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アルカディア国立学園

アルカディア国立学園は、13歳から18歳までの貴族子息・令嬢が通う学園である。


令嬢たちは主に刺繍や礼儀作法、子息たちはアルカディア王国の歴史や領地経営について学んでいる。

その他に、平民も入学できる騎士科が設けられている。

だが倍率は非常に高く、相当剣技に優れたものでなければ入学は叶わない。


基本的には全寮制だが、例外もある。

学園側に許可を受けた王族や高位貴族は、王宮やタウンハウスからの通学が許されているのだ。


リリアは当然この特例の許可を得ていない。

可能であれば、窮屈な寮生活ではなく、タウンハウスで自由気ままに過ごしたかった。


学園の令嬢たちは、お茶会、ショッピング、婚約者との交流に忙しそうに過ごしている。

新作のドレスや宝石、婚約者との甘い会話など、どの話にもリリアはついていけなかった。


始めはリリアもそれなりにお茶会に誘われていたのだ。

だが、動物や森での出来事を話すと、眉を顰められ次第に誘ってもらえなくなった。

しかし、リリアにとってはむしろ気が楽だった。

華やかな集まりで愛想笑いを浮かべて会話の駆け引きをするよりも、一人で図書室や裏庭で過ごす時間の方が好きなのだ。



「はあ、早くアステル領に帰りたい」

今学校の門についたばかりのリリアが、どんよりした顔でそうつぶやく。


「リリィ!おはよう。元気にしてた?」

後ろから元気な声が聞こえ振り返ると、そこには唯一の友達であるアリア・フォードが、大きく手を振って近づいてきていた。


「アーリィ!久しぶりね、私はこの通り元気よ。アーリィは聞かなくてもわかるくらい元気そうね。休暇は楽しめたの?」

「ものすごく楽しかったわ!休暇中は海岸沿いにあるイシュタリア共和国に旅行へ行ってきたの。料理はおいしいし、海はきれいだったしもう最高!それにあちこちにイケメンがいたんだから!リリィにも見せてあげたかったわ~」


興奮気味に話すアリアに若干引きつつも、リリアは友達との再会を喜んだ。


彼女は同じ男爵令嬢で、リリアが学園で唯一仲良くしている友達である。

愛嬌があり、元気で物怖じしない性格のアリアには友達がたくさんいる。

なぜそんなアリアがリリアと仲良くしてくれるのか不思議で、聞いてみたことがあった。


「なぜ、私と仲良くしてくれるの?」

「え?だって、リリィは面白いじゃない!私はね、みんなが話す新作ドレスや婚約者の自慢話にはもううんざりなの。でもリリィが話す森の話は違うわ。この間話してくれた、一晩で咲いてしまう幻の花の話とか、本当に素敵だった」


アリアはそう言って嫌な顔ひとつせず、またリリアの話を面白そうに聞いてくれたのだ。

それからアリアはリリアの大切な友達になった。


ボーンボーン


遠くで始業の鐘が聞こえる。

「大変、リリィ!ホールまで走るわよ!」

「ちょっと待ってよ!」


そう言いながら二人走り出した。

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