第2話 フェニックスの目覚め
遂に目覚めます。
今日もありがたい事に繁盛している! そして冒険者達の憩いの場にもなりつつある。
やはり冒険なんかには未練はあるが、最新の情報も手に入るから飽きはしない。
「はい! ビールとぼんじり、もも、牛ステーキのレアです!」
「悪いな! ……ぷはぁ〜! しっかしここの飯は美味いなァ、傷が癒えるなんて噂信じていなかったがマジだなんてな!」
「昔それで冒険者のパーティで回復役もやっていましたからね!」
まあ自分でも何で回復効果付与できているのかよくわからないけどね。
「へぇ! そんで、そこの働いているねーちゃんも同じパーティで?」
「ですね、昔は唯一の気を許せる仲で今は恋人です」
ちょっと恥ずかしいが誤魔化す理由もない。
「いいなァ! そう言えばこのところ魔王軍の手が緩んだんだ、だから気ィ〜つけろよ」
「緩んだのにですか?」
「そう言う時に奴らは何かデッケェモン準備してんだよ! ほい、お代置いて行くから俺らは帰るぜ! ごちそうさん!」
「ありがとうございましたー!」
そうか……そう言う視点もあるな、しかし俺にできる事と言ったら大体は裏方だしなぁ、父や母の様に常に前線で活躍できたら……
なんて未練は募るばかり。心ではルミナとの平穏な暮らしが永遠に続く事を祈るが、冒険や打倒魔王軍に励みたい欲求が抑えられない。
「……ょっと……ちょっと!! アンタ大丈夫? もう閉める時間よ! チャチャっとラストオーダー聞いて回ったからささっと早く焼いてよね」
彼女にメモを渡された。
「ん、あっ、ああ! すまない、えーっと……」
そうして俺は全て諸々、作り終え最後の客を見送ってひと段落ついた。
「はぁ……今日もおつかれ」
「ふぅ、そうね。お疲れ、1週間に2日の休みでも疲れるわね〜」
俺たちは椅子に座り寛ぐ。
ルミナと俺は赤ワインをグラスではなく大ジョッキに入れて乾杯して飲む。
「「今に乾杯!」」
「ふぅ〜、こうやってグラスで気取って飲まずにガブ飲みした方が美味しいわよね〜」
「安物は特にね」
そう言いながら彼女は消費期限が今日辺りの余り物達を食べる。
俺も日持ちしない内臓系の肉を鉄板の上でささっと焼き上げて食べる。そんな中彼女は俺に問いかけた。
「ねぇ? アンタ、アタシと付き合うのを許可したって事は好きなところがあるのよね? どこが1番好きなの?」
俺は唐突さに吹き出しそうになった。
「えっ……普通に綺麗だし優しいから……?」
「ありきたり、やり直し!」
頬膨らませ指差しで言ってくる彼女に愛しさを感じた。
「勘弁してよ……」
そう話していると外で轟音と共に悲鳴が聞こえてきた。俺たちは焦って外に出る。
「な、なによ!?」
辺りを見渡すと魔物が1体いた、それもBランクだ。
パーティに所属していた頃は滅多に相手をした事がないっ。
ただ勉学に励んだ甲斐があった。そのおかげで脅威度がわかったぞ! だから逃げるのかって?
んな訳無いだろ、固有スキルがほぼ無くても最低限やれるんだよッ! それで無辜の民の逃げる時間は稼げる!
「ルミナ! Bランクのジャサイだっ! 久方ぶりに戦るぞ!」
「はぁ!? アンタは確かに弱くないけど、あのBランクは兵士約25人分の強さよ!」
「そんなの知っているッ!」
そう言って禍々しいサイの様な魔物相手に手を燃やし殴りかかる。
「もうっ! 装着ッ! オムニスフィア展開!」
彼女も臨戦態勢だ、鎧を見に纏いハルバードを握った。
そして俺の拳は魔物の顔面を捉えた。
「ウラァア!!!」
「ぶるふぁあ!!」
奴は顎を揺らして仰け反った。そこに無慈悲な追撃が来た。
「穿ち貫けッ! オムニレーザー!」
打ち上げられた魔物を下から幾多のレーザーで貫いた。
可哀想だが殺すことに成功した……出来れば魔物も殺したくは無いんだがな……
「やっぱり天才だよ! ルミナ!」
「ふふっ、これくらい造作もないわ!」
そう2人で喜んでいると突然全身の毛が逆立ち冷や汗が出た。漏れる殺気と冷気の方を彼女と共に見た。
「う、嘘だろ……? Aランク最上級の……」
「ノクスグラキエス……!?」
一気に全てを凍てつく程の冷気が襲う。体高10メートルの漆黒の黒豹の見た目をした化け物。氷の様に輝く牙と爪を持ち、こちらを睨みながらジャサイの遺体を貪る。
だがおかしい、この地域には生息していない上にコイツは誰かに従う事はない。
そしてここは、こんな強いカード切ってまで襲う価値のない町だというのに。
「なっ、何でここに、こんなのがいるのよ……」
マズイ、彼女は怯んで止まってしまった。だというのに氷の塊をこちらに射出しようとしてやがるっ。
畜生……俺が壁になれば助けられるかっ!?
「ルミナァァ!!!」
俺は彼女を突き飛ばし全身に氷の槍が貫いた。
「良かっ……」
俺は動きを封じられた瞬間に頭に巨大な氷塊を当てられ肉体は潰れて絶命した。彼女は助かったのだろうか。
「……嘘ッ! 嘘嘘嘘……嘘だァ!! い、嫌だよ、アシェルっ!!」
(なんで身体が灰になっていくのッ!!)
彼女は狂乱して、彼のぐちゃぐちゃの肉をかき集めても灰になってなっていく事に発狂した。
無理もない先ほどの天国から突然、地獄に叩き落とされたのだから。
「やっと家族が出来ると思ったのに! やっと独りじゃなくなったと思ったのにッ!! そもそもアシェルが何したって言うのよ、彼ずっと不幸じゃないの! 私もアシェルもやっと報われたのに、ふざけんじゃないわよッ!!」
そう叫び言いながら立ち上がり前に進みながら、オムニレーザーを何度も放つが氷によってレーザーは反射され届かない。
ならばと手段を変えた。
「オムニスフィアァア!!! そいつに触れて自爆しろッ!」
魔力を使い果たす寸前までに大量のオムニスフィアを生み出し魔物に向けて突撃させ自爆させた。
「うごぎゃあ!!」
魔物の肉は少し抉れ、毛は焼けた。
ただそれだけだ。
彼女は確かに年齢を考慮すれば、規格外に強いがまだまだAランク最上級には及ばない。
「す、少ししか効かないなんて……もう動け……ない……ははっ。私って結局孤独になるのね……」
もう動かない身体でへたり込む、彼女は号泣し顔はぐちゃぐちゃだ。
そこにノクスは氷の槍を空中で生成しまた無慈悲に放とうとする。
(ごめん……ごめんね、アシェル)
もう諦めてしまった彼女に向けて槍は大量に放たれたが全てが空中で溶かされ消えた。
彼女は後ろから放たれた銀色の炎に反応して振り返る。
「っ!? ……ア、アシェル!? 本当にアンタなの!?」
彼女は驚きのあまり声が裏返った。無理もない、目の前で何故か灰になって消えた彼がいたのだから。
灰から蘇ったのだ。
「心配させたな! 今の俺なら、この不死鳥の力でお前を護れるッ!!」
遡る事、アシェル死亡直後の本人の意識内。辺りには虚無が広がる。
「……死んだか俺は。せめてルミナは……」
そう呟くと俺の背後から声が聞こえた。
「否、お前は死んでいない。私の宿主はほぼ不死身に変質する」
振り返った。
「誰だ? ……な、鳥? いや、不死鳥……か?」
確信は無かった、だが燃え盛る鳥を見れば誰しもが連想するだろう。
「そうだ、散々迷惑をかけて悪かったな。記憶の封印も解こう」
その瞬間、俺は幼少期に弱り切った小さい不死鳥を助けた事と体内に侵入してきた記憶がフラッシュバックした。
「はっ!? なんでだ、なんのためにこんな事を?」
「力を蓄える為にお前の体内に隠れた。だから死なれては困るのでスキル誤認など、色々工作して戦場から遠ざけたのだが、結局冒険に出た事に肝を冷やしたぞ」
俺は絶句した。不死鳥に同情はできるが俺の人生はお前のせいでめちゃくちゃになったんだ。
それで一族からも追い出され、酷い孤独に追い込まれたのだぞ。
それに対して体内にいるからか思っている事を察して話し始めた。
「お前の言いたい事はわかる、だからせめてもの償いに力を分け与える。そこまでは私は回復したからな。これで人生を再起すると良い。不死鳥の如くな」
だとさ! まだ俺の体内にいるつもりらしいが力は利用させてもらうっ!
俺の身体全身は銀色の炎に包まれ、炎の翼も出来た。
「アシェルなの? 本当に……?髪も金髪のメッシュが入って変わっちゃって……」
彼女は酷く混乱しているらしい、まあ俺もだけど。
にしても酷い顔だ、そんなんになる程に俺を想って泣いてくれたのか?
その瞬間、不意打ちに巨大な氷塊を何発も飛ばしてくるが片手の炎で全てを蒸発させた。
「今話をしているんだ、邪魔をするんじゃないよ。子猫ちゃん」
「す、すごいわ……」
手を口に当てて驚くルミナ。
「とにかくコイツは倒す! ルミナは離れていて」
そこに大量の氷塊を生成してこちらには飛ばす準備を始めたノクス。
「さぁ! 火力比べと行こうかァ!!!」
奴は氷のブレスと共に氷塊を投げ飛ばす。俺は燃え滾る全身から火を放った。2つはぶつかり合い蒸気になった。
「ぐぎゃああ!!!」
上手く行かないことに激怒しているらしい。
にしてもコイツの雰囲気はおかしい、誰かに操られているのか?
と考えていると飛びかかってくるので浮遊して回避し、技を放つ。
「喰らえッ猛串ッ!!」
燃え盛る槍を放ち奴の眉間にぶつけた。
「うに゛ゃあ゛あ゛!!!」
身体全身に火が燃え移り暴れる、その余波に巻き込まれて俺は地面に落ちて転がる。
「ぐぇっ!」
早く起き上がらなくてはっ。
——拳を握る。
「バーニングアッパー!!」
燃え盛る拳で殴り上げた瞬間に魔物は空で爆発した。俺はそのまま拳を掲げた姿勢で止まった。
そうしていると空から何か落ちてきたのでキャッチした。
「ぷよぉ……」
「なっ!?子猫サイズになったのか?邪気は感じられないし、やはり操られていたか……」
「ぷにゃあ」
小さい命を抱えて地面に降り立つと不死鳥モードを解いてルミナに駆け寄った。
「大丈夫か?」
「もう! 本当に泣いたんだからねっ!」
「悪かったよ」
そう言いながら彼女の頭を撫でた。嫌がる素振りも見せず、あちらから頭を強く押し付けてきた。
「にしてもノクスグラキエスの幼体? はどうするか?」
と猫の首根っこを掴むように掴んで見せる。
「うにゃ〜♡」
「なんかアンタにかなり懐いているみたいだし良いんじゃない? 看板猫にでもさせましょ。……でも本当に良かったわ……」
そう言うと撫でる手を引っ張って抱き寄せてきたので抱きしめ返した。
ワンワンと彼女は泣くので慰めて少し経つと冷静になったらしい。
「そう言えばその力はなんなの?」
「いやー自分でも驚きなんだよな! 話すと長くなるんだが……」
と全てを説明した、その間も頭の中で不死鳥は補足などをしてくる。
そこで俺も初めて知ったが急に銀髪になった事や、巨体で人間離れの怪力になった事も不死鳥の影響らしい。
「そんな事があったのね……これからどうする? 冒険者に戻る?」
彼女の問いに俺は包み隠さず本音をぶつけた。
「……不死鳥亭と冒険者半々はダメかな?」
「良いわよ!なんでも私はどこまでも着いて行くから……一蓮托生よ」
「ぷにゃぁあ!!」
彼女がやる気なのは嬉しいが、何故かこの子もやる気に満ち溢れているらしい。
ノクスグラキエスは俺の頭の横まで浮遊している。お前空も飛べたのか。
「にしても名前どうするかしらね、正体を知られたらマズいだろうし何かつけましょ」
「うーん……アイリスとかどう? 氷の光が反射して虹の様に見えたから虹を意味するアイリスでさ!」
「私のレーザーも反射されて効かなかったし良いわね、アンタはアイリスよ! 良いわね?」
「うにゅ!!」
「良いみたいだね」
そうしていると兵士達や冒険者達がこちらに走ってきた。
「ここは危険です! Aランク最上級の魔物が観測されました! 逃げてください!」
俺はまた力を解放し炎を纏い言う。
この方がカッコいいし説得力が増すだろ。
「……もう大丈夫です、私が撃退しました」
サムズアップをする。
ルミナはちゃんとアイリスを隠してくれている様だ。
その場が静まり返る。
そんな訳がない。Aランク最上級は国をも滅ぼす危険性があるのだから個人1人で倒せるはずがほぼ無いのだ。
だなんて思っているのだろうな。
「え……?」
俺は少し笑みを浮かべて言う。
「灰の守護者とでも言いましょうか。自分で異名をつけるなんて、少し小っ恥ずかしいですがね。とにかく私が倒しましたから安心してください」
「そんな事が単独で出来る方はほぼいな……」
そう言おうとした兵士の魔導通信機からノクスのシグナルロストを知らせる通達があり、兵士たちは引き上げていった。
「ふぅ……顔隠せたら良かったんだけどな」
「アンタの強さからして隠し通すのは無理よ。……ねぇ? アタシを抱きしめて……安心させて」
彼女を抱きしめ生き返った事を噛み締めた。
これから例え、どんな事が起ころうが俺はみんなを死なせない。この力で守り通す。
(フルパワーには程遠いがな)
やかましいやい!




