第58.5話 幕間 魔王との戦い
「いよいよね! 準備はいい?」
先頭を行っていたミライが振り返り、俺たちを見まわしながら最後の確認をする。
「もちろんだぜ!」
異世界に連れて来られてから4年以上。
本当に長く辛い日々だった。
「絶対に勝とう! そして……元の世界に戻るんだ!」
勇者であるユートは……自身よりも大切に想っていた妹と引き離された。
この日をどんなに待ちわびたか、想像に難くない。
「……守るよ」
ノノが、強い思いが籠った眼差しでみんなを見つめる。
「伝承によれば……このクリスタルに反応して……」
魔王。
およそ50年周期で封印が解け、その後の数日間破壊の限りを尽くすと言われている災厄の化身。
魔王の出現により、今までいくつもの国々が滅び、幾千万もの人や生物が滅ぼされ……。
それでも、多大な犠牲を払いながらもどうにかやり過ごしてきたらしい。
しかし、これ以上は限界だと、この果てしない絶望に終止符を打つために……俺たちが召喚されたのだった。
「クリスタルが反応してる! ――来るわっ!」
ミライの言葉が終わるより早く、ガラスのようなものが割れる音が世界中に響いた、気がした。
「……グルオォォォーーーッッ!!!」
闇を纏わりつかせ、巨大な黒龍が姿を現した。
本体は、その闇よりももっと昏い……見ただけで鳥肌が立つような不穏な気配。
そして、この世の全てを凍り付かせるような雄叫びを上げる。
「起き抜けにぶち殺す!」
出し惜しみはしない!
最初から手持ち最強、ランクSのナイトメア・キマイラと融合!
「『エレメンタル・スピア』!」
「ギャァオォォ!?」
魔王の両目に各属性の棘が刺さり、視界を塞ぐ!
「効いてるぞっ! このまま――!」
「わかってるわ!」
言われるまでもないと、ミライが溜めていた魔力を開放する!
「『フレア・カレドヴルフ』!」
大賢者ミライの編み出した炎属性の強烈な魔法。
聖剣を模した炎の大剣!
「『斬魔光刃破』!」
そして勇者ユートの『斬魔シリーズ』。
優しい彼が、情けを捨てて敵を殺すための技!
赤と白、2つの光り輝く魔力が交差して魔王を切り裂いた!
「グオォォォォァアアアー!?」
魔王の左側の腕や翼は千切れ飛び、右側はところどころ炭化して赤黒く変色している。
「行けるっ! 行けるわっ!」
「あぁっ! もう一度……!」
しかし、猛烈に感じる嫌な予感に、急いで2人の元に駆け寄る。
「グルルルゥゥゥ……ガァッ!」
「『結界・極』!」
魔王から放たれた暗黒の魔弾が、俺たちの前に展開されたノノの結界に触れ――。
「――っ! だめっ! 逃げてぇー!」
「任せろ……――っ! ぐぅぅぅー!」
結界は数秒で壊され……いや、数秒持ってくれたからこそ、逃げ切れた!
メイン火力の2人を抱え、必死に飛んで回避する。
おかげで……俺の下半身が焼き爛れている。
「レイジ!」
「大丈夫!?」
かつてないほどの大けが。命があるだけでも幸運だった……。
ここまでは、不意打ちが成功しただけだと思い知らされた! あまりにも強すぎる!
だからこそ……この機を逃しちゃいけない!
「俺に構わず! 頼む!」
「――わかった!」
ユートを下ろし、俺自身はノノの元へと飛ぶ。
「はぁぁぁ……! 『斬魔・五月雨』!」
光刃破は一点集中型、今度はいくつもの光の刃が魔王を切り裂いていく!
「ギャアアアアーーー!!!」
魔王は残った右腕で頭部を庇うが、がら空きの体にいくつもの傷ができていく!
行ける! もう少し! もう少しでっ!
「――っ! 『ライトニング・カレドヴルフ』!」
眩い光を放つ大剣が、ミライの頭上に輝く。
本物の……彼女が愛してやまないユート、彼だけが持つ聖剣に負けるとも劣らない強烈な光の剣!
ユートが好きすぎるからって……自分の魔法名に聖剣なんて名前をつけちゃうミライさんまじ乙女!
「これで……終わりよっ!」
勝利を確信し、大剣を振り下ろすミライ。
そして――。
「グガァァァッ!!!」
どこか緩んだ空気を吹き飛ばすような……不吉な咆哮をあげる魔王。
「――え?」
「グルゥゥゥァァァ……!」
魔王の目の前に、薄黒い結界が展開されており……ミライの渾身の魔法を無傷で防いでしまった……。
「ガァァァッ!」
「……え?」
お返しとばかりに、ミライに向かって黒い魔力の塊を放つ魔王。
「だ、だめ……! 『結界・極』!」
「いけないっ!」
ノノが張った結界を易々と砕き、魔力弾がミライとユートを飲み込む……。
「……あ……がっ……」
「ユートォッ!!!」
辛うじて息がある、といった様子のユートと気を失っているミライを抱え、急ぎのノノ元へと戻る。
「ユート! ミライ! 『大回復』! うわぁぁぁん!」
「落ち着け! まだ生きてる!」
泣きじゃくるノノに声をかけ、魔王の方を向く。
「グルルル……グオォォォーンッ!」
「ちっ! タイタンモード!」
魔王の薙ぎ払いを、巨人の力を借りて受け止めるが……一撃で腕がひしゃげる。
「ノノ! ユートを連れて逃げろっ!」
魔王の攻撃を、残った腕で、体で受け止め……。
「いやっ! 絶対いや! レージを残して行かない!」
「いけっ!」
残った腕が千切れ飛び……後は……。
「『斬魔……一閃……』」
万時窮すかとおもった時、ふらつきながらもユートが聖なる斬撃を飛ばす。
それは今までのどの攻撃よりも弱弱しいものだったが……。
「グルルッ!?」
「……!」
確かに、あの結界を傷つけたのを見た。
「……退こう。今の僕たちじゃ……勝てない……」
◇
その後、からくもどうにか逃げ切った俺たち。
どうやら魔王も傷を癒すことを優先したようで、追ってはこなかった。
そして……。
俺たちと魔王の戦いは合計3回にも及んだ。
最初の戦いで、結界には勇者と一部の魔物……神獣だけが持つ聖属性の攻撃しか効果がないことを突き止めた。
続く2回目で結界を打ち破ることに成功はしたが、結界を張った後は魔王本体にも聖属性の攻撃しか効かなくなることが発覚し……ユートの魔力が足りずに再び敗走した。
そして3度目。神獣の一角である煌龍皇の力を借り、俺たち自身も更なる鍛錬を重ね、万全の態勢で魔王に挑み……勝利を掴むことができたのだった。
読んで下さりありがとうございます(/・ω・)/
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