1ー1 入学、でもサッカー部がない!!
新作です。
よろしくお願いします。
天之河スバルという少年は、小さい頃からボールを蹴るのが好きだった。
ジャーマン・シェパードという獣人の種族柄もあるかもしれない。ボールを追い掛けて、蹴る。追い掛けて、蹴る。それが楽しくて楽しくて、仕方なかった。
サッカーのクラブに入ると、ボールを蹴る以外にも技がある事を知った。
ヒールリフト、エラシコ、Vターン。そういった技法を知り、身に付けるまで何度も反復したし、成功した時の達成感と満足感は凄まじかった。だからこそ、更にのめり込んだ。
「なあなあ、お前さっきのボール捌き、凄かったな!オレにも教えてくれよ!」
ある日の事だった。新しくクラブに入ってきたハスキーの獣人が、ベロンと舌を出しながら笑顔で声を掛けてきた。
雪原ハヤテといったその少年は、スバルと瞬く間に打ち解け、気付けば共にボールを蹴り合う仲となった。
ボールを追い、蹴り、奪い奪われる。
二人は最高のパートナーとなった。阿吽の呼吸。何も言わずとも通じ合うほどに。
二人は小学校こそ違ったが、中学は同じだった。住んでいる地域が近いが故だった。
「なあなあスバル!フットボールチャンピオンシップって知ってるか?」
ハヤテが興奮冷めやらぬ様子で、いつものように万遍の笑みと共に舌を出し、尻尾を左右に揺らしながら問い掛ける。
「知ってるに決まってるだろ。いきなりどうしたんだ?」
「だよな!なあなあスバル、オレ、お前と一緒にフットボールチャンピオンシップに出たいって思ってるんだ!だからさ、一緒の高校行こうぜ!オレ達なら、てっぺんだって夢じゃねぇよ、間違いなく!」
その言葉を聞いたスバルは、驚いたように目を開いた。勿論、フットボールチャンピオンシップに出たい。スバルもまた、そう思っていた。
暫く逡巡するスバルは、覚悟を決めたようにニッ、と口角を上げる。
「ああ。出ようぜ、フットボールチャンピオンシップ。オレ達で、少年サッカーのてっぺんを獲るんだ!」
「おう!じゃあどこ行く!?やっぱサッカー強いとことか!?それとも……」
二人はどこに進学するか迷った。サッカーが強い所はふたりが住む場所よりも遠い所が多かった。近くても、県を跨いでしまう距離。
そこでスバルが目を付けたのが、『私立獣崎高等学校』。私立高校だが、二人の自宅からもほど近い。何よりこの高校は、文武両道を掲げている。ならばサッカー部も最高峰に程近いのでは。スバルとハヤテはそう考えたのだ。
勉学に自信のないハヤテはスバルと共に勉学に励んで受験に臨み────見事二人は獣崎高校に入学を果たした。
……しかし。二人は致命的な失敗を犯す。
それは────獣崎高校に存在する部活動一覧を見なかった事か。
◆◆◆◇◇◇
「……クッソ……サッカー部が無いとか、なんの冗談だよ……」
「だぁよぉなぁ……」
スバルとハヤテは、机の上に突っ伏して項垂れた。部活動一覧の閲覧し損ねたという盛大な失敗。しかしながら、今更入学を取り消す訳にもいかない。
「……なあスバルぅ。どうする?サッカー……」
ハヤテの言葉は不安気だった。いつもの舌出しの笑みすら見せない。双方の失敗だが、獣崎にサッカー部があるのかないのか。その確認を怠ったが故に、果たせる筈の約束を果たせずに終わるかもしれない。
「……何言ってんだよ、ハヤテ。決まってんだろ……創るんだよ、サッカー部を。オレ達で……!」
その台詞を聞いたハヤテは驚いたように金と青のオッドアイを見開き、机からバッと起き上がった。
「ッ……そうか、そうだよな!無いなら!」
「ああ、創るんだ!オレ達でサッカー部を立ち上げるんだ!そうと決まったらやるぞ、ハヤテ!」
「おぉ!!」
拳を突き上げたスバルに合わせ、ハヤテもまた拳を突き上げる。周囲の怪訝そうな視線など気に留めず。
────これは、サッカー部がないひとつの高校にサッカー部を興し……全国を制するために走る、獣人の少年達の物語。
【プロフィール】
『天之河スバル』
種族:犬獣人(犬種:ジャーマン・シェパード)
性別:男
年齢:16歳
身長:172cm
ポジション:MF
性格:穏やかで優しいが、生粋のサッカー馬鹿。
概要:本作の主人公。サッカーの事になると後先考えず突っ込む。
『雪原ハヤテ』
種族:犬獣人(犬種:ハスキー)
性別:男
年齢:16歳
身長:176cm
ポジション:FW
性格:人懐っこく、年上に可愛がられるタイプ。生粋のサッカー馬鹿
概要:スバルの幼馴染。とにかくボールを蹴りながら走るのが大好き。




