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聖女のパパも楽じゃない  作者: 2626


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19/20

第19話 2匹目

 「……っ!」

クラウスは思わず唇を噛みしめて、

「どうして出てきた、おっさん!」

通信端末に向かって彼は怒鳴りつけていた。

『ああ、カタパルトが勝手に動いた(・・・・・・)から、てっきり俺にも出撃命令が下ったんだと思って……』

落ち着いた中年男のいい加減な返事に、彼はますます激怒していく。

「お前みたいな役立たずに出撃命令が下されるはずがない! 厳重な処分を覚悟しておけ!」

『そ、そんなことを言われても……』


 『『!』』

同時にマリとシルバーが振り返った。

王立フォロガルッサ魔法工学研究所のある方角を。


 『マリ、どうした!?』

嫌な予感がしたキールが訊ねるなり、

『急いで戻るよ、パパ!』

『……急行する』


 2人は機体の向きを変えて我先に高速移動を始める。


 『まさか!』

そのすぐ後をキールが追いかけた。

クラウスも、他の【聖騎士】も何が何やら分からないまま続いたが、キールは既に理解していた。

我知らず、舌打ちする。

『――2匹目。 いや、あっちが本命か!』



 「いやぁ、困ったなぁ……」

王立フォロガルッサ魔法工学研究所の全隔壁や防衛迎撃システムを緊急作動させながら、ヘイゾー博士は呟く。


 今、一番外の隔壁のすぐ向こうでは、【悪魔】が暴れているのだ。


 「まさか【悪魔】の出現が続くなんて誰も思わないからなぁ……。 はてさてぇ、僕ちゃんどうしたもんかねぇ…」


 彼女(彼)以外の研究職員は既に王都へ避難済みだ。

しかし、【機鋼魔兵】の主任研究者である彼女(彼)は、命ある限り、ここを離れることは絶対に出来ない。

それがセイとの約束だ。


 でもまだ殺されて死にたくはないなぁ、瓦礫に潰されるのも怖いなぁ、なんて思いながらヘイゾー博士がモニター越しに【悪魔】の姿を見つめた時だった。

「……うぅん?」


 『――魔法レーダー上に急接近する【機鋼魔兵】の反応あり』


 ほぼ同時に、彼(彼女)宛てに通信が入った。

『よう、ヘイゾー博士。 まだ生きているかい?』

助かったぁ!

博士は半泣きで叫ぶ。

「あと5分も持たずに死にそうだよぉ! それまでには助けてくれぇ、ケレミアちゃぁん!」

『ようし。 任せな!』


 ――きっちり、1分後。


 頭を狙撃された【悪魔】が、轟音を挙げて倒れた。



 キール達が現場に到着するのと同時刻。

【聖女】ケレミアの乗る【機鋼魔兵】『レイニーデイ』が、長大な対悪魔用ライフルを担いでやって来たのだった。


 「キールさんよ。 あの時私に指を切り落とされなくて良かったな?」


 『レイニーデイ』のハッチから出てきた彼女はキールの姿を見て不敵に笑う。

指を切り落とされて良かったなんてことは、人生においてほとんど無いのに。

全く笑えない冗談に、キールもただ苦笑いするしかない。


 「ええ、本当に。 でも、ケレミア様もお元気そうで良かった」


 そこで、【悪魔】だった女性の周りを飛び回って調査していたヘイゾー博士が、二人のやり取りに気付いた。

性別年齢出自不明のこの世界有数の天才は、やけにキラキラした目で言った。

「いやぁ! 誰かと思えばあのキールちゃんじゃぁないかぁ! 『ミッドナイト』とレベッカの調子はどうだぁい?」

「いや、相変わらずの毒舌で困っ……」

と愚痴をこぼしかけたキールだったが、娘の前なので止めた。

「あ、いえ。 『ミッドナイト』がこの機体の愛称なんですね」


 ヘイゾー博士は無邪気に笑う。

「そうだよぉー! 今は標準の迷彩色で塗っているけれどぉ。 完成したばっかりの時は真夜中のような真っ黒だったんだぁ!」



 セイがエルディブルース王国国王ダイジュール=ノセル4世に私的に謁見したのは、2匹の【悪魔】が討滅されたその日の夕方だった。


 「――陛下。 以上がヘイゾー博士からの報告のあらましです」

ダイジュール=ノセル4世は黙って額を押さえこんだ。

「セイ。 それは、嘘では無いのだな……?」

「はい、陛下」

セイは無表情で頷いたが、目に一瞬だけ激しい炎を宿らせて口にする。




 「【聖女】だけが【悪魔】を滅ぼしうるのは、両者が同族だからです」

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