第一王子
ホールへ行くと、ほとんどの生徒がすでに集まっていた。
リリアとアリアは、後ろの空いている席へ目立たないように静かに座る。
前の席には侯爵令嬢を筆頭に、女生徒ばかりが座っている。
今日は始業式。
生徒会長であるこの国の第一王子、アルフレッド・フォン・ハプスブルク殿下が挨拶をすることになっている。
王家を象徴した輝くような金髪に、空よりも青い瞳。
甘い整った顔立ちに、年頃の令嬢達だけでなく貴婦人達もメロメロなのだ。
そのため第一王子が挨拶をする行事には、女性陣が我先にと前の席を取り合っている。
リリアは恋愛事に興味が無いわけではない。
ただ、学園内で恋愛をする気がないのだ。
貴族の子息はリリアの言動を良く思わないし、令嬢たちと一緒に馬鹿にする時だってある。
そんな相手と恋に落ちるくらいなら、平民でも自分を大切にしてくれる人の方が100倍ましである。
「相変わらずすごいわね。見て、またセシリア様達が前を独占しているわ。もう自分が婚約者にでもなったつもりなのね」
アリアが、前の席を見ながら呆れたように話しかけてくる。
侯爵令嬢のセシリア・ド・ヴァレンティーヌは、学園や社交界の中心人物である。
侯爵夫人に似て端正な顔立ちをしているが、プライドが高く一言でいえば性格が悪い。
彼女に目をつけられた者は、社交界に残れないとすら言われている。
「そうね、でも第一王子殿下と一番家格が釣り合っているわ」
実際セシリア様は、アルフレッド殿下の婚約者第一候補と言われている。
家柄も良く、父である侯爵は国の重鎮だ。
周りも彼女が婚約者で間違いないと思っているので、いくら傲慢な態度でも未来の王子妃を前に我慢するしかないのだ。
そんな話をしているときゃーっと声が聞こえてきた。
大きな歓声と共に、笑顔のアルフレッド殿下が壇上に上がる。
(こんなに注目されても笑顔ひとつ崩さないなんて・・・私ならストレスで胃が痛くなりそうだわ)
アルフレッド殿下は慣れたように挨拶を進めていく。
成績優秀で剣技も強く、高い魔力を持っている。さらには人望も厚く、切れ者だ。
現王妃の息子である第二王子もいるが、王太子はアルフレッド殿下で間違いないだろう。
ふとアルフレッド殿下と目が合ったような気がした。
リリアは一瞬ドキッとしたが、魔法も何も使っていないのだからただこちらを見ていただけだろうと、平然を装うことにした。




