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第106話 暴挙の理由

 杖を手前にかざし、何かしらつぶやき始めたアカネだったが、糸が切れたようにその場に崩れ落ちる。

 アカネの後ろには鞘に収まったままの剣を握ったブルックリンが申し訳なさそうな顔をして立っていた。どうやらそれでぶったたいたようだ。

「すまないね、ご主人様。話をするだけって言うんで近くまでいかせてしまったよ。」

 確かに。未遂とはいえ、主人に害意を持つ人物を通してしまったのは護衛としては問題ありだ。

 ましてや知り合いということで簡単に通してしまったというのはいただけない。

 とはいえ・・・

「最後のセリフが気になるな。魔道具の独占とチャスク村に何の関係があるんだ?」

 と口にすると、昏倒したアカネを肩にかついだブルックリンとアカネの杖と荷物を手にしたステラが声をそろえて

「「チャスク村についての話は宿で説明させてほしい。」」

 と言った。路上で話すようなことではないらしい。

 疑問が解消されるのであれば、後でもいいかと、アカネが先頭の馬車に投げ込まれるのを横目にしながら自分の馬車に乗り込んだ。


 ◇◇◇◇◇


 宿に戻り、さっそくブルックリンとステラから話を聞く。

 2人の向かいに僕が座り、僕の左右にはトリィとエヴァが座っている。


 僕が襲われたときにブルックリン以外は何もしなかったのかというとそんなことはない。

 宿に向かい馬車の中でみんなはどうしてたのか聞くと、みんなブルックリンが後ろから止めようとしていたのが見えたのでまかせたそうだ。

「いざとなれば(僕の)前に立って盾になれた」とガブリエラ。

「私のエアウォールの方が早い」とヒビキ。

「唱え終わる直前につぶす」とエヴァ。

「唱え終わる前に切り捨てる」とトリィ。

 後者の2人は僕が狙われた理由などどうでもいいらしい。

 目を離すとアカネを始末しに行きそうだったので説明に同席させて勝手に動かないようにした。


 ガブリエラは以前絡んできた貴族子弟(ドレッド)の件があってから勝手に手を出さなくなったのはいいが盾になるべく前に立たれるのはそれはそれで困る。

 逆にエヴァはドレッドの件があっても変わらずである。


 アカネはベッドに寝かせてミアが見張りも兼ねて様子を見ていて、リッキー、ヒビキ、ガブリエラが馬車番だ。

「私たち4人は出稼ぎとして村から出てきたんだ。もともとチャスク村は魔道具士の村でね。数世代前から販売は帝国の商会にまかせて作成だけをやってたんだよ。でも最近王国産の魔道具に売り上げで大きく差をつけられていて、魔道具作成だけではやっていけなくなってね。」

 とブルックリンが話はじめる。

「それにしてはあなたたち2人とあのアカネ?だっけ?あの子とは考えが違うみたいだけど。」

 とトリィ。

「あたしらはただの魔道具職人の娘だけど、アカネはチャスク村の村長の孫娘だからね。村の産業が立ち行かなくなった原因がご主人様がらみだって知ったのと、たぶんあたしらからチャスク村の情報を聞いてさらに村を追い込もうとしてるって思い込んだんだと思うわ。」

 とブルックリンが答える。

 ひどい誤解である。

「チャスク村の産業が魔道具だなんて初めて聞くし、追い込んだつもりもないんだが。」

「私たちもご主人様の魔道具見て、こりゃ太刀打ちできないわってなるんだけど、アカネはご主人様の魔道具見てないから商会が上手に売れてない。もしくはタッキナルディ商会が何か手を回してると思ってるんだと思うよ。相手にもされてないとわかるとそれはそれでショックを受けそうだけど。」

 とステラがため息をつきながら言う。

「そんなに違う?」

「うちの親父や兄貴たちには、あんな鉄犬(バイク)みたいなの作れないよ。話にならない。」

 とブルックリンが言い切る。そこまでほめられると悪い気はしないが元ネタは前世の記憶なのでそんなに威張れもしない。


「目が覚めたら私たちだけで、ちゃんと説明するよ。迷惑かけたね。」

 と頭を下げるブルックリン。

「私たちはしばらく無給でかまわないので、あの子を許してやってほしい。」

 と同じように頭を下げるステラ。

 ”無給”という言葉に反応して思わずステラの方を見るブルックリンだったが、少し考えるような顔をしてあきらめたのか改めて頭を下げなおした。


 ステラはいい子なのに金遣いの荒い友達や、思い込みの激しい友達で損をしているんだろうなぁ。

 面倒見のいい性格も良し悪しだな。

 そんなことを思いながら、頭上げていいよと言おうとしたときだ。

 扉が激しい勢いで開き、1人の男が飛び込んできた。

 腰と足元には止めようとしたらしい宿の職員がしがみついている。


 男は僕の顔を見ると、しがみついた職員を振り払い、

 「すまねえ!!! うちのギルド員がまたあんたに迷惑を!!!」

 と土下座を始めた。


 そりゃ、道端で騒ぎを起こして、叩きのめされたギルド員が帝国貴族に連れていかれたってことになれば、ギルドマスターの耳に入らないわけないよな。


 とここ数日で一気に老けたような気がするザナック:グリフィス辺境伯領にある冒険者ギルドマスター の土下座を見た後、めんどくさいことになったと天井を見上げるのだった。


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