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第15話 ステータス確認回


 「なあ、ちょっといいか?」

 

 軽い自己紹介を終えた後、七人で雑談をしていたところ、唐突にギガ林が手を挙げた。


 「何だ?作戦会議か?」


 「……まあ、その前段階だ。ここにいる全員のステータスを開示し合わないか?」


 ……ほう、そう来たか。

 確かにこのアルクロでは、プレイヤーの意思でステータスの開示は可能だ。


 だが、それは信頼の置ける仲間内の話に限る。

 ついさっき出会ったばかりで、お互いの手の内を曝け出すことが出来るのかって話だ?


  ……まあ、個人的には大歓迎だがな。

 理由はもちろん、面白そうだからだ。

  魔王軍の幹部たちのステータスだぞ?

 興味が湧かないわけがない、むしろ見せてくれ今すぐ。 


 内心で前のめりになりながら、俺はあえて冷静な顔を保つ。


 「……理由は?」


 軽く問うと、ギガ林は腕を組んだまま、真っ直ぐこちらを見る。


 「さっき、言っただろ。世界をひっくり返すってな。なら、まずは自分たちの実力を把握しねぇとな」


 数秒後――

 獅音が、ぱっと手を挙げた。


 「面白そうニャ!我輩は賛成ニャ!」


 軽いな?

 まあ、それが彼女の良いところだな。


 「データ共有は合理的や。うちは賛成やで」


 ぴろこが頷く。

 確かに参謀役としては、全員の戦力把握は必須だろう。


 「タンク役としても、把握は必要です」


 虎徹が小さく返事。

 相変わらず声が小さくて聞き取れないぞ。


 「……了解」


 ショコラは短く返事、ここも相変わらずだな。


 「私は、最初からそのつもりだったし、大丈夫よ」


 ヴァイオレットが微笑む。

 うん、やはり常識人。

 何か癒されるわ。


 皆のモチベーションの高さに胸の奥が、少しだけ熱くなる。


 「では、本日これより、六魔将および魔王様のステータス共有会を開始いたします」


 アストラル君が一歩前に出て、仕切り始める。

 こうなると正式イベントみたいで何か恥ずかしくなるじゃないか。


 「順番はどうするニャ?」


 獅音がわくわくしている。

 その様子を見て、俺は苦笑した。


 「言い出しっぺは俺だから、まずは俺からいく、異存は無いか?」


 ギガ林が手を挙げながら立ち上がる。

 こういうキッチリと筋を通そうとする姿勢は嫌いじゃない。

 当然、反対意見は出なかった。


 というわけで、急遽始まった魔王軍の幹部同士のステータス確認。

 まずは六魔将の第一将であるギガ林のステータスから確認することになった。


 「ええと、それじゃあ行くぞ?ステータスオープン」


 ギガ林の声と共にウインドウが出現し、ステータスが表示される。

 アルクロでは、ステータスオープンと口に出すことで周囲のプレイヤーにも自らのステータスを開示できるシステムとなっている。


 名前:ギガ林

 種族:悪魔族デーモン

 ジョブ:黒騎士【超越職】

 レベル:1

 HP(体力): 510

 MP(魔力): 325

 STR(筋力): 610(+400)

 DEX(器用): 420

 AGI(敏捷): 430(+200)

 TEC(技量): 490

 VIT(耐久力):370(+200)

 LUC(幸運): 400

 装備品:魔剣ダスクレイン、黒騎士の鎧、黒騎士の指輪

 スキル:黒騎士固有剣術、瞬歩、物理耐性、魔法耐性、状態異常無効、HP自動回復、MP自動回復


 「ふん……これがどんなもんなのか正直わからないが、プレイスキルじゃ引けを取らないからな!」


 「いやいや、十分強いだろう」


 ……と俺は慌ててフォローするが、それに対してギガ林はふん、と鼻を鳴らすのみだった。

 いや、確かにまだレベルが1のため、俺のステータスと比較すれば、数値自体は低いがそれでも通常のプレイヤーからすれば、恐ろしいほどに強い。

 武器の補正値を加味してもレベル1で攻撃力が四桁というプレイヤーは、アルクロ内には存在しないだろう。

 それに、黒騎士固有剣術というスキルが俺が持つ魔王剣と同系統に該当するならば、その攻撃力は恐ろしいほどの威力を誇るに違いない。

 さらには瞬歩なるスキルまで所有している。

 詳細はわからないが、高速移動系のスキルっぽいな。

 剣士系統の猛者がこんなスキルを使いこなせば、正に鬼に金棒だろうに。

 間違いなく魔王軍の『アタッカー』としては申し分ないステータスとなっていた。

  

 次は第二将である虎徹の順番だ。

 あの巨体の戦士がどんなステータスをしているのか、非常に興味がある。


 「は、はい!行きますよ、ステータスオープン」


 名前:虎徹

 種族:鬼人族オーガ

 ジョブ:魔戦将軍【超越職】

 レベル:1

 HP(体力): 720

 MP(魔力): 330

 STR(筋力):420(+200)

 DEX(器用):340

 AGI(敏捷): 320

 TEC(技量): 420

 VIT(耐久力):650(+600)

 LUC(幸運): 400

 装備品:破滅の戦斧、鬼神の大盾、鬼神の大鎧

 スキル:魔戦将軍固有防御術、鬼神の守護、物理耐性、魔法耐性、状態異常無効、HP自動回復、MP自動回復


 「いやぁ、なんか恥ずかしいですねこれ……」


 恥ずかしそうにしている虎徹には悪いが、装備補正を加味したとしてもレベル1で防御力四桁到達は『タンク』としては申し分なさすぎる。

 このまま成長していけば、恐らく世界中探しても虎徹にダメージを通せるプレイヤーなんて1人もいなくなるだろうと断言できる。

 魔戦将軍固有防御術や鬼神の守護なんて、名前だけで恐ろしいスキルまで所有している。

 それにあれか?物理耐性、魔法耐性、状態異常無効、HP自動回復、MP自動回復、この五つのスキルは俺もギガ林も持っていたけど、全員が持っているということなのか?

 こんな物騒なスキルはプレイヤーに持たせちゃいかんだろうに。


 続いては、第三将であるぴろこの順番だ。

 見るからに魔法使いっぽいけど、どんなステータスをしているんだろうか?

 

 「次はうちかいな、恥ずいけどいくでー。ステータスオープン」


 名前:ぴろこ

 種族:吸血族ヴァンパイア

 ジョブ:魔導元帥【超越職】

 レベル:1

 HP(体力): 360

 MP(魔力): 640(+400)

 STR(筋力):220(+200)

 DEX(器用):380

 AGI(敏捷): 340

 TEC(技量): 400

 VIT(耐久力):200(+200)

 LUC(幸運): 430

 装備品:魔導杖ケリュケイオン、幻妖のローブ、業魔の宝珠

 スキル:魔導元帥固有魔法、多重詠唱、物理耐性、魔法耐性、状態異常無効、HP自動回復、MP自動回復


 「まあ見るからに魔法攻撃が得意そうな感じやね、戦闘が楽しみやわぁ……」


 自らの魔力欄を指差しながら楽し気にしているが、レベル1の時点で魔力四桁超えは普通に考えてやばいだろう。

 これに魔導元帥固有魔法や多重詠唱なんてスキルまで所持している。 

 ちなみにアルクロ内の魔導士系統が担う役割は『グレネーディア』、つまり広域殲滅要員に当てはまる。

 この桁外れの魔力で放つ範囲攻撃と、並外れた戦略眼を活かせば、敵からすれば脅威でしかないだろう。


 次に控えしは第四将の獅音だ。

 見るからに前衛タイプだが、実際のステータスはどうなっているんだろうか?

  

 「任せろニャー!ステータスオープンニャ!」


 名前:獅音

 種族:獣人族ビースト

 ジョブ:獣魔闘士【超越職】

 レベル:1

 HP(体力): 630

 MP(魔力): 320

 STR(筋力):580(+300)

 DEX(器用):410

 AGI(敏捷): 640(+400)

 TEC(技量): 430

 VIT(耐久力):390(+300)

 LUC(幸運): 430

 装備品:獣王の腕輪、獣王の闘衣

 スキル:獣魔闘士固有体術、金剛、物理耐性、魔法耐性、状態異常無効、HP自動回復、MP自動回復


 「どうニャ!我ながらかなりの強さだニャ!」


 獅音が拳を突き出して誇らしげに笑う。

 その言葉の通りに確かにそのステータスには目を見張るものがある。

 装備品の効果込みとは言え、四桁到達の敏捷性を筆頭に、高水準のステータスが並んでおり、最前線で体を張り、アタッカーやタンクの役割を臨機応変に担うことが可能な『グラディエーター』に相応しいステータスと言えるだろう。

 獣魔闘士固有体術と金剛は恐らく前線で戦い続けることに関してかなりの効果を発揮するだろう。

 

 そして、第五将のショコラの番となった。

 間違いなく、後衛タイプだ。

 アルクロには珍しい狙撃手タイプ、ステータスはどうなっているんだろうか?


 「……ステータスオープン」


 名前:ショコラ

 種族:鳥人族ハーピー

 ジョブ:魔弾射手(超越職)

 レベル:1

 HP(体力): 400

 MP(魔力): 320

 STR(筋力):560(+400)

 DEX(器用):490

 AGI(敏捷): 530(+400)

 TEC(技量): 490

 VIT(耐久力):350(+300)

 LUC(幸運): 450

 装備品:霊銃アビスノート、天魔の装束

 スキル:魔弾射手固有狙撃術、飛翔、物理耐性、魔法耐性、状態異常無効、HP自動回復、MP自動回復


 「……狙撃の腕なら負けないし……」


 いやいや、こんなステータスに世界一とまで言われた狙撃のスキルが加わったら鬼に金棒どころの話じゃない。

 四桁に届くステータスこそ無いが、それぞれが高水準のステータスでまとまっている。

 そこに飛翔のスキルで空中を自在に移動できるのだとすれば、必中の一撃で遠距離から相手を仕留める『スナイパー』としてこれほど恐ろしいプレイヤーはいないだろう。

 

 最後は第六将のヴァイオレットだ。

 狂乱の聖者と言われた有名なヒーラーが、どのようなステータスとなっているのか、見せてもらおうか。


 「最後は私ね?ステータスオープン」


 名前:ヴァイオレット

 種族:邪精族ダークエルフ

 ジョブ:邪教神官(超越職)

 レベル:1

 HP(体力): 440

 MP(魔力): 590(+400)

 STR(筋力):400(+200)

 DEX(器用):420

 AGI(敏捷): 390

 TEC(技量): 460

 VIT(耐久力):390(+300)

 LUC(幸運): 470

 装備品:邪神杖ウロボロス、宵闇の法衣、狂乱の勾玉

 スキル:邪教神官固有魔法、邪神の加護、物理耐性、魔法耐性、状態異常無効、HP自動回復、MP自動回復


 「何か私が一番中途半端っていうか……」


 ヴァイオレットが自嘲気味に苦笑いを浮かべる。

 とは言ってもこのステータス値は『ヒーラー』としては規格外には間違いない。

 はっきり言ってそんじょそこらのヒーラーよりも、全てのステータスが高くなっている。

 これは『狂乱の聖女』の二つ名が関係しているのだろうか?


 これで六魔将全員のステータス確認が終わった。

 次は魔王である俺のステータスを開示する番になった。


 「それじゃあ最後はいよいよ大将の番だな」


 「魔王の強さがいよいよわかるんやなぁ、楽しみやわ」


 「いよいよ真打登場ニャー!」


 「あはは……ステータスオープン」


 六魔将の面々が囃し立てる中、俺はステータスを表示させる。


 名前: ラグナ

 種族: 魔人族デヴィル

 ジョブ: 魔王《超越職》

 レベル:7

 HP(体力): 1080

 MP(魔力): 1210

 STR(筋力):840(+400)

 DEX(器用):790

 AGI(敏捷): 830(+400)

 TEC(技量): 820

 VIT(耐久力):790(+400)

 LUC(幸運): 790

 装備: 魔王の剣、魔王の鎧、魔王の盾、魔王の心臓

 スキル:魔王固有魔法、魔王剣、状態異常無効、HP自動回復、MP自動回復


 表示された数値を見た瞬間、六人の幹部は一様に固まってしまった。

 確かにレベルが7になっているとはいえ、ステータスが軒並み四桁に到達している時点でおかしいもんね。

 アルクロの本当のトッププレイヤーですら、こんなステータスを持っているかというと、答えはNOだろう。

 俺の役割は全てのステータスが均等であり、あらゆる場面に適応可能な『バランサー』。

 普通のステータスであれば良く言えば万能、悪く言えば器用貧乏ということになるのだが、これだけ全ステータスが高ければまさに全知全能、わかりやすくいえばチートで反則ということになるのだろう。


 「……おいおい、ラスボスかよ」


 「いやぁ、やっぱり魔王って化け物なんですね……」

 

 「ほんまに味方でよかったなぁ……」


 「なんていうかちょっと腹立つかも……」


 予想通り、六人のコメントは驚きや呆れが混じっているように見える。

 まあ、この辺りもおいおい慣れて行ってくれるのだろう。


 こうして全員のステータスが出揃った。

 この場にいる全員が桁外れの数値を誇り、それぞれが役割を全うすれば、もはや盤石の布陣と言っていい。


 『アタッカー』のギガ林

 『タンク』の虎徹

 『グレネーディア』のぴろこ

 『グラディエーター』の獅音

 『スナイパー』のショコラ

 『ヒーラー』のヴァイオレット


 そして、魔王であり『バランサー』である俺。


 こうして見ればパーティーとしてのバランスも完璧だ。

 高いステータスにどんなケースにも対応できる布陣。


 六魔将の皆も今はレベルが1だが、これからどんどん成長していけば、もっと恐ろしいステータスを獲得するだろう。


 ――世界に、俺たちを止められる勢力なんて存在するのだろうか?


 そう考えると背筋がぞくりとする。

 思い付きから始まったステータス確認だが、魔王軍がどれだけ恐ろしい強さを誇っているのかを再認識させられる結果となった。


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