信仰ゼベル
ディアは、のんびりと釣りをしていた。ここ1ケ月ほぼ、同じような日常である。朝起きて、港までやってきては、夕方までのんびり釣りをし、暗くなったら宿に帰るという流れであった。
「こんなことしてて、いいのかな・・・・」
王国との戦はずいぶん前に終わったと聞いている。しかし、何度手紙を出してもマクマグからは帰国は許可できないという返事であった。
「嫌われちゃったかな・・・・」
ディアはのんびり横になり空を眺めた! 気候の温暖なこの街の事をディアは気に入っていた。ただ1点を除いて・・・・
「あらディアさん。今日も釣りですか?」
いつも声を掛けくれる近所に住んでいるであろうガクデンさんだ。 気のいい、おばさんである。
「はい、今日もボウズです・・・・」
ディアはいつもの挨拶を返す。
「頑張ってくださいね!」
「悪魔神様のお恵みがあらんことを!」
そういって、ガクデンは去っていった。
このような挨拶を返してくるのはガクデンに限ったことではない。この国に住む住民誰もがそうなのである。ディアのような外者に、挨拶を強制するようなことはなかったが、ディアはなんとなく、毎回調子が狂ったようなおかしな感覚を持つのであった。
「悪魔神って、オレのことなのか?」
この港町が属するのは神国ゼベルである。唯一神である悪魔神を崇め奉る宗教国家である。他国と争うこともなく、軍隊も持たなかった。それ故に、侵略行為を受けた場合国民全員が一致団結して、戦い抜くというスタイルの国である。
国民性はみな温厚で、外部から来た人間に対しても優しく接してくれる。外から来た貧しい者に無償で食事まで提供してくれたりするのである。
ディアの様にだらだら働かなくても、生きていける国であった。実際にディアは、戦争から避難してきたということで、宿には無料で宿泊し食事も提供してもらえていた。
住みやすいといってしまえばそうであるのだが、ディアはなんとなく気持ち悪い国だという印象を持っていた。
「やっぱりここにいたか!」
ディアと一緒に、この港町に避難してきていた女冒険者のリウが声を掛けてきた。
「いつもと一緒さ!」
ディアは寝そべって、空に浮かぶ雲を見ながら返事を返した。
「もしかして忘れてる?」
リウはディアの顔の前に自らの顔をもってきて話しかけた。
「うわぁ、びっくりするだろう・・・・」
ディアは飛びあがった。
「やっぱり忘れてたんだ! 今日は一緒に教会行く約束でしょ!」
リアは少しほっぺたを膨らまして起こったふりをした。
「ああ、ぺスタの!」
ディアはやっと思い出したようだ! 今日は冒険者3人組の一人ぺスタが出家する儀式の立会人として参加することになっていた。
ぺスタはもともと無宗教であったが、港町に来て教会に通うようになり、悪魔神への信仰に目覚めて、出家することになっていた。この国の住民になるには、出家しなければならないため、ぺスタは今日から神国ゼベルの国民になるということでもあった。




