染状況の説明、他種族への感染拡大が懸念されること等の現状分析と防止策の検討・・と依頼された内容を伝えた。

 「なるほど・・獣人族を中心に疫病の感染が著しいと・・確かに由々しき問題であるな」

 「政務官殿、我らがエルフ族への感染状況は?」

 「はっ、今のところ我らが里でそのような報告は受けておりませぬ」

 「そうですか・・」アイオーンはほっと胸を撫で下ろした。

 「花梨殿、現在の感染状況だけを伝えにここまで来た訳ではあるまい?」

 花梨は真剣な眼差しをマカリオスに向けて、懸念される事態について説明を行った。

 「・・獣人族にのみ発症していた疫病ですが、最新の情報では他の種族の方達にも感染が広がっているようですわ」

 「「「・・」」」

 「私達には疫病治療に関するエキスパートがおりますの・・仲間達が各種族の方達の元へ手分けをして向かっています・・これは実際の感染状況の把握と共に感染者や感染を媒介すると予想される者から調査のための検体を集めるためですわ」

 「検体?」

 「はい、聞き馴染(なじ)みの無いことだと思いますが、疫病を防ぐためのワクチン・・薬を作るために必要なものなのですわ」

 「疫病に効く薬が作れると申すか?」

 「正確には作れる可能性があると言う段階ですわ・・その緊急調査のために私達がこの里に派遣されたとお考え下さい」

 「なるほど委細承知した・・スコイレオよ、彼女達にエルフ族として万全の協力を行うのだ、良いな!」

 「はっ、承知しました」

 代表達との謁見(えっけん)は終了し、今夜は時間も遅いので夕食をご馳走になった。

 代表主催の夕食会には副代表のアイオーン、政務官であるスコイレオ以外にも要職に就いているエルフ達が集った。

 夕食会がお開きになった後、客人用の樹上家に泊まらせてもらえることになった。

 エルフ族の里に滞在する間、ここを拠点に使用して良いとのことだ。

 正直なところ、毎日、片道三十分以上も掛けてミニホバーまで行き来するのは避けたかった。

 「理性的な捉(とら)え方をしてくれる種族で良かったわね?」

 「はい、本当はもう少し疑われるかと思いましたが・・とにかく滑り出しは上々ですわ」

 花梨達は明日からの調査に備えて早めに眠りに就いた。


 翌朝、迎えに来たスコイレオと共に代表宅に行き、朝食を摂りながら今日の予定について話し合った。

 五つある代表的な集落を順番に回って疫病の感染があるか、媒介していると思われる小動物や牛、馬等の状態についても確認する。

 スコイレオ自ら集落を回る案内人の役目を買って出てくれていた。

 一つ目、二つ目の集落では特に異常は認められず、検体の採取も必要無かった。


 本日最後の訪問先である三つ目の集落は、エルフ族の里がある森の中でも獣人族の多く住む領域に近い位置にある。

 この集落の門を潜ろうとした時だった。

 集落の中から怒号が飛び交っていた。

 「なっ・・何が起きている?、兵士達よ!急ぎ確認して参れ!」

 「「「はっ!」」」

 護衛の兵士三人が駆け足で怒号のする場所へ向かった。

 スコイレオは馬車を止めるよう御者に指示し、馬車を降りた。

 花梨達も続いて馬車を降りて周りの様子を窺(うかが)った。

 「キャッ!」

 初音が悲鳴を上げて飛び退った。

 彼女の足下を一匹のネズミが走り抜け、森へと消えて行った。

 周りを見るとかなりの数のネズミが森へと逃げている。

 集落の住人らしきエルフ達が攻撃をしてくるネズミに対して剣を振り回していた。

 どのエルフ達も良く見ると腕や足などから出血している。

 「初音さん、戦闘準備ですわ!」「り、了解!」

 花梨達はバトルスーツを身に付けているので、ネズミが囓(かじ)った程度では全くの無傷でいられる。

 花梨の主要装備は遠距離攻撃用のエネルギー収束砲なのだが、ミニホバーに置いてきている。

 その代わりに両手には拳銃型収束銃が握られていた。

 初音は未だ未だ戦闘には不慣れなため、同じ拳銃型収束銃を一丁両手に握り締めている。

 「向かって来るネズミを狙って、外れても良いので撃ち続けて下さい!」

 「わ、分かったわ!」

 そう言うと花梨は持ち前の運動神経の良さに弓道有段者としての目の良さが加わって迫って来るネズミ達を掃討して行った。

 自分達の亡骸が積み上がるとネズミ達は最短距離で森へと逃げ込んで行った。

 何とかネズミ達の襲撃をやり過ごせた花梨達は、休む間もなく傷付いたエルフ達の手当を行った。

 主として消毒と化膿防止薬を塗布する程度であったが。

 粗方(あらかた)治療が完了したところで、サンプルとしてネズミの死体と案の定と言おうか寄生しているノミについても検体として捕獲した。

 ネズミの死骸とその周辺について油を撒(ま)いて焼却処分を行った。

 エルフ達にはネズミ以外にノミに対しても噛(か)まれないよう注意した。

 その夜は交代で見張りを立て、篝火(かがりび)を多く焚(た)いて一夜を明かした。


 翌朝、花梨達は四つ目、五つ目の集落を訪ねたがこちらでは特に変わったことも無く、三つ目の集落で起きたことに対して暫定的な防止策を話し合ってエルフの里を後にした。


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