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落下の結果は真赤赤

「ひいぃいぃいぃい」

 

 思わず声を上げてしまった。良い思い出が一つもないじゃないか。


 でもそのおかげで心の準備が整った。もうこの世に未練はない。


 空を見上げた。雲がひとつもなかった。空を見ながら飛べたらどんなに気持ちがいいだろう。


 頭に閃いたのは走り高跳びの背面飛びだった。あれだったら下を見ることなく落ちていけるし、なによりちょっとかっこいい。

 

 落ち方が不自然だからって他殺を疑われたりして。


 最高だ。我ながらナイスな思いつき。


 両手に唾を吐き、助走距離のため五メートルほど下がった。


「松田翔太風に生まれ変わるんだぁ~!」


 魂の叫びと共に駆け出す。


 縁の五十センチほど手前でコンクリ床を強く蹴った。体が宙に舞い建物の敷地から飛び出したところで僕は気づいた。


 これじゃベリーロールだ。

 

 頭から落下する。ジェットコースターなんて比にならないほどの重量が頭を襲った。


 飛ぶ前は、アッという間に地面に叩きつけられるだろう、と思っていたがそれは違った。

 

 体感速度は驚くほどに遅く、10分の1でスロー再生してるような感じだった。


 試合中のキャプテン翼や幕ノ内一歩はこんな感じなんだろう。


 ジワリジワリとアスファルトが近づく。


 恐い。数秒後に訪れる苦痛を想像して体が震えた。


 でもこのまま生きていくほうがよっぽど苦しいに決まってる。


 そう考えると恐れが消えた。


「ママ、はやく~」


 おもむろにマンションから子供が出てきた。まだ小学校にも上がらないような幼児。


 幼児が上を見上げた。目がばっちりあう。幼児は呆けたように口を開けて驚いている。


 最悪なことに幼児は僕が墜落するであろう場所に立っている。


 やばい。このままじゃぶつかってしまう。


 心だけはきれいでいようと、十七年間清廉潔白を心がけて生きてきた。


 だからこそのイケメン転生である。ここで幼児を巻き添えにしたらイケメンどころか地獄に落とされてしまうかもしれない。


 必死で体を捻った。しかし落下軌道は全く変わらない。


 もう駄目だ。ぶつかる。

 

 その刹那幼児が横に飛んでいった。


 代わりに見たことのある男が衝突地点に現われた。


 小麦色に焼けた肌に白光する並びの良い歯牙。鼻筋の通りは良く、快活に輝く瞳はきれいな二重二重二重二重二重二重二重二重。


 小川俊樹ぃーーーー!!!!

 


 



 

 


 

 

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