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あとがき

この物語を書きながら、何度も思った。


会社とは何なのだろう、と。


利益を出す場所なのか。

生活を守る場所なのか。

自己実現の場所なのか。

それとも、ただの巨大な共同体なのか。


長く働けば働くほど、その答えは曖昧になっていった。


正しいことを言えば評価されるわけではない。

実力があれば報われるわけでもない。

人に好かれていても、上に好かれるとは限らない。


むしろ組織とは、“承知しました”と言える人間によって回っている。


私は最後まで、その言葉が上手く言えなかった。


もちろん、社会人として必要な場面では言ってきた。

だが本当の意味で、自分を殺してまで承知することは出来なかった。


その結果として、私は組織の中心から外れていった。


けれど、不思議と後悔はしていない。


もし器用に生きていたら、別の景色はあったと思う。

もっと上に行けたかもしれない。

もっと穏やかな会社人生だったかもしれない。


だが、その代わりに失っていたものもあった気がしている。


現場の空気。

お客様の声。

部下たちの表情。


そして、自分が自分であるという感覚。


この物語に登場する人々は、特別な悪人ではない。

仲良しクラブの人間たちも含めて、それぞれが組織の中で合理的に生きていただけだ。


だからこそ怖い。


組織は、誰か一人の悪意で壊れるわけではない。

小さな承知が積み重なり、少しずつ形を変えていく。


気づいた時には、誰も責任を持たないまま、別の何かになっている。


私は、この物語を“敗者の話”として書いたつもりはない。


むしろ、自分の形を最後まで手放せなかった人間の記録として書いた。


それが正しかったのかは分からない。


何のために仕事をしたのか。

何を守りたかったのか。


その答えは、今でも風の中にある。


ただ一つだけ言えるのは、現場で踏ん張っていた人たちの顔を、私は忘れていないということだ。


そしてきっと、それだけで十分なのだと思う。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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