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王と謁見

アルフレッドに案内をされ王族の居住エリアを抜けると、たどり着いたのは国王の私設応接室だった。

そこは公式の謁見の間とは異なり、限られた者しか立ち入ることのできないと言われる場所だ。


扉が開くと、そこにはアルカディア国の頂点に立つ国王と、その隣で静かに微笑む王妃が座っていた。


「楽にしてくれ。今日は公式な場ではない」


国王の低い声がその場に響く。

だがその言葉とは裏腹に、リリアに向けられる視線は鋭く、彼女の価値を見定めるかのようだった。


国王はまず、リリアが女神の力に目覚めた経緯を詳しく問いただした。

やがて話題が”なぜ報告が遅れたのか”に及ぶと、責めるような視線が父である男爵に向けられた。


「これほどの奇跡の力を得ながら、なぜ即座に報告しなかった。王家を軽んじているのか、それとも何か他意があるのか?」

有無言わせぬ追及に、男爵は緊張で顔を強張らせながらも、必死に言葉を絞り出す。

「滅相もございません・・・! ただ、あまりに強大すぎる力ゆえ、娘を世の喧騒から守りたい一心でございました」


「ふむ、親心か。まあいい」

国王は男爵の言葉を遮るように頷くと、本題を切り出した。


「リリア嬢を第一王子アルフレッドの婚約者として迎えたい。これは王家からの正式な打診だ。異存はないな?」


本来ならば、この場で膝を突き感謝すべきほどの名誉。

しかし、男爵は震える拳を握りしめ、誰もが予想しなかった驚くべき言葉を口にする。


「・・・陛下。誠に恐れ多いことながら、そのお話、お受けすることはできませぬ」


「お父様・・・!?」

リリアは思わず息を呑んだ。


国王の不興を買えば、爵位没収どころかアステル家の存続すら危うい。

だが、父の瞳には一切の迷いはなかった。


「リリアは・・・この子は、愛する人と結ばれる幸せを夢見てまいりました。貴族である以上、政略結婚は仕方のないことだと分かっております。ですが、どうしても娘には、好きな人と幸せな家庭を築いていってほしいのです!」


その姿は領主としてではなく、娘を愛する一人の父親としての叫びだった。


男爵の言葉に、部屋は凍り付いたように静まり返る。

国王の眉間に深い皺が寄り、その視線は「なんとかしろ」と促すようにアルフレッドへと向けられる。


アルフレッドが複雑な表情で口を開きかけた、その時だった。


「――僭越ながら陛下、よろしいでしょうか」


リリアは驚愕に目を見開く両親を横目に、国王を真っ直ぐに見つめた。


「お父様、お母様。私を想ってくださるお気持ち、心から感謝いたします。・・・ですが私、アルフレッド殿下との婚約に異議はございません」


「リリィ、何を・・・!」

慌てる父を制し、リリアは凛とした声で続けた。


「殿下は学園で、私の手助けをし守ってくださいました。この力についても、利用するのではなく私を尊重してくださったのです。なので私は、誰に命じられたからではなく、自分の意志で殿下の隣にいたいと思っております」


娘が一人の女性として殿下に信頼を寄せていることを知り、男爵は肩の力を抜いた。

リリアの真っ直ぐな言葉を聞いた瞬間、国王の表情が劇的に和らいだ。


「はっはっは! 実にいい。アルフレッド、お前も随分と信頼されたものだな」


国王の機嫌は一気に良くなり、重苦しかった応接室の雰囲気は一転した。

その隣で王妃は口元を隠しながら、表情を崩さずにリリアを見ている。


一方アルフレッドは、驚いたように目を見開いたまま一瞬固まった。

やがてその口元には、隠しきれない歓喜を浮かべ、リリアを見つめた瞳には熱が籠る。


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