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第105話 チャスク村の娘たち

年度末、年度初めでバタバタして投稿に間があいてしまってすいません。

 心落ち着かない馬車での数時間をすごしながら、僕たちは夕方に無事グリフィス辺境伯領についた。

 ジルは辺境伯のところに顔を出すというので、彼女たちとは門をくぐったところで一旦別れる。

 付いてくる?と聞かれたがもともと辺境伯にはローラさんと一緒に挨拶に行くという先ぶれは出していたので、断った。

 第一皇女(ジリオン)新任侯爵()が一度に来たら辺境伯も困るだろう。

 ジルはそのまま辺境伯の屋敷で一泊するそうなので、次に会うのは司教領に移動を始める明後日の朝だ。

 ローラさんと僕が元々これから辺境伯に会う予定だったのだが、”第一(ジリオン)皇女が来られるので明日にしてほしい。”と辺境伯から使いが来たのだ。

 帝国を出ると司教領まで3日ほど野宿をすることになるので少し準備期間が延びた格好だ。

 父さんたちもグリフィス辺境伯領の商会支店に泊まるというので、少し進んだところで僕たちと別れた。

 イニレ家一行と僕たちだけで最初に泊まった宿に向かう。

 急遽2泊させてもらうことになったが問題ないそうだ。

 僕が侯爵になったということで気を使ってくれたのかもしれない。

 などと考えていたら急に馬車が止まり、前につんのめる形になった。

 バランスをくずすがトリィたちに抑えてもらう。

 リッキーが御者をしている前の馬車が急に止まり、ミアがそれに合わせて止めたようだ。

 こちらの馬車の方が大型なので、急制動しないと止まれなかったのだろう。

 車間は十分にとるようにつたえておかないと。

 と思いながら窓から顔を出すと、リッキーの馬車の前をさらに先導していた、ブルックリンたちの鉄犬(バイク)の前に人が飛び出してきたようだ。

 どうやら言い争いになっているようなので、そちらに馬車を降りて向かう。

 慌てて、トリィ、ヒビキ、エヴァ、ガブリエラがついてくる。

 「当主がわざわざ前に出ることないんですよ。」

 とヒビキがぼやくが、無視する。

 もめごとはとっとと片付けて先を急ぎたいのだ。


 前方の馬車の前に出るとブルックリンが1人の女性と言い争っていた。

 幅広の帽子とステッキを持ちいかにも魔法使いといったいでたちだが戦士のブルックリンの前で一歩も引く様子はない。

 「だから、あたしたちはしばらくパーティ組まないって言ってるだろ!」

 「お金なら私が立て替えるって言ってるの!」

 「アカネに迷惑かけるつもりはないよ!」

 ステラはバイクを降りて、2人の言い争いを聞いているが止められる状況でもなさそうだ。


 馬車の上でやりとりを最初から見ていたリッキーに話を聞くと・・・

 ・どうやら魔法使いの女性(アカネという名らしい)はブルックリンたちのパーティメンバー。

 ・ここ数日別パーティのクエストに応援で参加していて不在にしていた。

 ・不在の間にブルックリンとステラが奴隷落ち。

 ・借金を返済して奴隷から解放しようと2人を探していたところ、当の2人が鉄犬(バイク)に乗って現れる。

 ・解放を申し出たが、2人は別に解放を望んでない。


 ということらしい。

 「借金返済できるなら解放してもいいんだけど。」

 とつぶやくとリッキーが申し訳なさそうに口を開いた。

 「それなんですが・・・、ブルックリンさんは宿とか酒場にもツケがあったらしく、奴隷落ちの際にそこも上乗せされているので、結構な金額になってます。アカネさんはなんとか足りると言ってますが、話を聞く限りだと単純に罰金2人分のようなので足りないかと。あと話を聞く限りブルックリンさんだけでなくステラさんも奴隷のままでも良いと思っている節が。」

 「奴隷のままで良い?なんで?」

 「普通、奴隷契約した傭兵だったりすると、魔物が出た時の壁役とか殿(しんがり)をまかされたりとか使い捨てされることもあるんですが、タッキナルディ家だとエヴァさんやガブリエラさんもいるので、その心配はないじゃないですか。あと当主の趣味に付き合わされたりすることもあるんでしょうけど、今のところ御屋形様が彼女たちをそんな風に扱おうとするそぶりもないですし。」

 リッキーは趣味に付き合わせるというオブラートに包んだ表現をしたが、たぶんあんなことやこんなことしちゃう話だろう。

 そんなことしたらトリィに殺されるからしないのだ。

 魔道具使うセンスは2人ともあるよう(ステラも途中で鉄犬(バイク)の運転を交代して問題なく操っていた)なので、魔道具の実験には付き合ってもらうけど、奴隷だからと言って使い捨てするような真似はするつもりはない。 


 「あなたが2人のマスターですか?」

 気が付くと僕の目の前にブルックリンたちがアカネと呼んでいた女性が立っている。

 僕をにらみつけているので、ヒビキが僕の前に出ようとするが、手で制す。

 「そのとおり。タック・タッキナルディといいます。」

 「無理は承知のお願いになりますが、2人を解放していただけませんか?失礼とは思いますがお金ならお支払いします・・・ タッキナルディ?」

 頭を下げて2人の解放を頼んできたアカネだったが、僕の家名に何か気づいたのか顔をあげる?

 「タッキナルディというと、タッキナルディ商会と何か関係が?」

 「父が会長してますね。」

 「そうですか・・・。罠にはめてまでチャスク村の人間を取り込みたいということですか!!!」

 彼女はそう叫ぶと突然杖をふりあげると、

 「魔道具の市場を独占しようとしてもそうはいきませんよ!!!」

 僕の方に杖の先を突き付けながらこう宣言した。

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