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糸恋のパンツが大活躍ってどういうこと!?

「全ては、テメェのチンコを切り落とす為だぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


 巨大ベイパーコーンを貫き、父さんの体が超加速。

 テレポートの発動も間に合わない速度で迫ってきた。

 超音速で振り下ろされた刀が俺の視界を通過した。


 空振り!?

 違う。

 凶刃は振り下ろした反動を利用してさらに加速しながら、昇竜のように跳ね上がってきた。


 狙いは俺の股間ただひとつ。

 今まで辛い思いばかりさせてきた暗黒龍の最期を予感して、俺は心の中で何かを叫んだ。


 ――アッーーーーーーーー!


 シュラララァアアアアアアアアアアン!


 容赦ないドラゴンスレイヤーの一撃に、だけど俺の暗黒龍は無傷だった。

 何かが凄まじい勢いで股間を滑り上がる感覚はあるものの、それだけだった。


「何!? オレのダイヤモンドも鋼鉄をも切り裂く斬撃が何故!? テメェ、その銀色に輝くパンツは何だ!?」

「え?」


 裂けたズボンから覗くのは、糸恋の蜘蛛糸で編んだボクサーパンツだった。

 蜘蛛糸の強度は鋼鉄の8倍。


 日の光を反射して光沢を帯びた灰色のパンツが、俺の暗黒龍を守ってくれたらしい。


 ――ありがとう糸恋! お前には一生感謝してもしきれないぞ!


 青い空に照れ笑う糸恋の美貌を映しながら、俺は心の中で敬礼した。


「鋭利な斬撃が効かないなら打撃でキンタマを潰すまでだ! 刀の刃を返して峰打ちにすれば、岩をも砕く削岩力でテメエのキンタマは跡形も残らないぜ!」

「ぐっ」


 ――どうする!? いくらなんでもそんなものを喰らえば糸恋のパンツでも防ぎきれないぞ。


 OUからも感じなかった脅威に俺が苦悩していると、視界の端からちょこちょこと可愛いものが現れた。


 それは小さくふわふわで妖精のように愛らしい美幼女だった。

 つまりは麻弥たんである。


「そこをどくんだ麻弥たん! パパはそいつのキンタマを潰さないといけないんだ! 麻弥たんの未来のために!」


「パパ嫌いなのです」


「■■■■■■■■■■■■■■■■■■!?」


 お父さんの口から、五十音では表現できない轟音が溢れた。

 お父さんは膝から劇的に崩れ落ちた。


「ぐふぁっ! 負けない! オレは麻弥たんのためなら、どんな悪者にでもなってやる! たとえ麻弥たんに嫌われようと、俺が憎まれ麻弥たんに幸せになれるならオレはそれでいいんだぁあああ!」


 その叫びに、俺は胸にジンと来た。


 この人は、本当に麻弥たんのことが大好きなんだ。


 やり方は間違っているけど、お父さんの愛の深さに感動する。


 この人以外に、麻弥たんのパパさんは務まらないと、断言できた。


「あなたぁ」


 甘い、麻弥たんのお母さんの声だった。

 お父さんが首を回すと、彼女は笑顔で一言。


「わたし孫の顔が見たいわぁ」


「ひぎぃっ!? ななな、なんてことを言うんだ! 麻弥たんが妊娠するということはこの娑婆僧の汚らわしい漆黒のバベルタワーが麻弥たんを汚すということなんだぞ!」


「え~、でもあなただって毎朝毎晩わたしにしていることじゃなぁい」


 ――えっ!? そんなに!?


「オレはいいんだよ!」


 叫ぶお父さんに、ふらりと桐葉が歩み寄った。


「おいお前」

「は? なんだこの爆乳オンナ!」

「お前、ボクのハニーを痛めつけたな?」

「? ――」


 刹那未満のことだった。

 桐葉の右手がブレて、お父さんが音もなく白目を剥いて倒れた。


「はい、じゃあおばさんコレ回収して」


 桐葉はお父さんをひょういとつかみあげると、お母さんに手渡した。


「はいはい。じゃあパパー、わたしと寝室で仲良くしましょうねぇ」


 お父さんを抱きかかえ、お母さんはニコニコ笑顔でリビングの奥へ消えていく。その直前、くるりと一度振り返った。


「あ、みなさん今日はどうも。もう大丈夫ですよ。パパはわたしが平和的に説得しておきますからぁ」


「じゃあみなさん、あとはこのばぁばが焼いたクッキーでも食べておしゃべりしましょうか?」

「食べるのですー」

「え、あ、はい」


 こうして、のちに麻弥たん事変と呼ばれる事件は終息した。



   ◆



「ただいまぁ」


 俺、桐葉、美稲、麻弥たんがテレポートで家に帰ると、みんなリビングに勢ぞろいしていた。


「おかえりっすハニーちゃん。どうでしたか?」

「ああ。ばっちりだよ」

「婚姻届けの保護者欄にママの名前も記入済みなのです」


 誇らしげにMR画面を表示させる麻弥たんに、詩冴たちは拍手した。


「よかったです麻弥さん」

「よかったね、麻弥」


 麻弥たんと仲の良い真理愛と舞恋は左右からむぎゅっと抱きしめた。

 同じ警察班で付き合いも長いだけあり、相変わらず仲が良い。


「それから聞いて欲しいのです。今日は糸恋のパンツが大活躍だったのです」

「ウチのパンツ!? なな、なんやのそれ!?」


 顔を真っ赤にしながら、糸恋はスカートの上から両手で股間を押さえた。


 ――いや、お前がいまはいているパンツじゃなくてな。


「パパの日本刀がハニーの股間に直撃したのに糸恋のパンツのおかげで無事だったのです」

「あ、ウチがあげたパンツって意味かいな。びっくりしたわもお……て、日本刀が当たった!? ハニーはん股間だいじょうぶかいな!?」

「え? 糸恋!? ちょっ!」


 糸恋は俺を床に押し倒すと、慌ててズボンを脱がしてきた。


★本作はカクヨムでは431話まで先行配信しています。

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