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第102話 同行の理由

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 僕がジルのことを思い出して、というかジリオン皇女が正体を明かしたあと、僕たちはオラゾーラ侯爵家の一室を借りて、ジルと父さんから同行する経緯を聞くことになった。


 テニスコートほどの大きさの部屋に2メートル四方の大きなテーブルが置かれている。

 その周辺に関係者が集まっている格好だ。

 僕とジルがテーブルをはさんで向かい合わせに座り、僕の右隣に父さんが、左隣に王国代表としてローラさんが座る。

 ジルとローラさんの後ろにはそれぞれの護衛が、僕の後ろにはトリィとヒビキが控える格好だ。

 父さんの後ろにはなぜか母さんが座っていた。まあ商人の護衛なんていてもいなくても一緒か。

 ガブリエラとエヴァはメイドとして各自に飲み物を提供していた。


 「まあ、押しかけた身だから私から話そうか・・・」

 とジリオン皇女=ジルが話を切り出す。

 「ああ、そうだ。タック、私のことはこれまでどおりジルと呼んでくれてかまわない。」

 「いや、さすがに皇女殿下を・・・」

 「つれないことをいわないでくれ。私たちの友情は嘘だったのかい?」

 と悲しそうな顔をするジリオン皇女殿下ことジル。後ろの護衛が僕に鋭い眼光を向ける。

 「わ、わかった。さすがに公式の場では無理だけどそうでなければジルと呼ぶよ。」

 「さすが、我が親友。もちろんこれは公式な会見ではないので、ジルと呼んでくれ。」

 と一転してうれしそうな顔を見せるジル。


 僕の後ろにいるトリィとヒビキ、テーブルの左隣に座っているローラさんからなぜか殺気が漂った。


 「私がここに来た理由は先ほど君のお父上が言われた通り、テムステイ山の今後に関する交渉について私に一任されたからだ。」

 「なんでジルが?」

 「理由はいくつかある。王国の方の前で口にするのは少しまずいが、非公式だからいいだろう。」

 とちらりとローラさんを見ながら言う。

 「1つは帝国はテムステイ山の他に2か所の魔獣の生息域が残っている。」

 北のミゼラ海域に水棲の魔獣の生息域、そして北東にある島も魔獣の生息域になっていて、普段は問題ないが、時々餌をとりに陸にあがったてくるのだそうだ。

 「最近活動が活発になってきていてね。母上や父上たちもテムステイ山が比較的落ち着いているのでそれに対応する部隊を北部に回そうかとお検討しているときにタックがテムステイ山そのものを制圧したという報告があった。」

 とジルは一気に話すと、

 「ここまではいいかな。」

 と確認してくる。僕は首肯し、続きを促した。

 「対魔獣ということだけを考えれば諸手をあげて歓迎すべき事態だが、タックの立場はとても微妙だ。わが国だけでなく、周辺3国すべてに縁がある。それこそテムステイ山そのもののように。」

 「微妙なの?」

 「微妙だね。各国が自陣営に取り込みたいと願い、せめてほかの国に取り込まれたくないと願っている。」

 ジルが言うとおり、


 王国:現住所。結婚相手であるトリィも王国民。卒業した学校も王国。

 帝国:生まれ故郷。両親が住んでる。

 司教領:ロッコ兄さんの嫁が司教領の聖女。


 と司教領は一歩足りない感じはするものの、縁もゆかりもないということもない。

 ロッコ兄さんとの結婚も、テムステイ山の制圧以前なので、帝国の爵位のように後付けでもない。

 

 「帝国としては、これまで他国との領地問題の緩衝材となっていたテムステイ山一帯がそのまま他国の領地になってしまうのは望ましくない。これから司教領に移動するそうだが、下手に言質を取られないように私が友人として同行しよう。」

 ここでジルは少し(けわ)しい顔をしてこちらを向く。

 「聞けば王国に婚約者がいるそうじゃないか。」

 「わたくしです。ベアトリクスと申します。タックの嫁です。」

 と僕の後ろにいるトリィが口を開き、自己紹介する。婚約者じゃないの?

 「ベアトリクス・ローデス。僕の婚約者だ。」

 とジルに紹介する。

 「ローデスというと、あのローデス商会の?」

 「知ってるの?」

 「昨日母上も言っていただろう。タッキナルディ商会とローデス商会の魔道具で既存の魔道具メーカーは破産寸前だと。」

 それで知ってるのか。

 「タックさん、わたくしのことも紹介していただけますか。あとヒビキのことも。」

 と横からローラさんも言う。

 あ、父さんたちにもまだ言ってないや。

 怪訝そうな顔をしているジルと父さんたちにみんなを紹介する。

 「えっと、こちらがローラ・イニレさん。王国で伯爵をされてます、そして僕の後ろにトリィと一緒にいるのがヒビキ・アニストン。ヒビキは僕の護衛です。」

 側室って話はまだしない方が良いかなと考えていたら、

 「私たちはタックさんの側室になります。」

 とローラさんがこともなげに言う。

 「主殿、私のことも紹介してもらえないか。」

 「マスター、私も。」

 とエヴァとガブリエラも僕の横に立つ。

 「こちらの2人はテムステイ山から連れてきた僕の配下です。左がエヴァで右がガブリエラ。」

 「われらも主殿の側室になる。」

 エヴァがそう言い、ガブリエラがニコニコしながら首をブンブンと縦に振る。

 何故だろう、ジルの顔の(けわ)しさが深くなってきた。

 父さんの顔色が悪く、母さんのこめかみに青筋が浮かんでいる。

 「タック・・・」

 と母さんが絞り出すような声で僕を呼んだ。

 「な、何?母さん。」

 「あんた、側室を取るってことはアドリアーナも娶る気かい?」

 「ま、まだアド姉とは話してないよ。急に決まったことだから。」

 「レッド殿、アドリアーナとは誰ですか?」

 とジルが父さんに聞く。

 「アドリアーナ・サイフォンです。」

 「司教領中将のあの?」

 「司教領中将のあの。」

 「サイフォン商会の?」

 「サイフォン商会の。」

 「そんな話は聞いてないが。」

 「わたくし共も息子が側室を取る話は今初めて耳にしまして・・・本当に急に決まったことかと。」

 と父さんが申し訳なさそうにジルに伝える。

 「タック・・・」

 と先ほどの母さんと同様に絞り出すような声でジルが僕を呼ぶ。

 「な、何だい?ジル。」

 「タックは王国とも、司教領とも婚姻関係を結ぶのかい?」

 「え?そんな国を見て結婚相手を選んでるわけではないが。」

 「先ほども言った通り、帝国だけ後手を踏むわけにはいかないんだよ。」

 「いや、待て待て。」

 「だが、母上がタックを侯爵に任じてしまったから、こちらもそれなりの人物を立てる必要があるね・・・」

 「ジル、話を聞いてくれ。僕は政争に婚姻関係を絡めたくないんだ。」

 「そうなのかい?待てよ。侯爵であれば、皇族でも釣り合わなくもないね。タック、僕にいい案があるよ。僕と婚約しよう。都合のいいことに僕も相手が決まっていないから。幼いころから気心知れているし、政争とは関係ない婚約だ。」

 と一息に言い切り、ジルはニコニコとほほ笑んだ。

 「早速?」と僕の右後ろでトリィが冷え冷えとするような声を出し、

 「えげつない。」と僕の左後ろでヒビキがささやき、

 「手ごわいですわねぇ。」と僕の左に座っていたローラさんがハイライトが消えた目をしながらつぶやいた。

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