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第116話 十二司教 ライラ

 「せまいんだが・・・」

 と思わず皆の総意であろうことを口に出す。

 「私のせいではないと思いますが。」

 と斜め向かいに座るライラ司教が僕の隣に座るアド姉をちらりと見ながら言う。

 「私()()のせいではないわね。」

 といわれたアド姉も言い返す。



 司教特権でこのまますぐにみなさんを検閲通過させることは可能です。

 条件としてはこのまま領都につくまで同行させていただき見定めさせていただくことですが。



 そうライラ司教は僕たち一行に申し出た。

 ジルの護衛が確認したところ、検閲に時間がかかるらしく通常の手続きだと明日まではここで足止めされるということだったので、1人増えるぐらいなら、と軽く了承したのが間違いのもとだ。


 ライラ司教は興味があると言う僕との面談のためタッキナルディ侯爵家の馬車に乗りたいと言い出した。

 ただ、今乗っているメンバーの誰も他の馬車に移動しようとはしなかったのだ。なので


 司教領入領前


 御者 ミア、ジルの護衛1

 前列 ヒビキ、アナスタシア

 中列 ジルの護衛2、ジル、ジルの護衛3

 後列 トリィ、僕、ガブリエラ


 司教領入領後


 御者 ヒビキ、ジルの護衛3

 前列 ミア、アナスタシア

 中列 ジルの護衛1、ジル、ライラ、ジルの護衛2

 後列 トリィ、僕、アド姉、ガブリエラ


 と乗員が増えてしまったのだ。中列を詰めればライラさんが座れるという話になった後で、「じゃあ後列も詰めればもう一人いけるわよね。」とアド姉が追加で乗ってきて今に至る。

 ちなみに前列は御者席と出入りするための通路もあるので定員は2名で座席も2つしかない。


 「私は入国者の検閲のために同行しています。時間短縮したいというそちらのご要望にできる限り答えたつもりですが。皇女殿下とタッキナルディ侯爵が顔見知りであり、それぞれの護衛と婚約者の方が同行されるのはわかりますが、中将閣下が無理にこの馬車に乗られる理由がわかりません。」

 お前が一番邪魔なんだよ。とばかりの表情でライラさんがアド姉に言う。

 「私もこの子の婚約者です!」

 と僕の左腕に自分の右腕をからめながら自分も関係者だというアド姉。

 いや、婚約者にはなってないよ。と訂正しようとした時にそれは起こった。

 「は?あんたと親子ほど年離れてるだろうが!」

 とライラさんがアド姉に禁句を放ったのだ。言葉尻も荒い。地が出た感じだ。

 「あーん?」

 とこちらも本性をむき出しにしたアド姉が首を斜めに傾けながらライラさんにメンチを切った。

 ジルとライラさんの横にいたジルの護衛が椅子から崩れ落ちる。

 精神耐性の腕輪をつけてなかったため2人の圧にやられたようだ。

 ジル、トリィ、ガブリエラが2人を慌てて支えて頭から落ちないようにする。

 前を見ると、御者席への扉を開けてアナスタシアとミアが手を伸ばしている。

 急に横で人が倒れたのでヒビキが慌てながら馬が止まるように手綱を使っているようだ。

 「「あ。」」

 とやってしまったという顔をするアド姉とライラさんに僕は別の馬車への移動を命じた。


 ◇◇◇◇◇

 

 「先ほどは失礼しました。」


 その日の夜改めて馬車に来たライラさんが僕に頭を下げる。

 あの後ローラさん、父さんの馬車への休憩のたびに移動して、検閲代わりの面談は行ったそうだ。

 ジルも先ほど野営準備の近くにいた時にすませたそうらしい。

 残るはタッキナルディ侯爵一行と言うことになった。

 また喧嘩になると困るのでアド姉は父さんの馬車に行ってもらっている。

 ちなみにアド姉は検閲すらしないらしい。顔パスだと。


 簡単に顔ぶれを説明する。

 

 王国から来ている者5名:タック、トリィ(ベアトリクス)、ヒビキ、ミア、リッキー

 テムスティ山で保護しそのままメイドとして雇用したもの2名:アナスタシア、ガブリエラ

 帝国で新たに護衛兼御者として雇用した3名:ステラ、ブルックリン、アカネ


 「総勢10名・・・」


 と手元の紙に書き記すライラさん。


 「メイドや護衛の情報もそこまで必要なんですか?」


 と尋ねる。

 なぜそんなことを質問するかと言うと他国の貴族の場合は検閲もそこまで細かくは調べられないと思うためだ。

 憲兵が荷物を確認していて破損したりとかした場合、商人は泣き寝入りするしかないが、貴族の場合は国際問題にも発展しかねない。

 ましてやそれが自国への贈り物だった場合など、下手すれば憲兵の首が飛ぶこともある。

 タッキナルディ侯爵一行:馬車2台、総勢10人。

 (ちなみにブルックリンとステラに使わせていたバイクもどきは格納してある。)

 最悪これだけの情報でも入れると思う。


 実際、帝国の入出国の際も顔の確認などはあったが、人数の内訳などは聞かれなかった。


 「普段だったら必要ないのです・・・」

 とライラさんは申し訳なさそうに言う。

 「ここだけの話としておいていただけますか。」

 というので黙ってうなずく。

 面倒ごとの臭いはぷんぷんするが、さすがに他国で部下の命を預かる以上情報は必要だ。

 「最近他国からの入国者が入国後に行方不明になる件が続出しておりまして・・・」

 そういう怖い話は早く言おうよ。


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