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ヤマトコノカタ  作者: キクチ シンユウ
第二章 ー 空間遊戯 ー
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2-11 予期せぬ遭遇


 目の前に現れた大男は、錠を見下ろしながら指を鳴らした。

 その両手には近接格闘用のグローブが装着されている。


 錠は猪幡の威圧感に息を飲んだ。


「こんなところで出会(でくわ)すとはな」


「は、ははは……」


 錠は思わず乾いた笑いを漏らした。


 猪幡が踏み込もうとしたその時、目の前で爆発が起きた。


 爆発の瞬間、猪幡は爆心を避けるため後方へステップを踏む。

 反射的に腕で顔を覆った猪幡は、その身を覆う堅固な装甲もあって、爆発による被害は見られなかった。


小癪(こしゃく)な……」


 猪幡が爆煙を払うと、錠は一目散に来た道を走っていた。


 その姿を確認した瞬間、猪幡は巨体を一気に加速させて追いかける。


 錠は羽張背(はばりのせ)のバイザーを展開し、狭い路地を走り抜けながら時限式の爆発物を落としていく。


 猪幡が差し掛かるタイミングで爆発物は次々と炸裂するが、猪幡は意に介さず錠を追い続けた。


「あいつ! どんだけ固いんだよっ!」


 錠は狭い路地を抜け、車がすれ違えるほどの広さの道へ出た。


 見通しの利く場所に出た瞬間、錠は振り返り、路地から現れた猪幡に向けて噴進(ロケット)弾を放つ。


 爆煙が晴れると、その巨体は依然として無傷だった。


「小僧。その爆弾やら何やらは、自分も無傷というわけではいかないようだな」


 放たれた噴進(ロケット)弾と、路地にばら撒いた爆弾は種別だけでなく、威力にも差があった。


「お察しの通りだけど、爆弾の芯はわかるんでね」


 錠はすぐさま後退し、さらに噴進(ロケット)弾を放つ。


 猪幡はたちまち爆煙に包まれ、さらにそこへ噴進(ロケット)弾が撃ち込まれる。


 錠は後退しながら次々と噴進(ロケット)弾を撃ち込み、爆煙はさらに広がった。


 噴進(ロケット)弾が直撃を外したと感じた瞬間、猪幡の巨体が一気に爆煙から飛び出した。


 下からかち上げるように蹴りが放たれる。


「うわっ!!!」


 錠は寸でのところで防御空間(シャマリカゴー)を展開し、その一撃を防いだ。

 すかさず攻撃空間(カイルカゴー)による放射攻撃を放つ。


 顔面を狙った一撃だったが、猪幡は首だけを動かして(かわ)した。


━━やばいだろ! こいつの反射神経!


 猪幡は着地と同時に体を翻し、後ろ回し蹴りを繰り出す。


「くっ!!!」


 錠は身を屈ませてこれを避けると、収納空間(アサムカゴー)から自動小銃を取り出し連射した。


 猪幡は前腕の装甲で銃弾を受け止める。


 その隙を見て、錠は攻撃空間(カイルカゴー)を別角度に配置した。


「今だ!」


 放たれた光線は一直線に猪幡へと伸びる。


 胸に到達する寸前、猪幡の防御空間(シャマリカゴー)が展開され、その攻撃を弾いた。


 攻撃に意識を取られた錠は、猪幡がすでに自分を制空圏に捉えていたことに気づかなかった。


 目にも止まらぬ速さで左腕の突きが顔面を狙って放たれる。

 錠は咄嗟(とっさ)防御空間(シャマリカゴー)を展開しようとするが、その直前で拳は止まる。


 すぐさま猪幡の右肩が連動して右腕の拳が錠の胴体へと打ち込まれた。


 顔面へ展開した防御空間(シャマリカゴー)は、胴への攻撃に追従しきれず、芯で受け止めることができなかった。

 拳はそのまま錠の胴を捉えた。


「ぐわっ!!!」


 衝撃を吸収しきれず、錠の体は後方へ弾き飛ばされた。


 壁に叩きつけられ、視界が揺れる。


「がははは」


 余裕綽々(しゃくしゃく)の猪幡が、うなだれる錠へと歩み寄る。


「体の中は破壊を免れても、お前のククリの力で張れる防壁程度では、今の一撃は堪えるだろう」


「くそ……」


 ククリの力を駆使できる超人は、ククリの力を身に(まと)うことで常人の肉体とは耐久度が違う。


 だが、相手が同じく超人や鬼であれば、その打撃も常人を遥かに凌駕する。


 特に肉弾戦に特化したこの種の鬼の攻撃は、錠にとって最大級の威力だった。


「悪いが、死んだ状態で運ばせてもらうぞ」


 猪幡がさらに歩み寄る。


「む?」


 気配を感じ、猪幡が横を向くと顔面へ徹甲弾が撃ち込まれた。


「くそっ!」


 頭部の装甲は完全には破壊されないが、表面が削れ飛ぶ。


 続けて複数の銃弾が猪幡を襲う。


「狙撃銃か?!」


 錠の小銃とは明らかに威力の異なる弾だった。


 猪幡は銃弾の方向へと駆け出す。


 その先から、群青色の戦闘用外衣をまとった人員が現れた。


 各種携行火器から放たれる銃撃は、錠のものとは質が違った。


「こいつらっ!!!」


 装甲肉弾兵の装具は全身を覆っているが、その装甲の薄い箇所を的確に狙った射撃だった。


「くそっ!!!」


 猪幡は身を翻し、撤退した。


 錠の目の前で群青色の外衣を着た集団が陣形をとる。


 その陣形の中心に立つ人物が指示を出した。


「あの装甲肉弾兵は追わず、この場で逆襲対処!」


 指示を終えると、その男は錠へと歩み寄った。


 羽張背(はばりのせ)を首にかけているが、バイザーは展開せず外衣と同じ色のバケットハットのような帽子を被っていた。


「大丈夫か?」


「はい……。大丈夫です」


 痛みをこらえながら錠は答えた。


「学生隊の者だな?」


「はい。

 あなたは……?」


「私は局長直轄特殊潜行班の西澤(にしざわ)大尉だ。

 君を保護する」


 錠は担がれ、部隊は速やかにその場を離脱した。


 錠のこの世界が根の堅洲国ではないという推測は、確信へと変わっていた。



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