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第114話 司教領に

 アド姉がニコニコと僕に微笑む。

 笑顔が素敵だけどブルーノを踏みつけてる絵面(えづら)がひどい。


 そう思ったのとほぼ同時に上空から風が地面に向けて吹いてきた。

 目を細めながら上を見上げると、グリフォンが僕とアド姉の間に降りたとうとしている。


「急に飛び降りないでよ。アドリアーナ。」


 下からは見えないが、グリフォンの上からアナスタシアさんの声がする。


「アド姉、どれくらいの高さから飛び降りたの?」

「ちょっとだけ上から。2階ぐらいからかしら。」


 2階から降りたぐらいで、地面は陥没しない。

 実はアド姉はめちゃくちゃ重いとか・・・


「ターちゃん?」

 と笑顔のままのアド姉からジト目で見られた。

 どうやら想像してはならないことを考えてしまったようだ。


 グリフォンが地面に降りたち、膝をつくと同時にアナスタシアが僕の側に降りる。

「お迎えに上がりました。マスター。」

 そういうと恭しく手を胸にあてる。

 動きを重視してるのか、パンツルックで髪も後ろにひとまとめにした格好だ。

 それを考えるとグリフォンにまたがってるわ、上空から飛び降りるわといろいろしてるのにスカート姿のアド姉がおかしい。

 飛び降りたのにめくれもしなかったな。


「ターちゃん?」

 と笑顔のままのアド姉から再びジト目で見られた。

 どうやら想像してはならないことを考えてしまったようだ。


「どうする? グリフォンでパッと司教領に行っちゃう?」

 とアド姉がグリフォンを押しのけながら近づいてきた。


 押しのけられたグリフォンが一瞬睨んだが相手がアド姉だと知って目をそらした。

 グリフォンって結構強い魔獣だと思うんだけどなぁ・・・


「いや、父さんたちもいるから僕だけパッと行ってもしょうがないでしょ。」

 とアド姉に言うと少し離れたところにいる父さんと母さんに気づいたようでそちらに軽く手を振る。


 だが、こちらに近づいてくるジルやステラたちに気が付くと

「また増えてるみたいなんだけど・・・」

 とジト目(さっきより少し羊目寄り)になって面白くなさそうにつぶやいた。



 ◇◇◇◇◇



「ではタックのことを頼んだぞ。」

 とグリフォンに乗ったエヴァが名残惜しそうにガブリエラとアナスタシアに告げる。

 ボロボロになったブルースはグリフォンに荷物のように載せられている。


 留守番をまかせていたブルースが精神耐性がめっぽう弱いことがわかったため、少なくとも誰かがテムステイ山に戻らなければということになった結果だ。


 誰が戻るかでエヴァ、ガブリエラ、アナスタシアの間で協議されたが、

 ガブリエラ:私も精神耐性高くない。それにマスターから離れたくない。

 アナスタシア:マスターと合流したばかりですぐに山に戻るのは忍びない。

 という2人の主張をエヴァは突っぱねることができなかった。

 とどめはアド姉の

 「エヴァはそもそも司教領から魔獣認定されてるからついてきても揉める元よ。」

 の一言だろう。

 

 エヴァは何か言いかけたが、あきらめて結果ここに至る。

 飛び立つグリフォンの背から切なそうにこちらを見るエヴァがかわいそうだったので、司教領で何か買ってやろうと思った。


 そんなこんなしてるうちに後から来ていたローラさんとも合流する。

 もともとグリフィス辺境伯に僕と一緒に挨拶する予定だったが、ジルが割り込んできたためローラさんだけ挨拶の時間をずらしたのだ。

 

 アントニオ・アザール子爵が率いた冒険者たち一行は、早馬で辺境伯領に戻ったジルの部下が辺境伯に事情を伝え、辺境伯領の騎士たちを連れ回収に来てもらうことになった。


 回収部隊が来るまで待っておいた方が良いと思い待機していると、ジルが近づき

 「タック、私たちは先に行こう。冒険者たちは私の部下数人で見とくから。」

 と言う。

 「良いの?100人近くいるよ。」

 「数はいるけど、みんな呆然としているだろう。状況もまだ理解できてないみたいだから大丈夫だよ。」

 確かにアザール子爵は後ろ手に縛られているが、それ以外の人たちはみな武装解除してはいるものの縛られたりはしていない。呆然としているという表現がぴったりくる。

 ザナックだけは個別に洗脳解除の魔法をかけておいた。

 状況を聞くと昨日アカネの件で僕と話をした後にアザール子爵から面談を申し込まれ、その時洗脳魔法をかけられたらしい。

 魔法が浅かったのかアザール子爵の指示には納得いかないものが多かったそうだが、不思議に思い口にするたびに魔法を重ね掛けされてしまい、従わざるを得なかったようだ。

 重ね掛けされたせいか頭も痛いと言っていた。

 ジルからは状況を正直に話せばジルの名前で免責を保証してやると言われほっとしたようだ。


 確かに洗脳魔法をかけられて気が付いたら皇族がいる一行を襲った集団の1人になってました。なんてこの人たちからすると悪夢以外の何物でもないだろう。

 ジルが保証してくれるのでひとまず安心だが、アザール子爵がどこで洗脳魔法の魔道具を手に入れたかわからずじまいだ。辺境伯のところで聞き取りをされるそうなのでその結果を待つしかない。


 じゃあ、ジルの部下に後はまかせて先を急ごう。

 そう思い、自分の馬車に向かうとジルもついてくる。

 「どうしたの?」

 「タックの馬車に載せてもらおうと思って。」

 「皇家の馬車あるでしょ。」

 「あれには部下たちが乗って後から追いかけてくる。タックの馬車は大型だから私と護衛も乗れるだろう?」

 とこともなげに言われた。まあ乗れるけど。と答えるとジルはニコニコと僕の馬車に乗り込んだ。


 「チッ」

 と舌打ちのような音が聞こえ、そちらを向くと、アド姉がいた。

 アド姉は僕にニコリと微笑むと父さんと母さんの馬車の方に向かう。


 背後から殺気のようなものを感じ、振り向くとローラさんがいた。

 ローラさんは「あとでお話があります。」

 そう言ってイニレ家の馬車に戻っていく。


 不穏な空気にその場にたたずんでいると

 「さあ、行きましょう。タック」

 そう言われ、トリィに左腕をつかまれる。

 普通に人を誘うよりも強めな力で腕をがっちりと固定されて僕は馬車に引きずり込まれるように載せられた。


 なにごと?

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