第1話:魔力ゼロで騎士団をクビになったけど、目の前にネット通販の画面が出た件
皆様、初めまして。
剣も魔法もダメダメで、おまけに魔力までゼロ。
王国をポイ捨てされたエドワードの物語へようこそ。
絶体絶命の魔物の森で彼が手に入れたのは、伝説の聖剣……ではなく、まさかの「ネットショップ」でした。
異世界の魔物たちを現代の物流パワーで圧倒(?)し、美味しいご飯と便利グッズで聖獣までダメにしていく……そんな、ちょっとお腹が空くようなスローライフをお届けできればと思います。
それでは、ポチっと注文するような感覚で、第1話へどうぞ!
「エドワード! 貴様のような魔力ゼロの無能、我が騎士団には不要だ! 今すぐ失せろ!」
突きつけられたのは、一通の解雇通知と、冷たい蔑みの視線だった。
この世界では、魔力こそがすべてだ。
魔力があれば火を起こし、傷を癒やし、剣に力を宿せる。
だが、俺にはそれが欠片もなかった。
「……わかりました。お世話になりました」
俺は最低限の荷物だけをまとめ、生まれ育った王国を後にした。
放り出された先は、凶悪な魔物が跋扈する『絶望の森』。
魔力を持たない人間が一人で入れば、生存率はゼロと言われている場所だ。
「はは……本当に、死ねってことか」
歩き疲れて倒れ込んだ大樹の根元。
背後から、低く唸るような獣の声が聞こえる。
終わった。
そう目を閉じた瞬間――。
『ピコンッ!』
脳内に、場違いな電子音が響いた。
【条件を達成しました。ユニークスキル:ネットショップ(仮)が覚醒します】
【現在、初回限定:翌日配送無料クーポンを配布中です】
「……は? ネットショップ?」
目を開けると、虚空に半透明のウィンドウが浮かんでいた。
そこには、どこか見覚えのある、オレンジ色の矢印が微笑んでいるようなロゴマーク。
画面には「日用品」「食品」「サプリメント」といったカテゴリーが並んでいる。
「これ……前世で使ってた通販サイトか!?」
俺には、現代日本で生きていた記憶がある。
混乱しながらも、俺は必死に画面を操作した。魔物に襲われる前に、何か武器になるものを――。
だが、今の所持金は、ポケットに入っていた銅貨数枚。
「買えるのは……これくらいか」
俺がポチったのは、『超回復・栄養ドリンク(150円)』。
「ポーション」なんて高価なものは買えない俺が、なけなしの金で賭けに出た瞬間だった。
【ご注文ありがとうございました! 商品は明日、お届けにあがります】
「明日かよ! 今すぐ助けてくれよ!」
背後の茂みが大きく揺れる。
現れたのは、銀色の毛並みを持つ巨大な狼――伝説の魔獣『スコル』だった。
(終わった……。明日まで、生きてられるわけがない……)
俺は死を覚悟して、気を失うように深い眠りに落ちた。
*
「……ん」
小鳥のさえずりで目が覚めた。
不思議と、体が痛くない。それどころか、目の前に――
『置き配』された、見覚えのある小さな段ボール箱が置かれていた。
「本当に……届いてるのか?」
震える手で箱を開け、中に入っていた瓶を飲み干す。
その瞬間、体中に凄まじい熱波が駆け巡った。
「なんだこれ……!? 疲れが消えるどころか、全身に力が溢れてくる……!」
ステータスを確認すると、そこには信じられない文字が躍っていた。
【状態:魔力回路・強制拡張(極大)】
【全ステータスが一時的に100倍に上昇しています】
「150円の栄養ドリンクで、世界最強になっちゃったんだけど……」
ふと視線を感じて横を見ると、そこには昨夜のスコルがいた。
だが、昨夜の威圧感はない。
スコルは、俺の手にある『空き瓶』と、ついでに箱から出した『おまけの黒毛和牛メンチカツ』を、キラキラした目で見つめていた。
これが、俺と最強の相棒、そして最強の物流伝説の始まりだった。




