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96:その可能性と携帯電話。

――そういえば、と気になったことがある。


「アル王、小さい時に私達の世界に来たことがあるんでしょ?どうやって?」

「……ずいぶんと今更な質問じゃのぅ……」


だってあの時はギリギリな状況だったし。

うっかりスルーすることだってあるじゃん……


「……望月は、帰りたいのか?」

「……帰れるなら……?」


ホントはそこまで帰りたいのか自分でもわかんないけどね。

でも、桜姉とか萩兄とか……心配してるだろうし……


――私の意思はどこにあるんだろ……


「まぁ、帰りたくなったらわしに言えばいい。帰すことは可能だからのぅ」

「……その場合一方通行?」


私の問いにアル王は少しだけ昔を思い出すような、ていうか思い出して泣きたくなったって感じの表情になったけど……無理なのかな……?


「まぁ、あちらに渡るためのモノは一度しか適応しないとでも言っておこうかのう」

「……つまり向こうに帰って戻ってくることはできてももう一度行くっていうのはできないってことでいいの?」

「そうじゃのぅ……」


それを聞いて私は理解した。

結局は私もどちらかを選ばなきゃいけないんだってことを。


……家族を選ぶか、佐藤達を選ぶか……か。

私はどちらを選びたいんだろう……

やっぱり自分の気持ちがよくわからなかった。


――……ただ、なんとなく。佐藤がいない世界はつまんないんだろうなって思ったんだよ……――



「……は?もし帰れるなら?」

「うん。佐藤ならどうするのかなって。」

「どうだろうな。一応仕事は与えられてるからなぁ……」


佐藤はそう言いながらごはんを食べていた。

……塩には聞かないよ?多分帰らないを選ぶと思うから


……でもまさか、帰るか帰らないかの2択を選ぶ日が来るとは思わなかったなぁ……

まぁ、アル王はいつまでってのは言ってなかったからゆっくりと考えようかな。


もし帰らないを選択しても向こうと連絡を取る手段があればいいんだけど……

ん?そういえば携帯……試してなかったっけ……

まぁ、荷物ってほぼないから試すもなにもなかったけど。


とりあえず私は一番使いなれていた携帯の形とかを思い出してみる……

あのパカパカする手のひらサイズのフォルムに、貰いものの赤い色したとんぼ玉と青色をしたとんぼ玉がついたストラップ……


あの使いなれたボタンに、少しだけ傷だらけで……


そしてあの白い……


ふと、手の上に慣れたけど久しぶりな重さを感じてみればそこには……


「……うまくできた……?」


そう思えるくらいに見慣れて触り慣れていた私の大事な携帯電話が確かにそこにあった。

さて、通話とかできたらいいんだけど……

てことで忘れた頃に出てくるアル王がオモチ達の世界にいたことがあるという設定。

そしてオモチの携帯はガラケーですよ。サトウとシオはスマホ。

ちなみに、オモチのストラップはサトウがあげたものだったり。

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