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周囲の変化

大きな怪我はなかったため、リリアは翌日から登校することにした。

すっかり誤解の解けたアリアと並び、いつものように校門をくぐる。

だが校舎に入った瞬間に感じたのは、周囲の異様な視線だった。


(なんでこんなにこちらを見てくるの・・・まさかもう私の魔法のことが広まったというの・・・?)


「・・・リリィ、みんなの様子が変よ」

不安げなアリアの呟きに応えようと口を開きかけたとき、普段は口もきかないような伯爵令嬢達が数人引き連れて近寄ってきた。


「ごきげんよう、リリア様。昨日、医務室から出てこられたヴァレンティーヌ侯爵様が、あなたが魔法を使ったと驚愕していらしたのだけれど・・・本当なの?」


(ああ、あの方から漏れたのね)


リリアは内心で溜息をついた。

護衛や医者には、アルフレッドが箝口令を敷いていたのだ。そんな中で噂が広まるにしては早すぎる。

だが、相手が侯爵ともなれば近衛騎士達も口を塞ぐことはできなかったのだろう。


(どうせすぐに国中へバレることになるのよね・・・。だとすれば、今ここで嘘をつく必要もないわね)


「ええ。事実ですわ」


短く肯定した瞬間、周囲にいた生徒たちが、待機していたかのようにわらわらと寄ってきた。


「すごいわね! ずっとその才能を隠していらしたのね」 「どんな魔法が使えるの? ぜひ見せてほしいわ」 「今度お茶会を催すの。真っ先にあなたを招待させてちょうだい」 「建国祭ではぜひ、私にエスコートの光栄をいただけませんか」


昨日まで、田舎の男爵令嬢だと見下し馬鹿にしていた者たちが、今は競うように自分を称賛し、媚びを売っている。

リリアはその様子を、まるで他人事のようにどこか冷めた目で見つめていた。


(魔法が使えると分かった途端、これほどあからさまに手のひらを返すのね・・・)


その時、騒がしかった教室に、一人の令嬢が姿を現した。

一瞬にして、教室がしんと静まり返る。


登校してきたセシリア・ヴァレンティーヌの顔には、白く大きなガーゼが当てられていた。

それが彼女の美貌を損ない、昨日の事件の凄惨さを物語っている。


(なぜ?傷は魔法で、跡形もなく治したはずなのに・・・)


リリアが疑問に思う中、周囲の反応は冷酷を極めた。

周りを見るといつもの取り巻きたちは、走り寄る姿は無く目を逸らし距離を置いている。

怪我に対して心配をする仕草も無い。


(昨日の一件はみんなに知られているはず・・・だからもう王子妃になるのはあり得ないと思われているのね)


普通の令嬢であれば心が折れてしまいそうな場面だが、セシリアは違った。

背筋を真っ直ぐに伸ばし、顎を引いて、前だけを見据えている。

そこにはいつも通りの高貴で気高い、ヴァレンティーヌ侯爵家の令嬢がいた。


誰一人として声をかけない沈黙の中、予鈴が鳴り響く。


授業でグループを作る際も、セシリアの周りだけはポッカリと穴が空いたように空白ができていた。

それでも彼女は、一人ぼっちで座りながらも、その気高い眼差しを一度も落とすことはない。


授業終了の鐘が鳴ると同時にリリアはサッと立ち上がった。

そして、セシリアの元へと迷いなく歩み寄る。

教室中の視線が突き刺さるが、そんなものは今のリリアにはどうでもいい。


「セシリア様、ちょっとよろしいですか?」

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