プロローグ 絶望失望追放希望
定番なモノを書いてみたいなと思って書き始めました!
是非お読みください!
「汝は……ふむぅ。これは焼き鳥屋向けの固有スキルだ! ぶわぁっははっ! 武人アシュレイ家の名が泣くな!」
俺は水晶に手を置き呆然とした。
俺が……この恵まれた巨躯の俺がスキル——焼き鳥だと?
そもそもあまりに抽象的ではないか?焼き鳥になるのか作れるのか??
映された結果に置いた手を震わせながら、その焼き鳥という文字と、燃える鳥に槍か矢っぽいのが刺さる奇妙な絵を見ることしか出来なかった。
だがこんな状況で、俺はなぜかその絵に惹かれて懐かしい様な寂しい様な感覚が過った。
それに、よく見ると文字は歪み文字化けしている様に見えた。
「待ってください! もっとちゃんと見……」
そう検査会場に響く声で叫ぶと途端に触れていた水晶は熱を帯びて割れ炎上した。
「焼くのは鳥だけにしろっ! 壊しおって......今日は終わりだ! 残りの検査の儀式は明日に延期だー!!」
昔は媚びへつらっていた役人は立ち尽くす俺をいないモノの様に扱い、神殿にいる者に大声で響く様に言う。
会場は嘲笑に包まれた、なんせ戦士や勇者ばかりの名家アシュレイ家で期待の巨漢の俺、アシェル=アシュレイが料理人のスキルだなんて……笑わない方が無理だろう。
「ウドの大木じゃない」
「のっぽの無能ね」
「血筋が一般人だったらまだマシだったのにな」
「オムニスフィアの子は孤児なのにすごいってのに、期待のアシュレイさんがこれかぁ……」
陰口がわざわざ聞こえる様に大きな声で言ってくれている様だ。俺は震える手を握った。
何の為に今まで鍛えてきた。
何の為にウザい虎の威を借る狐共に耐えて来たか。
せっかくの202センチの体格もほぼ無駄。
剣を振い槍を刺し穿つ、勉学にも励み文武両道を貫いてきた、その努力の先がこの無様な醜態なのか。
固有スキル判明の儀式、楽しみにしていたのに焼き鳥って本当になんだよ……爆発したせいで聞けなかったしな
あ、指先からちょっと炎が出た……
「あぁ……父と母に何と言えば……」
神殿からとぼとぼブツブツ1人呟いて歩いていると、外には父と母がいた。
狂戦士の父、ヴァンガ
剣豪の母、タイラ
2人はもう知っているらしく冷たい眼差しを俺に向けてきた。
「一族の恥晒しよ、あなたは」
と母が俺の顔下にビンタをする、身体は微塵も痛みを感じない。だが心がズキっとした、胃が締め付けられた様に吐き気がする。
「お前は適当な冒険者のパーティにでも入れ、それまでは家に置いておいてやる。もしくは街外れで飲食店でもやっているんだな」
野垂れ死を望んでいる、父は確実に。
アシュレイ家はもう俺を期待していない。
そうして俺は兄弟や両親、かつての友人達からも俺は遠ざけられた。そんな程度だったのか俺らの絆は。
そんな中で自分の固有スキルを試したが、手や指先から炎が少し出せるのと焼き鳥があり得ないくらい美味しく作れた……
本当に馬鹿げていて劣等感に苛まれ死にたくなる……この世界では力こそ全てだから本当に終わりだ。
ここんところ魔王軍の侵攻だって激しいってのに……
そんな中でも1ヶ月もしない内に案外、中堅のパーティには入れた。
ラインハルト=シュルツという男が料理人と調合師を求めていたので、加入したが雑用から何までやらされて最悪だったが、俺には居場所が無かったので所属し続けたのだ。贅沢は言えなかった。
給料も明らかにピンハネされていたし、1人の女除いて乱交して喧しかった。
期待されていた頃の贅沢が恋しいよ、皆に愛されるのが普通だと思っていた。
——実のところ、恵まれた者しか愛されないのだ。
そんなこんなで一年近く経った、とあるギルド任務達成後の街に帰った夜。
酒場でメンバーの面前でラインハルトは宣言した。
「お前はクビ! つまり追放だァ! なんでも無機物でも食い物に変える天才を見つけたんでなぁ! とっとと失せろ!」
——は?
待て待て、俺の料理や焼き鳥で明確に傷は癒えていたんだぞ?それに俺だって薬物調合で爆弾や毒ガスで戦っていたんだ、お荷物な訳が無いっ。
俺は視界にノイズが走る、怒りか悲しみか。
「おかしいじゃないか、ラインハルト! 俺の料理はポーション以上に傷は回復する! そして俺はフィジカルと知識で最低限の戦闘は行えていた! なのに何故っ!」
「だからもっと良い料理人を見つけたんだよ! 私物は持ち帰って良いから失せろ。……あー! 帰る家がねぇのか!」
「あははっ! 僕だったら恥ずかしくて死ぬね」
「なっさけないわね〜!」
「レシピは残していきなさいよ」
パーティの誰も味方してくれない……か。一年近く経っても絆は無い……
そう思っていると隣の席のメンバーが机をグーで叩いて立った。
「ならアタシも抜けるわ。正直、ラインハルトのセクハラには耐えかねていたし。アシェル、行きましょっ」
他のメンバーは口を開けて唖然とする中、冷静に言うと腕を掴み恋人の様に俺の腕と組む。
ドキドキするからやめて。
彼女の名は——ルミナ=アズールステラ。
青髪のポニーテールを翻り、クールな横顔を見せる。
時々気を遣ってくれているんだか罵倒しているんだか微妙にわからない、少し背の高めの同い年の女の子だ。
でも何故、共に抜ける?
「はぁ? 何度も言わせんなって、お前は俺の女になれって! 将来有望の炎剣のラインハルト様のよぉ?」
「嫌よ、自惚れ屋。じゃあ、さようなら」
そう言うと喚く彼を背に、俺の服を引っ張って酒場から出て行った。
「お、おい?いいのか?」
「抜けるタイミングを丁度探していたから気にしないで」
そうポニーテールをバサっとして澄ました顔で言う。
今の状況は謂わば無職だというのに。
まあ辞めたいって事は何かやりたい事があるのだろうし挨拶してさようならするか。
「じゃあ、またいつか会えるといいね。頑張って……」
いきなりガシッと腕を掴まれた、やめろデッカい胸が当たっている。
「何の為に一緒にアタシが抜けたと思っているの? 1年前、神殿で嘲笑されていた時からずっと心配だったのよ? 孤独は苦しいものだからね……」
そんな前から俺の事を知っていたのか?
こんな俺を気にかけてくれる子がいたのか?
俺はココロの防波堤が決壊、頬に熱いモノが伝う。
「な、なんで泣くのよ……馬鹿」
「だって……だって情けない俺になってから優しくしてくれる人は皆無に等しかった」
「はぁ? アタシはずーっと優しくしていたんだけど? フツー興味無い男と2人でデートなんてしないし、ましてや一緒にパーティ抜けるとでも!? アンタ馬鹿なのっ!??」
と顔を赤くしつつも本気で俺を馬鹿なんじゃ無いかと叫ぶ。
言われてみれば今まであった罵倒は、照れ隠しの罵倒だった気がする。それに、確かに1番中良かったのは誰だと聞かれたら彼女なのは確実だ。
「でもなんで好意を……?」
「独り、昔を思い出して虚しくなっていた時、黙って隣に居てくれたから……でアンタはこれから何をしたいの?」
「……じゃあ、一緒に焼き鳥屋でもやってくれないか?」
固有スキル
——オムニスフィア。宝玉のルミナをただの焼き鳥屋の店員にするのはやはり気が引ける。
「喜んで。……ほら笑いなさいよ! 奴らの金も少し奪ってきたからアタシらで世界一美味い料理店にしてやるわ!」
こうして17歳の2人、焼き鳥屋を始めた。
まさかそれが、俺の人生と世界を大きく変える事になるとは、この時はまだ知る由もなかった。
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