表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/24

森の動物達①

次の日、リリアは森の中にいた。

明日から始まる憂鬱な学園生活を前に、休暇の最後は大好きな森で過ごそうと決めていたのだ。


心地よい風に草の香り。森の先に広がるふかふかの芝生の上でゴロンと寝転がる。

「あぁ・・・最高の気分ね」

リリアの今日の服装は、動きやすいシンプルなワンピースだ。

汚れてもすぐに洗えるし、ごてごてした飾りも付いていないのでとても軽い。


ぐぅーとリリアのお腹が鳴った。もうすぐお昼の時間だ。

森へ出かけるときは、いつも料理長お手製のサンドウィッチを持参している。

塩気のあるたっぷりのハムと、ふかふかのパンの相性が抜群なのだ。


バスケットからサンドウィッチを取り出し食べようとしたとき、後ろの森でがさがさと音がした。

くるっと振り返ったリリアの視線の先には、こちらを伺うように見つめている鹿がいる。

「アーク!」

リリアはそう叫ぶと、満面の笑みを浮かべて鹿の近くまで駆け寄った。


アークと呼ばれたその鹿は、昔リリアが助けてあげた小鹿である。

森で過ごしていると、こうして近くに来て顔を見せてくれるのだ。


そっと手を差し伸べると、アークはいつものようにその手に額を擦り寄せる。

「また会いに来てくれたのね。嬉しいわ。」

リリアがそう言うと、まるで返事をするかのように鼻を小さく鳴らした。

この人懐っこい仕草が、リリアの胸を温かくしてくれる。

友達が少ないリリアにとって、森のお友達であるアークはかけがえのない存在なのだ。


ふと、アークはリリアのワンピースの裾をくわえて、森の方へと引き始めた。

「どうしたの?そんなに強く引っ張ると服が破れてしまうわ」

リリアはそう言って優しく諭したが、アークは聞く耳を持たず、彼女を森の奥へと誘おうとする。

その真剣な様子に何かを感じ取った。

「・・・もしかして、一緒に来てほしいの?」


リリアがそう尋ねると、アークはようやく裾から口を離し、またもや鼻を鳴らした。

「分かったわ。付いていくから案内してちょうだい」

そう告げると、リリアはアークの後に続いて、森の中へと足を踏み入れた。


葉を揺らす風の音と、鳥のさえずりだけが響いている森の中。

アークは時折振り返っては、リリアが付いて来ているか確認しているようだった。


小川を渡り、大きなブナの木の根元にたどり着いたとき、アークは立ち止まった。

アークの視線の先には、白い小さな塊が見える。

リリアはそっと近づくと、その正体が何なのかが分かった。


そこには片足を罠にとられ、身動きができなくなっている小さな白いうさぎがいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ