【三一】システアメイド長の秘密
【あらすじ】
高大一貫教育の大学三年生になり、実習のために船で離れ小島へ向かっていた主人公は突然の嵐に遭遇してしまう。
気が付くと大学生男子一名、女子七名と女教師二名だけが異世界の孤島に漂着していた。
ここから孤島でのサバイバル生活が始まる。彼、彼女らは専門分野別に集められたエリート達だった。
生活する上で不可欠な拠点造り、食料の調達から始めることになる。
かつての世界の技術力を駆使した武器や輸送手段を筆頭に様々な開発も行うことになった。
最大の問題は武器、輸送機に使用されていた原料がこの世界には存在し無いこと。
新たなエネルギーを得るために悪戦苦闘するメンバー達。
発見された常識を覆す新エネルギーは後の大発明へとつながって行くことになる。
この世界を統治する王国や巨大生物、未知の病などと格闘する日々が続く。
次々と降り掛かる問題を持ち前の技術力と結束力で乗り越えて行く。
自分達の国を創り上げるため奔走する冒険と青春の物語である。
システア共和国のルーツは数百年前に遡る。
現在の共和国に住む他種族も元々は人族と分け隔てなく暮らしていた。
各種族から代表者を出して話し合う合議制を採用していた。
ある時、人族を除くほとんどの種族に感染、蔓延する疫病が大流行した。
隣人である獣人族達が正体不明の病で次々と亡くなって行く状況に人族は恐れを抱いた。
自分達にもうつるのでは無いかと。
噂が噂を呼び、人族以外の他種族が迫害される事態となった。
事態を重く見た各種族の代表達は話し合いを重ねたものの人族の強硬な姿勢に結論は見出せなかった。
各種族の中で唯一貴族社会を形成していた人族は他種族と距離を取ることを決定する。
分裂した人族と他種族は国を分け、人族の国をアサルド王国、他種族の国をシステア共和国として互いに干渉しないよう密約を交わした。
世代を経ていくと密約の意義も薄れて行き、争いの絶えない世となってしまった。
世代交代が進む毎に対立は深まり、大きな戦争も発生した。
そのような最中にシステア共和国の代表が人族の女性を妃として迎え入れた。
システア共和国内のみならずアサルド王国内でも非難の的となった。
しかし、愛し合う二人は外野の雑音を気にする様子も無く仲睦まじく幸せな時を過ごした。
二人の間には愛の結晶として一人の娘を授かった。
問題だったのはこの娘が人族だったことだ。
二人は娘の未来を憂い共和国と同じ「システア」と名付けた。
人族であってもシステアで生まれ育ったのだ。
共和国の将来に娘の未来を重ねたのかも知れない。
十五歳のなると成人と見なされるこの世界で、少女が七歳になった時に悲劇が起こる。
父親である共和国代表が流行り病で逝去してしまったのだ。
更に悲劇は続く。母親である代表の妃も後を追うように病のため逝去する。
残された少女は小さな胸の中を絶望で埋め尽くした。
そんな少女に更なる苦難が降り掛かる。
システア共和国では代表は合議制で選出される。
前代表逝去の後、各種族代表の合議で選出されたのは獣人族の代表だった。
しかも新しい妃も獣人族で特に人族を毛嫌いしていることで有名だった。
居場所を亡くした少女に苛烈な行為を繰り返す妃と側近達。
城を追われ、雇人の宿舎で寝泊まりすることになった。
唯一、救いだったのは雇人である庭師の夫婦が優しく接してくれたことだろう。
夫が獣人族、妻がドワーフ族という異種族の夫婦だったから人族である少女にも寛容だったのかもしれない。
十歳になった少女は自然と庭師夫婦の仕事を手伝うようになっていた。
いつものように任された庭の花壇を剪定していると、賑やかな声が聞こえてきた。豪奢な服を纏った人族の男性と代表夫妻が談笑しながら庭を散策し出した。
急なことにこの場から立ち去ろうとしたが間に合わなかった。
平伏して自分の前を通り過ぎるのを待っていると、人族の男性は立ち止まり声を掛けてきた。
「そなたは人族じゃな・・名はなんと言う?」
一瞬、逡巡した少女は「・・システアと申します」と平伏したまま答えた。
「ほう、システアと申すか・・御国と同じ名前であるな」
会話はそれで終わり、苦々しい表情の代表夫妻と去って行った。
翌日、少女は何年振りかで宮殿内に呼び出された。
少女の姿は見すぼらしい平民の服を着ていたので、宮殿の獣人族の衛兵に何回も詰問され、宮殿内に入ってもエルフ族のメイド達に詰め寄られほとほと疲れてしまっていた。
「・・私に何の用があるんだろう?」
自身に問いかけても答えは出ない。重い足取りで呼び出された部屋の前に立った。
ノックをすると中から返事があって、エルフ族のメイドが応対して部屋の中に入るよう促された。
そこには今朝、庭園で会った人族の男性がソファーに座っていた。
手招きされるまま目の前まで移動して平伏しようと膝を折ろうとした。
「いやいや、平伏なぞせんで良い・・そこのソファーに座りなさい」
「えっ?・・でも」
少女は何年もの間、延々と続けられた迫害や嫌がらせのため元王女の面影は無く、身をやつしていた。
再三促され、少女が恐る恐るソファーに座るのを待って男は話始めた。
「突然、呼び出してすまなんだのう、びっくりしたであろう・・話と言うのは、そなたの身の振りようについてじゃ」
「・・?」
「おお、すまん、難しく言いすぎたか・・単直に言えば、我が王国に来ないかと誘おうと思っておるのだ、どうじゃ?」
「陛下、少女に対して難しい言葉を使い過ぎです、それでは伝わりません」
側に控えていた男が代わりに説明を始めた。
「少女よ、すみません・・私の方からご説明致します・・始めに、この方はアサルド王国のイエティス国王様です、先程、庭園で貴女の姿を見て状況説明を代表に求めたのです・・貴女は元王女のシステア様ですね?」
突然の話の展開に付いて行けていない少女は「はい、私は・・システアと申します」とだけ答えた。
「やはりそうでしたか、陛下は今の貴女の姿を見て不憫に思い我が国へ来ないかとお誘いになっているのです・・王国に来て成人までは学園に通って頂くことになります、その後、王城勤めをされてはいかがでしょうか?・・貴女でしたら貴族の作法にも明るくゆくゆくはメイド長をお願い出来ればと思っています」
「・・」
「すみません、突然このようなことを言われても困ってしまいますよね・・でも答えを頂くまでにあまり時間がありません、我々がここに滞在出来るのは明日までです・・年端も行かぬ貴女に突然判断を迫るようで心苦しいのですが・・」
「・・」
「ここは貴女のご両親のいた地ですから、離れたくないと仰るのでしたら無理にとは申しません・・大きな声では言えませんが貴女の置かれた現状は目に余ります、貴女さえ良ければ人族の国である王国で暮らしませんか?・・貴女の身分は陛下が保証すると仰って頂いています、どうでしょう?」
少女・・システアは暫し目を瞑り今までのことを思い出していた。
優しかった父と母、突然いなくなった両親に代わった代表夫妻からの数々の仕打・・仕方無いことなのだと諦めていた未来、何も得ることの無い毎日・・知らず知らずの内にシステアの瞳からは涙が零れ落ちていた。
男達はシステアが答えを出すのをただ、じっと待っていた。
濡れた瞳を男達に向けたシステアは毅然とした態度で話始めた。
「私にはこの国に想いを残すものはありません・・両親も今は亡く、親族もいない天涯孤独の身です・・このような私でも貴国のお役に立てるのでしたら連れて行って下さい」
「うむ、そなたさえ決心できるのであれば否やは無い・・苦労を重ねて来たことじゃろう、だがそれも明日までじゃ・・我らと共に王国に行こうかの?」
「はい!・・宜しくお願い致します」
システアは深々と頭を上げた。男達はホッと胸を撫で下ろした。
両親のいた共和国に未練があれば連れて行くことは出来ない。
王国での身分、生活を保証すると言ってもやはり本人が納得した形で連れて行きたかったのだ。
その後の動きは早かった。イエティスは共和国代表にその日の内に話を通した。
システアの処遇に困っていた共和国としても渡りに船だった。
とんとん拍子に話は進み、その日の夕方、宮殿に再び呼ばれたシステアは何年振りかの浴槽に浸かり、身体を磨き上げられ髪を結いドレスを纏った。
イエティス達と豪華な夕食を済ませ、通された客間のベッドに腰掛けていた。
「これは夢なのかしら・・」
記憶が定かでは無いものの遥か昔はこのような、煌びやかなベッドで寝ていたような気がする。
中々、寝付けないシステアだったが、その日の疲れが出たのかいつの間にか寝入っていたのだった。
システアにとって忘れられない一日になったことは確かだ。
翌日、イエティスと同じ馬車に乗り、宮殿を後にするシステアがいた。
遠ざかる宮殿を馬車の窓から見詰めるその瞳に涙は無かった。
時間が無くて「王国に行く」とだけしか世話になった庭師夫妻には伝えられなかった。
その後の生活がどうなるのか分からず、元王女であることも伏せた状態ではそれ以上の説明が出来なかったのである。
アサルド王国の港町ハミルブルックに到着し、送ってくれたラフェスタ王国騎士団長と別れた。
港には八城勇作達の愛機である潜水艦「オケアノス」と大型飛行艇「エルピーダ」が停泊していた。
オケアノスは宮崎心愛が開発した、かつての世界の最新鋭艦そ〇りゅうを遥かに上回る性能を持つ潜水艦だ。
一方、エルピーダは久保花梨が開発した、これもかつての世界のオ〇プレイを遥かに凌ぐ大型飛行船であり飛行艇でもある。
艦の構造上、エルピーダの方がスペース的に余裕があるためメンバー全員がエルピーダの指令室兼作戦会議室に集まっていた。
「皆、疲れているところ申し訳無い・・王城からの依頼について話し合いたいと思う」と勇作が話し始めた。
勇作は伊藤愛理と共に経営戦略学部、通称「統括部」として行動、作戦立案等を担っている。
勇作は黒髪を短くまとめた顔はまあまあ、中背の極めて普通の青年だ。
ただ、糞真面目、堅物、熱血漢、女心知らず、草食、ヘタレ等・・言われたい放題だったが。
伊藤愛理は生まれ月の関係で歳は違うが同学年で黒髪をボブカットにし、美乳を持つ妹気質で責任感の強いツンデレ系美少女だ。
「では、会議を始めるに当たってシステア共和国で発生している疫病について分かっている範囲なりますが説明します」
愛理から共和国は獣人族、エルフ族、妖精族、ドワーフ族、魔人族の多民族国家であること、その国で原因不明の疫病が発生していること、特有の症状が確認されていてかなりの死者が出ていること、アサルド王国からこの疫病について意見を求められていること等が説明された。
「・・原因不明の疫病か、巨大海洋生物の討伐より遥かに難儀なことやな」と栗毛をセミロングに下ろした巨乳持ちでさばさば気質の政経歴文外語学部、通称「経外部」の水谷志摩は美少女であるその顔を顰めた。
「共和国は今、大変なんだね・・助けに行こうよー!」と今日も元気で常に前向きな栗毛のセミロングをツインテールにした浅井陽鞠は農林水産畜産学部、通称「農畜部」のロリ体形美少女で瞳をキラキラさせながらそう言った。
「あら、病気のことなら早苗がいるじゃない?」と黒髪ロングの髪をそのまま下した爆乳という凶器を持つおっとり癒し系の芸術家政衛生学部、通称「芸家部」の鎌田希美は歳より大人びて見える美女顔で指摘する。
「・・正解、疫病怖い・・」と言葉少なく黒髪ショートに微乳という危険な香りのする理屈家で気難しいとことのある情報技術土木建築学部、通称「技建部」の宮崎心愛が美少女の無表情顔で呟く。
「そうですわ、早苗がいるじゃないですか・・見解はどうなんですの?」と金髪ロングに微乳という西洋人形のような見た目に学者肌、理論家でかつての世界では正真正銘のお嬢様(とある大企業の令嬢だった)である航空宇宙兵器学部、通称「防衛部」の久保花梨が西洋美少女顔で聞く。
不安そうに皆の話をじっと聞いている大人な女性二人は栗毛セミロング、巨乳おっとり系の家政大学院講師、大島花江と黒髪ロング、美乳インテリ系の法科大学院講師、西尾初音で異世界に飛ばされた女教師達だ。
皆の視線が集中する中、おもむろに立ち上がった仲野早苗はモニタを出して説明を始めた。




