表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女はすべてを救えない  作者: 右京寺
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/31

洗礼式

視界が白く、弾けた。

無影灯の、目が眩むような白だ。

「ペアン、…鑷子と針ちょうだい」

「はい」

パシッ

耳元で鳴り響く電子音。消毒液の匂い。医師の声。手袋越しの体液と器械の触感。

(私はあの日、怒涛のようなオペ予定をこなし、明け方の帰り道で——?)


「神に感謝を捧げなさい」

低く、厳かな声に引き戻される。

跪き胸の前で組んでいた手を開く。目を開ければ、そこは清潔な手術室ではなく、煤けた石造りの礼拝堂だった。

目の前には、白地に金の刺繍が入った法衣を纏った司教が立っている。私の手には、使い古された孤児院の服の感触。

(…今の私は孤児のシェラ。そして今日は、私の7歳の洗礼式だ)

「さあ、1人ずつ祭壇へ。偉大なる神から授かりし魔力の適性を見極めるのです」

司教の言葉に1人ずつ順番に祭壇に登って行く。周囲には、同じように洗礼を受ける孤児たちが並んでいる。

祭壇には水晶が置かれている。1人目の子が祭壇の上にいる司祭に促され、水晶に手を当てると薄い水色に光る。

「適性は水だな、次!」

司祭は早く終わらせたいのだろう、業務的に進めていく。

 

(心臓の鼓動が速い。頻脈だ)

こんな様子を見ながら私は、前世の記憶が濁流のように脳内を駆け巡っていた。

7年間の看護師としてのキャリア。解剖学、生理学、薬理学。同僚、先輩達とのやりとり。多数の術式。

(…29歳。まだ、やりたいことがたくさんあったのに)

「大丈夫?顔色悪いよ」

隣に並んでいた良く一緒にいるレラが声をかけてくる。

「うん、大丈夫」

感傷を振り払い、軽く微笑む。

「次」

順番がやってきた私は祭壇の水晶に手を触れた。

瞬間、水晶が柔らかな緑色に発光する。

「……ほう。適性は『癒し』。珍しいが、平民にも稀に出る型だな。魔力量は、まあ、並よりは少し多い程度か」

司祭の声には、期待も落胆もなかった。

この世界では、魔力の量は血筋で決まる。孤児の私に大きな力があるはずがない、と彼は最初から決めつけているのだ。

だが、私の視界には、彼には見えていないものが映っていた。

 

自分の手を見つめる。

皮膚が透け、その下を走る橈骨とうこつ動脈がドクドクと拍動しているのが見える。神経の束、筋肉の線維、血液の流れる速度。

それは、前世で何度も開いた教科書よりも鮮明な、生きた「人体図」だった。

(なにこれ…。血管の走行?)

「おい、早く降りろ、邪魔だ」

少しぼうっとしてしまった為、司祭に怒られてしまった。

「申し訳ありません。」

素早く謝り、私は素早く祭壇をおりる。

司祭を怒らすと懲罰室行きでご飯を抜かれてしまうので、従順であることが重要である。

「……手なんか見つめてどうしたの?」

私の後であったレラに袖を引かれ、私は思考を戻す。

「なんでもない…お腹すいたなって」

礼拝室の冷たい冷たい空気がほつれた服を通り抜ける。

「ほんとだよね…」

レラと言葉を交わしながら元いた位置に戻る。


洗礼が終わり、並んでいる孤児たちの前に司教が出てくる。

「神に感謝を祈りなさい。適性を世のために使いなさい。」

司教の言葉に全員で神に祈る。

神に祈るポーズを取りながら私は先程見えた人体図について考えていた。


司教と司祭が礼拝室から退出し、私達も孤児院へ帰る。

「ねえ、シェラ今日も森へ行くんでしょ?」

「うん。孤児院のご飯だけじゃ足りないし。この間仕掛けた罠を確認しようと思って」

私は、いつも通りの返事をした。

 

何故、この世界に生まれたのか、記憶が戻ったのかは分からない。

でも、私は今を生きていくしかないのだ。

(せっかく前世の記憶が戻ったんだから、生かさないと意味がないよね。

ハードな世界だけど、前世より長生きしたいな)


私はそう思いながら孤児院への道を歩いた。

書きたいなと思っていたものを書き始めてしまいました。

コツコツ書いていきたいと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ