第四章
彼が今日を自殺日に決めたのも、
単なる偶然の様に見えるが、実は必然なのである。
と言うのは、今日が11月12日、月曜日だからである。
自殺者が多い曜日は月曜日である。
これはブルーマンデーの影響があると見られる。
逆に少ない曜日は土曜日で、
男女ともに同じ傾向である。
彼も、無意識の内に『月曜病』の影響を受け、
実行を決意したので有ろう・・・。
切符を買い、電車の到着を待つ彼。
彼は、ふと思った・・・。
「電車に飛び込んで死ねば、アイツ等を苦しませてやれるかも・・・」
飛び込み自殺をすれば、
その後の処理や請求等で、自分を疎外していた両親に復讐出来ると考えた彼。
だが、その時。
「・・・ちゃん」
彼の脳裏に、聞き覚えのある懐かしい声がした。
「え・・・?今の・・・。なんだ・・・?」
気づけば電車が到着していた。
声の事は忘れ、電車に乗り込む彼。
彼は、家族連れと同席になった。
「ぶーーーーーん」
子供が無邪気に暴れている
「こら!静かにしてろ」
「ど、どーもすいませんね。」
父親が子供を叱り、母親が謝って来た。
「あ、い、いえ・・・」
「・・・(家族・・・か)」
ふと、『何かが』が脳裏を過ぎる。
「母ちゃん、見てみて!!良い景色だよ。」
「本当ね。」
「こらこら、電車の中で暴れるんじゃない。」
だって父ちゃん、本当に良い景色なんだよ!」
「ああ、そうだな。」
これは・・・なんだ・・・
「だからさ、頼むよ。1千円でいいんだよ?」
「な、頼むよ。煙草買う金も無くても」
「い・嫌だ・・・。」
「テメー。殺されたいのか。」
その時・・・。
「やめろ、お前ら!!」
長男が助けに来た。
「やばい。逃げるぞ。」
猛スピードで去って行く虐めっ子達。
「に、兄ちゃん、ありがとう・・・。」
「ああ、虐められたら俺に言えよ。守ってやるからさ。」
やめろ・・・。
今のは、なんだ・・・。
思い出・・・?いや、違う・・・。
家族で何処か行く時だって、俺はいつも置いてけぼりだったじゃないか・・・
今のは、夢?幻?なんなんだ・・・。
「・・・ちゃん・・・」
子供が、声を掛けてくる。
「え?」
「お兄ちゃん、気分悪いの?これあげるから元気出して?」
そー言って彼に飴を差し出す子供。
「あ・ありがとう・・・いいんですかね?」
「貰ってあげてくださいな。何かすいませんね。」
「あ、いえ・・・はい。」
「所で、失礼ですが、一人旅か何かですか?」
「ええ・・・まあ、自分を見つめ直す旅って言うか・・・。」
彼は言葉に詰まった。それもその筈だ。
『自殺しに行く』等と言える筈無いのだから…。
「そーですか。若いとは財産ですね。何でも出来る。」
「・・・」
「(何でも・・・出来る・・・) 」
でも・・・もう遅いんだよ・・・
23年間生きて来て 何も良い事なんて無かったからな
家族からは見向きもされない・・・。
職場では、いてもいなくても大して困らない存在・・・。
そして、好きな人も幸せに出来ないクズ野郎・・・。
俺なんて、死んだ方が良いんだよ・・・。俺なんて・・・。
誰からも愛されない。誰かを愛する資格も無い。
「ほら、お兄ちゃんにバイバイしなさい。」
家族連れは先に降りるようだ。
「お兄ちゃん!!バイバイ!!」
「う・うん・・・。」
「あ、あの・・・。」
「?」
「飴・・・。ありがとうね。」
「うん!」
・・・電車は、目的地に付こうとしていた・・・。




