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薫野みるく式小説の書き方  作者: 薫野みるく
物書き編(仮)
27/31

猫と暮らそう

 小さい頃から、猫と一緒に育ってきました。

 小学校時代には、入れ替わりが激しく、計六匹ほどの猫ちゃんと、短くも楽しい日々を送っていたみるく氏。その後迎えたサビ模様の女の子は、十三歳まで元気に生きてくれました。怪我も病気もなく、いつまでも私のそばにいてくれる、もっとずっと長生きしてくれると、信じ切っていたのです。



 その子が初めて下痢をした日、私は一人で近くの動物病院に行き、下痢止めの薬をもらって帰りました。具合の悪い時に受診するのは、本猫のストレスにもなりますし、何度か薬を飲めば治ると思っていたからです。


 結論から言って、その子は助かりませんでした。検査の結果、「消化管型リンパ腫」という病気にかかっていることがわかり、医師の勧めで手術をしましたが、その数日後に亡くなりました。

 当時はそれほどネットも普及しておらず、同じ病気の猫ちゃんが、どんな治療をしているのかとか、十三歳という高齢な子が手術をするのは一般的なのかは、何もわかりませんでした。

 いえ、調べようとすれば出来たはずだし、セカンドオピニオンという選択肢もありました。でも、私と母は、とにかく不安を解消したくて、「手術をすれば治る」と断言した医師のことばに縋りたかったんだと思います。


 その二年前にも、さらにその三年前にも家族を亡くしていた私たちには、その子が「死んでしまうかもしれない」と考えるのすら恐怖でした。もう大事な存在を二度と失いたくない。手術をすれば治るんだ、だから、「地元で三十年」とうたうその病院にお任せしようと、選択肢を誤り、その子の死期を早めてしまいました。


 不調に気づいて一ヶ月とすこし。その子は、もう触れることの出来ない、遠いところに行ってしまいました。

 私たちは、泣いて泣いて、ボロボロになりながら、ふと思い立って「里親募集サイト」を検索し、そこで運命的な出会いをしました。悲しいかな、サビちゃんが死に向かって身体を壊し始めたころ、カヲルちゃんと王子のきょうだいがこの世に生まれていたのです。



 正直、カヲルちゃんと王子が来るまで、私の家にいた猫たちは、「ペット」というポジションだったと思います。

 私は好きな時に撫でたり抱っこをしたり、かわいがるだけで、身の周りのお世話は大人に任せっきり。

 それは、カヲルちゃんと王子と暮らし始めても、自覚が足りませんでしたが、サビちゃんと過ごした毎日は、やはり輝かしいものでした。

 私たちは、猫がいないと生きていけないほどに、その魅力に憑りつかれ、サビちゃんが亡くなった翌月には、もうカヲルちゃんと王子を迎えていました。


 それについては、賛否両論あるでしょう。の前に、私という存在そのものが賛否だと思いますが、ペットロスに陥り、日常生活もままならない状態になることが、亡くなった子への愛情の深さを測る基準ではないと、それだけは言えます。

 


 カヲルちゃんと王子。私たちは、ただの猫好きから、真の猫好きへと進化しました。家族であり、何より気高い猫という生き物への、愛情、尊敬、畏怖……。


 室内は猫様が生活しやすいように、清潔、整頓、おもちゃやキャットタワーも適切な場所に配置します。

 テーブルやキッチンなど、猫様が載りたがる場所は、すべて解放。もちろん、危険がないように、細心の注意を払います。

 ごはんはウエットとドライの両方を数種類用意し、同じものが続いて飽きてしまわないように徹底管理。おやつも同様に、猫様をよく見て、タイミングよくお出しし、数日置きに体重を計って、健康状態を把握します。

 トイレは飼っている数+1が基本です。トイレ自体の大きさ、砂の種類、どこに置くかなど、猫様それぞれに好みがあるので、一匹一匹としっかり向き合い、お話して、過ごしやすい環境作りへの努力をしています。



 カヲルちゃんと王子がうちの子になって、私たちは猫にたくさんのことを教わりました。「一番身近な猛獣」である猫が家族になって、ヒトを想ってくれるのです。

 遊んで、食べて、甘えて、寝る。家猫の行動は、言葉にしてしまうと、この四つくらいですが、何気ない日々そのものが幸せなのだと、私はカヲルちゃんが亡くなった時に思い知りました。



 今は、カヲルちゃんときょうだいの王子、第二王子、姫ちゃんの三匹と暮らしています。第二王子と姫ちゃんは、保護猫活動をしている方から譲って頂きました。血の繋がりはありませんが、下の二匹は実の兄妹のように、毎日元気に走り回り、小競り合いをして、同じごはんをもりもり食べて育っています。


 カヲルちゃんがお星さまになって、悲しむ私たちの支えは、第二王子でした。第二王子がいてくれたから、私たちは毎日笑い、王子と第二王子を守るために、明るく生きることが出来ました。

 当時、生後九ヶ月くらいだった第二王子も、大好きなカヲルちゃんと急に会えなくなり、さぞ寂しく不安だったろうと思います。それでも、自分の気持ちよりも、ヒトの心に寄り添ってくれた第二王子は、うちに来てくれたその日から、ずっといい子なんです。



 猫は、必ず自分よりも先に逝ってしまいます。たくさんの思い出を残し、また猫と暮らしたい、猫がいないと生きていけないというほどに、私たちの感情を揺さぶり続けます。いろんな個性の子がいます。男の子と女の子では、手触りも全然違いますし、人間のメスもそうなように、女の子の方が大人っぽい気がします。


 猫との生活は大変ですが、そんなものは全く気にならないくらいに、さまざまな喜びが待っています。何より、ヒトの言葉の通じない、自分より小さな生き物をこれほどまでに愛せるという気づき。猫と生きることで育った感受性が、私の創作の基本になっていると信じています。



 いま、猫を飼っている方。その子との日々を大切に、終生かわいがってあげてください。

 これから猫を飼いたいと思っている方。猫は気まぐれなので、ヒトに合わせてなんかくれません。猫と暮らすには、まず猫の習性やペースを理解し、尊重することが大事です。

 「犬と違って、散歩をしなくていいからラク」という考えは、大きな誤りです。猫は運動神経が良く、特に子猫期は家じゅうを走って、どこにでも乗ってしまうし、何でも噛んだり、爪を立てる子もいます。

 猫に触られたらまずいものは、必ず扉の締まる棚などに収めておく。猫を迎えてから後悔しないように、まず猫のことを調べ、勉強し、最低限の準備は整えておきましょう。

 猫と暮らしたいと思う、すなわちヒトの都合より猫を優先する責任が生じます。覚悟しておいてください。本当に大変です。でも、猫と一緒にいなかったら、決して味わえない、至極の幸せが待っているのです。



 猫好きな作家ときいて、あなたは誰を思い浮かべますか? 私は、テレビや雑誌で「猫を飼っている作家特集」を何度か見たことがありますが、いつかは猫のために設計された家に住み、死ぬまで文章を書いていたいと願っています。


 出来る限り猫といたい、離れたくない。それには、在宅の仕事で生計を立てるしかありません。猫のため、と言いながら、それは結局自分のためなのですが、そうして必要に迫られたとき、文章なんてものは、案外すぐに上達してしまうんですよ。「小説」に限っては、そもそもの創作スキルが低い人もいるので、絶対ではないのですがね。



 猫と生きる。猫をかわいがる。猫を愛し、愛される。


 それはどんな作家の『うちの猫の本』を読んでも、ネットサーフィンをしても、経験しなければわからないことです。だから猫が好きなら、猫を飼いましょう。猫と暮らしましょう。もしかしたら、あなたの表現力は、そうしてみてはじめて生まれるのかもしれません。



 念のために書きますが、もしもこの投稿を読んで、猫を迎えたくなったとしても、ペットショップやブリーダーから買うのはやめてください。彼らがどんな環境で繁殖させられているか、知らないでは済まされません。


 猫がほしいと思ったら、保護猫を!

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