違和感
ここまでくるのにこんなにかかってしまった…予想外でした…
前置きの方が長いかもです。
『あの、さっそく伺ってもいいですか? 勇者様の世界は、どのような治世がされているのでしょうか?』
「ち、治世ですか? えーっと……」
思っていたのと違う話題が振られた。まさか異世界の人に、自分の世界の政治について聞かれると思わなかった。
この前は勇輝のことばかりだったのに、政治なんて聞いてどうするんだ。勇者様はこのような社会で生きているのですね、と感心するのだろうか?
自慢じゃないけど、私は公民とか苦手です。だからすごく簡単な説明しかできなかったけど、ピュールさんは興味津々で聞いてくれた。
うぅ、なんだか申し訳ない。次までに勉強しておこうと心に誓った。
それから私は、これまでの人生の中で一番、勉強したと断言できるくらい勉強した。受験の時もテストの時も、こんなに勉強しなかった。ピュールさんの質問に答えるために。
ピュールさんはとても興味深そうに聞いてくれて話甲斐もあった。
「それってつまりこういうこと?」と質問されると情けなくも詰まってしまい、また頑張って勉強した。
私の話もした。勇輝が出てこない、ただの思い出話であっても、彼は楽しそうに聞いていた。最初とは別人のように。
『ミアさんのお話は面白いですね』
「ピュールさんが聞き上手なんですよ。すっごく話しやすいです。それに、なんか私の話も混ざっちゃって分かりにくくなっちゃいましたよね」
『とんでもない。とても楽しいですよ。ミアさんのことも聞けて嬉しいです』
「ありがとうございます。ピュールさんの話も面白いですよ。なんか学者さんみたい」
『学者? 初めて言われました』
ピュールさんが喜んでくれて、私も楽しくて、成績まで上がった。
社会の成績が目に見えて上がったのは嬉しい誤算だったが、違和感を覚え始めていた。
勉強に必死だったし、ピュールさんが喜んでくれるから気にしていなかったけど……そもそもピュールさん、どうしてこちらの世界に興味津々なんだろう?
最初は勇輝の話しかしなかったのに。
ううん、気にしないようにしていた。
物資のやり取りをするときと、二人だけで話をするときのピュールさんは明らかに態度が違ったけど、公私をしっかり分けているのだと思った。
無意識に、考えないようにしていたのだ。考えたくなかったから。
全部が私の考えすぎかもしれない。でもそうじゃないだろうと思う私もいる。
そして私は、これ以上見て見ぬふりを続けることが出来なかった。
「あの……ピュールさん」
何度目かの、二人だけの雑談の時。
ドレッサーの前に座っている私は、これまでにないほど緊張している。
私は決めた。ごくりと唾をのみ、背筋を正す。
『はい、どうされました?』
ピュールさんの優しい声、穏やかな口調。何もおかしなところはない。この人は、そういう人。でも、あなたの目が違う。
「ピュールさんは……」
勇者への憧憬で輝くあなたの目が。
「誰ですか?」
私への好奇心で輝いているから、あなたは違う。
「あなたは、ピュールさんじゃないですよね。誰ですか?」
鏡の向こうの、ピュールさんの姿をした誰かを睨むように見据える。大して驚いた様子じゃないのが、また腹が立つ。
本当はもっと深堀したかったけど駆け足になってしまいました。
二人が内緒話を始めてから、美愛の世界では一二ヵ月は経っている感じです。




