↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王が滅ぶその日まで  作者: 伏見稲荷


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/19

第八章 分かれ道(前編)

 朝日が山の向こうから顔を出し始める頃、一行は野営地を出発した。


 昨夜の焚き火の跡からは、まだ白い煙が細く立ち上っている。


 荷馬車がゆっくりと動き始めると、車輪が土を踏みしめる音が静かな街道に響いた。


 フィオナは小さな窓から外を眺める。


 昨日と同じように見える景色も、少しずつ姿を変えていた。


 木々は少なくなり、背の高い岩山が増えていく。


 道幅も広くなった。


 しばらく進むと、馬車の速度がゆっくり落ちる。


 前のほうから護衛たちの声が聞こえた。


「止まれ。」


 荷馬車が止まる。


 フィオナは窓から外を覗き込み、思わず目を丸くした。


「大きい……。」


 目の前には、高い石壁に囲まれた門がそびえ立っていた。


 見上げても、すぐには門の上まで見えない。


 風に揺れる旗。


 そこには、固く握られた拳が描かれていた。


「すごい門だね。」


 隣でララが小さく呟く。


「うん。」


 フィオナは頷くことしかできなかった。


 護衛たちは馬を降り、門の前へ歩いていく。


 鎧を着た兵士たちが一人ずつ荷馬車を確認していた。


 しばらく待つと、護衛の一人が戻ってくる。


「出発。」


 その声とともに、重たい門がゆっくりと開いた。


 ギギギ……。


 低い音を響かせながら開く門をくぐり、荷馬車は再び動き出す。


◇


 門を越えたあとも、街道は真っすぐ続いていた。


 遠くから、金属を打つ音が聞こえてくる。


 カン。


 カン。


 カン。


 一定の音が、風に乗って響いていた。


 街へ近づくにつれ、その音は少しずつ大きくなる。


 街道沿いでは、大きな建物の前に赤く燃える炉が見えた。


 火花が空へ舞う。


「わぁ……。」


 ララが思わず声を漏らす。


 職人たちは大きな槌を振り下ろし、真っ赤な鉄を何度も叩いていた。


 街を歩く人たちも、腰に剣を下げている人が多い。


 それでも誰かが争っている様子はない。


 荷馬車はそのまま街の中を通り過ぎていく。


「いろんなところがあるね。」


 ララがぽつりと言う。


 フィオナは静かに頷いた。


「うん。」


 それ以上の言葉は出なかった。


 初めて見る景色ばかりで、何を話せばいいのか分からなかった。


 ただ、二人は夢中になって窓の外を見続けた。


◇


 数日後。


 再び馬車が止まった。


 フィオナは窓から外を覗く。


 今度見えた門は、前よりも少し明るく見えた。


 門の上では、一振りの剣が描かれた旗が風にはためいている。


 護衛たちは門番と言葉を交わし、荷馬車の確認が始まった。


 フィオナはその様子をぼんやり眺める。


「また門だね。」


 ララが笑う。


「うん。」


 フィオナも少しだけ笑った。


 二人はまだ知らない。


 この門を越えた先で、別々の道を歩むことになることを。


(第八章・中編へ続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。